リーダーシップの源泉とは?それは誰もが持っている「クセ」だ
2018.07.31
前回のエピソード0(ゼロ)から、いよいよ本編へ!
【エピソード0 まとめ】
21世紀型リーダーシップとは、何か?
- 自己の信念や価値観に基づくビジョンを描き、実現のためにまわりを巻き込み、推進する行動力
- 役職や役割に関わらず、すべての人が公私を超えて自己実現をするための確かで強い信念
- 従来のリーダーシップにとらわれない、「信念」に基づく行動領域とスタイル。
前面に出るだけではなく、後方から支えることも。また、その他のスタイルもある。いわゆる従来型のリーダーシップとは異なり、幅広い領域とスタイルを包含するのが21世紀型リーダーシップ
本連載では、この21世紀型のリーダーシップを「ヒーローシップ」と名付け、ゲームになぞらえてRPGのキャラクター仕立てでご紹介していきます。
あなたが普段仕事をしていて、「一体このプロジェクトは誰がやりたいと思っているんだろう?」と思うことはありませんか。こういう仕事を「意思のない仕事」といいます。意思のない仕事は、メンバーの生産性も低くなり、やりきることができず、失敗することも多い傾向にあるようです。
逆に、「どうしてもこのプロジェクトを成功させたい、やり遂げたい」とメンバーたちが共通の信念を持って動いているプロジェクトは、魅力的に感じます。このような時、メンバー一人ひとり役割が違っても、それぞれの持っている特性を活かしながら「ヒーローシップ」を持って仕事に臨めているのではないでしょうか。きっと、あなたにもそんな経験があると思います。全員が意思を持って、同じゴールを目指して動いているとき、そこには確かなヒーローシップが存在しています。
このように、プロジェクトに関わるすべてのメンバーがヒーローシップを持って仕事に取り組むことが、「意思のない仕事」を減らす方法だと考えています。
ヒーローシップとは、個々の強みを活かすこと
今回はヒーローシップを「発揮する方法」がテーマです。
最初に結論を書くと、ヒーローシップを「公私を超えた形で自己実現をするために必要なこと」とするならば、ヒーローシップの発揮には、その人個人の強みを活かした方法をとる必要があります。
「強み」と書くと、またこんな声が聞こえてきそうです。
『周りに私より優秀な人がいっぱいいるし、強みなんてないです…』
『私の強みは、仕事に役立つものではないと思います…』
果たして、本当にそうなのでしょうか?
これをお読みになって「自分は、ヒーローシップなんてものとは無縁だ」と思った方に届くように、お伝えしていきたいと思います。
元々ある資質ではなく「行動」。リーダーシップ研究の歴史から見えるもの
この分野に関心の高い方は、よくご存知かと思いますが、リーダーシップやマネジメントのスタイルについては、これまでに世界中で数多の研究が重ねられてきました。
簡単に研究の経緯をたどると、初期の研究ではリーダーシップとはその人が生まれながらに持ち合わせている資質が影響しているものと論じられました。いわゆる、「カリスマ性」みたいなものです。ところが、研究を重ねるほど、歴史上の偉大なリーダーにもさまざまなタイプがあることが見えてきて、「この資質を持つ人が素晴らしいリーダーだ」という明確な解は得られなかったのです。
つまり、リーダーシップは元々持ち合わせている資質だけで決まるものではない、ということです。
これを受けて次の世代のリーダーシップ研究では、リーダーがもつ「機能」に着目していきます。その結果、PM理論(※)などで代表されるとおり、リーダーシップとは、生まれながらの資質によるものではなく、「行動」であるということがわかってきました。
(※)PM理論:リーダーシップの機能を「目標を明確に示し、成果を上げること」と、「集団をまとめること」と定義し、各機能の巧拙でタイプ分けしたもの。
リーダーシップの「行動」における有名な施策のひとつとして、Googleのマネージャーに関する調査と育成に関わる取り組み「プロジェクト オキシジェン」があります。良いマネージャーの「行動」を特定し、そのサーベイ結果を本人にフィードバックするものです。その行動は下記の8つです。
【Google 良いマネージャーの8つの行動】
- 良いコーチであること
- ある程度部下に任せ、細かい管理をしないこと
- 部下の成功と幸せを気にかけていることを態度で示すこと
- 生産的で成果志向であること
- コミュニケーションを良くとり、チームの意見に耳を傾けること
- 部下のキャリア開発を支援すること
- チームのために明確なビジョンと戦略を持っていること
- 部下にアドバイスできる重要な技術的スキルを持っていること
強みとは、一人ひとりが持つ「クセ」である
ここまで見てきたとおり、「カリスマ性」のような資質や性格特性が、良いマネージャー、素晴らしいリーダーの必須条件ではないことがわかりました。むしろ、それぞれの持つ性格特性を「強み」として活かし、どう行動するのかが問われるのです。
アカツキでは、メンバーにストレングスファインダーの受検を奨励しています。ストレングスファインダーとは、ギャラップ社が40年にわたって行ってきた「人間の強み」に関する研究に基づいて人々に共通する34の資質を言語化し、それを発見するために開発されたツールです。
アカツキでは、診断結果を本人が知るだけではなく社内でオープンにし、情報として共有しています。
ストレングスファインダーで見出される「強み」とは、一般的に言われる「得意なこと」とは異なります。わかりやすく言うと、ここで言う強みとは「ついついやってしまうこと」「自然と考えたり、何も意識せずにできてしまうこと」といった「クセ」のようなものです。
34の資質のうち例えば、「コミュニケーション」の資質を持つ人の場合、人に言われずとも、他人に接し関係性を構築しようとします。初めて会う人と話すことを苦痛と思わないため、企業の伝説や面白い逸話をインプットしておくと、それをたくさんの人へ伝えて社風を浸透させる役割を果たしてくれるでしょう。「コミュニケーション」の資質を持たない人には、その役割を果たせないということではありませんが、このように行動することに大変な努力と労力を必要とします。
前述のとおり、その人自身の強みを活かしたリーダーシップを発揮することが、一人ひとりが自分らしく生きるために重要なことだと考えています。強みとはクセであり、クセこそが個性です。弱点をそのままにしておいていい、ということではありませんが、弱点をうまくカバーする方法はいくらでもあります。その最たる方法が、「自分が持たない強み(クセ)を持つ人に頼る」ことです。こちらは、エピソード3でお話しします。
ここで再びお話しますが、アカツキではストレングスファインダーの結果を全社へ公開しています。自分自身の強みを認識するだけではなく、周囲のメンバーにも共有し、お互いの強みを理解し合おうとしています。自分が何気なくやっている「当たり前」なことが、他の人にとっては当たり前でないことを理解できて、頼ったり頼られたりする環境が生まれるなど、共有することの利点があると考えているからです。
ストレングスファインダーの結果によって、業務内容や組織との相性を分析し、配属に反映することもあります。強みを活かすこと、それは、それぞれが持つ力の最大化を測ること、すなわち、一人ひとりが輝けるヒーローシップを発揮することへとつながります。ロールプレイングゲームでも、攻撃が得意なタイプと補助が得意なタイプをうまく組み合わせて、ゲームを攻略していくことになりますよね。
いよいよ次回は、タイプ別のキャラクターが登場!ヒーローシップの世界へ
アカツキでは、社内のメンバーたちに対してコンサルタントによるインタビューを実施し、それぞれの「クセ」をタイプ別に分類しました。ストレングスファインダーの分類よりさらにきめ細かく、インタビュー結果から得られたその人の経験や実績、そして周囲のメンバーとの関係性、好きなアカツキスタイルなども加味したタイプ分けです。大きく4つのタイプに分類できたので、次回のエピソード2では、このタイプについてお伝えします。
ヒーローたちは、どのようにして自分のクセを活かし、人生を切り拓いていくのか。また、その強みはどう育まれてきたのか、などをご説明します。どうぞお楽しみに!
参考書籍:マーカス・バッキンガム&ドナルド・O・クリフトン著「さあ、才能(じぶん)に目覚めよう―あなたの5つの強みを見出し、活かす」
イラスト: 掛川 奈里紗