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エンジニアが語る『ハチナイ』。技術が支える「おもしろさ」への責任

2021.09.16

2017年にサービスを開始し、今年の6月27日で4周年を迎えたアカツキのオリジナルアプリゲーム『八月のシンデレラナイン』(以下『ハチナイ』)。女子野球部を立ち上げた主人公たちが甲子園をめざす姿を描いたこの作品は、「野球型青春体験ゲーム」として長く愛されています。

なかでも作品の正式サービス開始前から開発にかかわってきた人物のひとりが、公式番組「ハチナイTV」おなじみのアカツキのエンジニア、レオンくんです。今回は、レオンくんと入社前から『ハチナイ』プレイヤーである新人エンジニア“なかひこくん”こと中山 貴幸の2人に、『ハチナイ』の魅力や、アカツキでの開発について話してもらいました。

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レオン Leon 『八月のシンデレラナイン』エンジニア

2016年新卒入社。八月のシンデレラナイン開発チームにエンジニアとして配属され、クライアント、サーバーなどの開発を行い、企画の立案などにも参加する。趣味はMMORPG。

なかひこくん Nakahiko-Kun 中山 貴幸(なかやま たかゆき)アカツキ ゲーム職能本部 エンジニア

2020年に新卒入社。基盤の開発やクラウドインフラの管理、セキュリティの研究を行うチーム ATLAS に参画しゲーム内通管理基盤の開発及び運用を行う。趣味は深夜徘徊。

「ハチナイTV」のレオンくんが語る、『ハチナイ』開発チーム

ーまずは2人のアカツキでの役割を教えてください。

レオンくん  僕は2016年の新卒入社で、『ハチナイ』を担当するチームに配属されました。今でも覚えているんですが、『ハチナイ』はまだリリース前のタイミングで、気合と緊張感の高まった現場でした。そんな時期から今まで『ハチナイ』に関わっています。チーム内では、『ハチナイ』歴の長い順に並べると僕が5番目くらいになりました。

『ハチナイ』エンジニア レオンくん

『ハチナイ』エンジニア レオンくん(ZOOMにて取材)

ーレオンさんは公式番組にも出られていますし、エンジニアとしてだけでなく、いろいろな形で『ハチナイ』にかかわられている印象がありますね。

レオンくん  『ハチナイ』チームは枠を越えて動くことができる組織なので、自分のやりたいことを、あの手この手をつかってやっている感覚です。最初はクライアントエンジニアとして加わりましたが、システムエンジニア的なこともやるようになり、サーバーサイドのプログラムも書くようになりました。

また、『ハチナイ』の試合のロジックがサーバーとクライアント※1で共通になっていないために、ゲームの拡張がしづらい、試合にプレイヤーが介入しづらいなどの構造上の問題が発生していたのも解決しました。今ではゲームシステムのどこを見ても、僕がかかわった要素がなにかしら入っているのではないでしょうか(笑)。

※1  クライアント:ここではスマホにインストールされた『ハチナイ』ゲームアプリケーションのこと

レオンくん  公式番組に出るようになったのは完全になりゆきです。初回放送のときに、プロデューサーの山口さん(山口 修平)が「エンジニアリングについてなにかあったら補足してほしい」という形でゲームの仕組みを紹介するコーナーに僕を呼んだんです。それが初登場になって、そのあとにマーケティングチームの方からお話をいただき、僕と広報担当のあやたんさんと、番組担当の方と3人で立ち上げたのが今の「ハチナイTV」です。

自分でゲーム内イベントの企画書を書いたりもしますし、コロナ禍でリモートワークになる前は、シナリオチームやデザイナーチームのところに行って首を突っ込んだり、いちプレイヤーとしての感想を、チームのみんなと話したりしていました。

『ハチナイ』公式番組『ハチナイTV』 第1回目に出演するレオンくん

『ハチナイ』公式番組「ハチナイTV」 第1回目に出演するレオンくん(右)

 

ーなるほど。横断的に意見を言い合える雰囲気があるんですね。

レオンくん  『ハチナイ』チームはそういう雰囲気ですね。できることがあれば、いろんな人たちを巻き込んでいける環境です。

『ハチナイ』監督、なかひこくんが見る『ハチナイ』の進化

ー一方、なかひこさんはアカツキ入社前から『ハチナイ』を遊んでいる監督さん(『ハチナイ』プレイヤーの総称)ですね。どういう業務を担当されているのでしょう?

なかひこくん 僕は2020年の新卒入社で、基盤の開発やクラウドインフラの管理、セキュリティの研究を行うチーム ATLAS に所属し、特定のタイトルだけではなく横断的に複数のゲームに携わり、サポートしています。開発時期の関係で、僕が運用及び開発に携わっているゲーム内通過管理基盤は『ハチナイ』から利用されていません。そのため、僕は『ハチナイ』を手伝っているというわけではない、という形です。

 

アカツキ エンジニア なかひこくん

アカツキ エンジニア なかひこくんがZoom会議で使用しているオリジナルキャラクター

ーむしろ、いちプレイヤーとして入社前も入社後も、『ハチナイ』をプレイされている、と。

なかひこくん  はい。レオンくんのことも入社前から観ていたので、有名人と接しているような感覚です(笑)。僕はもともと野球少年で、小学校から高校まで野球をやっていたんです。それもあって、野球観戦を楽しんでいるようなコミュニティで「『ハチナイ』がおもしろい」という評判を聞いていて。僕はそこで知ってはじめた感じでした。『ハチナイ』って、女子が野球で甲子園をめざす、というなかなか世間的には認められづらい部分に焦点を当てた作品で、「マイノリティを応援する」という魅力を感じました。

ープレイヤーは監督として、1から女子野球部を立ち上げたキャラクター、有原翼と逆境を跳ね返すために頑張っていきますよね。

なかひこくん  まずはそこがすごくおもしろいな、と。今も続けているのは、ゲームとしてどんどん進化していくからですね。モバイルゲームの場合、最初に組んだシステムをもとに、あとはイベントを展開していくという作品も多いですが、『ハチナイ』はゲームの軸になる部分まで変わっていくので、リリース当初とは全然違うゲームになっていると思うんです。試合中に指示を出せるようになったこともそうですし、試合画面についても、最初はスコアボードを見る形式だったものが、キャラクターが野球をするものに変わりました。インゲームの見た目や機能がどんどん変わっていくのは難しいことなので、純粋に「すごいな」と思うんですよ。

『ハチナイ』2018年2月までの試合画面

2018年2月までの試合画面

『ハチナイ』2018年3月上旬のアップデートからの試合画面

2018年3月上旬のアップデートからの試合画面

レオンくん  この試合画面の変更については、当時いらっしゃったサーバーエンジニアの方と僕とで方法を考えました。一度サーバーとクライアントのロジックを共通化するためRubyで書かれていたロジックをすべてLuaで書きなおし、サーバーとクライアントでそれぞれ動かすということをしています。この辺りは、サービスがはじまって、『ハチナイ』を実際にプレイしてくれる監督さんたちからのフィードバックがあったことで、「遊んでくれているのは、野球をちゃんと観ている人たちなんだ」と分かったのが大きかったと思います。その声に真摯に向き合っていかないといけない、と。

こういった変化をなぜ続けるかというと、遊んでくれる人たちに「ずっと飽きずに遊んでほしい」と思っているからなんです。僕自身も飽き性なのでよく分かるのですが、おもしろいと思ったゲームでも、ずっとやっているうちに惰性でプレイするようになってしまうことって、よくありますよね。ですから、「ずっと新しいなにかを届けたい」と思っています。僕自身、いち監督としてゲームを遊んでいるので、自分が遊んでも飽きないようにしたいですしね(笑)。

バグだけではなく、「おもしろさ」にも責任を感じるエンジニアチーム

ー2人が感じる、『ハチナイ』ならではの魅力はどんなものなのでしょう? 高校生の物語とあって、最初は1年生だった有原(翼)たちが進級し、※2先輩になっていくなど、1年間の変化が大人以上に大きな意味をもつことも印象的です。

レオンくん  学生のスポーツって、そういうところがすごくおもしろいですよね。僕は彼女たちが2年生になるという話を最初にプロデューサーから聞いたときに、「すごいな」と思いました。

『ハチナイ』2019年4月に主人公の有原翼たちが2年生に進級し、後輩が入部してくるシナリオが追加された

※2 2019年4月に主人公の有原翼たちが2年生に進級し、後輩が入部してくるシナリオが追加された

ーゲームですから、「進級しない」という選択肢もとることができますね。

レオンくん  そうなんです。でも、既存のメンバーが進級して、新1年生が入ってきてー。ということは、ゲーム内の時計の針を進めていくと、有原たちがいつか卒業してしまうことだってありえます。その辺りは慎重に考えていくのだとは思いますが、僕はいちプレイヤーとして展開を楽しみにしているので、開発に必要のない情報はなるべく見ないようにしています。

なかひこくん  アカツキは風通しのいい会社なので、『ハチナイ』のような自社のオリジナルコンテンツの場合、開発チーム外の社員でもその情報が知れるような状況にあるんです。でも、僕もサプライズを純粋に楽しみたいので、なるべく見ないようにしています(笑)。エンジニアとして見ると、『ハチナイ』の場合はいろいろな変化に対応するためにも、最初から変更を入れやすい仕組みにしているのかな、と外から見ていて想像します。それに加えて、変化に柔軟に対応できるエンジニアリング力の高さや、企画している人たちとエンジニアの人たちとの関係性のよさのようなものもあるのかな、と。

レオンくん  僕が入社した頃に、アカツキのエンジニア採用ページに書かれていたことのひとつに、「アカツキのエンジニアは、自分がつくっているゲームのおもしろさを理解していなければいけない」という言葉が書かれていました。僕は『ハチナイ』開発チームは、それを体現できているのかな、と思っています。プランナーの方とコミュニケーションする際にも、「これってできますか?」という聞き方はしないでほしい、むしろ、「これをするとしたら、どれぐらい時間がかかりますか?」と聞いてください、と言っていて。実現までに年月がかかることもあるかもしれませんし、お金がかかったり人をもっと増やしたりしなければいけないかもしれませんが、基本的に「できないことはない」と思っていて、「問題を解決しない」という選択肢は考えないでほしい、と思っています。

現在のAkatsuki Hackers Labに掲載されている「アカツキの開発に対する哲学」にもエンジニア自身によるおもしろさへの細かい提案について記載されている。

ーリミッターを設定しないで、実現するための前向きな話をしよう、ということですね。

レオンくん  そうですね。『ハチナイ』では、エンジニアが最初から「大変だからやらない」と言うことはありません。また、企画立案のチームだけではなく、作品にかかわる方には早い段階で企画会議に参加してもらい、みんなで話し合っています。チーム全員がゲームの仕様に対し「本当におもしろいのかな?」と考えて、おもしろくないなら、それを伝えられる存在でいてほしいと思っているんです。エンジニアはバグが出たりすることに責任を感じたりすることが多いですが、それだけではなくて、「このゲームおもしろくないよね」という内容に関する評価にも、自責の念を感じて、改善のための努力をしてほしい、と思っています。

『ハチナイ』は、「野球自体を楽しめるコンテンツ」にならなければいけない

ーまた、『ハチナイ』チームには、それぞれのキャラの能力などを鑑みて「この能力ならこういうモーションだろう」とアドバイスをするなど、野球好きの目線からおかしな部分をチェックする「野球チェック」という工程が存在するそうですね。

レオンくん  シーンのイラストなどについても、ラフが上がってきた時点で野球経験者を中心とした監修専門のチームがチェックに入り、「これはもっとこんな感じだよね」「ここの構えはこうだよね」とアドバイスをしてくれます。

なかひこくん  最近でいうと、僕はUR野崎(シーン「怯弱を打ち砕く投球」)の足がしっかりと蹴りあがっているのを見て、「本当にこれなんだよなぁ」と思ったりしました。

『ハチナイ』野崎夕姫

レオンくん  実はあのモーション、完成までに一週間ぐらい揉めました(笑)。足の反動のつけ方や幅について、関わる人それぞれに違ったこだわりがあったんです。最終的には、「これなら大丈夫だろう」というものに着地しています。

なかひこくん  野球のイラストってピンからキリまでありますよね。ただ球を投げているのと、野球をしているのって、全然違う。『ハチナイ』はイラストもどんどん躍動感が出てきていると思います。おそらく、僕らのようなプレイヤーのフィードバックも見ながら進化していったのかな、と思いますし、これからもよくなっていくだろうな、と楽しみにしています。

レオンくん  僕は今、『ハチナイ』にかかわりはじめてもう6年ほどですが、チーム全体としても、2~3年目辺りから野球に対する姿勢が変わったと思います。『ハチナイ』は、「野球風のものが楽しめる美少女コンテンツ」ではなく、「野球自体を楽しめるコンテンツ」にならなければいけない。そうじゃないと『ハチナイ』のアイデンティティはない、と思うようになりました。

そういう気持ちが、試合形式などの大幅な変更につながっています。「そうやっていろいろな要素にこだわっても、気付いてくれない人もたくさんいるでしょう」と思われるかもしれませんが、『ハチナイ』を通して野球に興味をもってくれて、あとで「ああ、こんなにこだわっているんだな」と気づいてもらえば、それはとてもうれしいことなので。

これからの『ハチナイ』

ー2人がそれぞれ、開発チームとして、監督として『ハチナイ』にかかわってきたなかで印象的だったことがあれば教えてください。

レオンくん  『ハチナイ』は現在に至るまでにつねに変化し続けていて、リリース後も大きな変化を経験していますが、慣れているシステムを変えると、人はその結果おもしろくなるかどうかの前に、システムに不慣れなことに意識が向かいます。つまり、変化を加えると、すべての評価はマイナスからはじまってしまうんです。ですから、変化を加える際には、一度はマイナスになってしまっても、最終的にはプラスになるものをつくり続けなければいけません。

そういう意味では、ずっと大変ではありますし、印象的な思い出はたくさんあります。でもやはり、スコアボードを撤廃して試合画面を大幅に変えたり、戦術を導入したりしたときは、ハードワークという意味では大変でした。どうしても、「球春祭」や「八夏祭」までにこの機能を届けたい、と思っていたので。ただ、精神的に追いやられたことは、そんなにないと思います。体は疲れるけれども、心は充実していて、楽しくやれている気がしますね。監督の皆さんも、同じ監督のよしみで僕のことは大目に見てくださいますし……。

なかひこくん  (笑)。

レオンくん  一番うれしかったのは、やっぱり『ハチナイ ファン感謝デー 2018新春』ですね。それまで監督さんたちとは一方的なコミュニケーションをすることが多かったのですが、このイベントではじめて双方向のコミュニケーションが取れるようになりましたし、試合画面がスコアボードから野球盤に変わり、キャラクターが試合をするようになった変化を皆さんに見てもらったときの反応は、今でもすごく覚えています。あの瞬間は、ゲーム業界に入って本当に達成感を感じた瞬間でした。

なかひこくん  いちプレイヤーとしても、あの変更と戦術機能の追加で、監督感が増したことはすごく印象的でした。また、僕は野球の観戦が好きなこともあって、千葉ロッテマリーンズとのタイアップイベント「八月のシンデレラナイン presents ハチナイター※3」もかなりテンションが上がって、ZOZOマリンスタジアムまで観に行きました。大変な時期だったので特殊な環境ではありましたが、いち社員としても、いち監督としても、球場内の細長いモニターに『ハチナイ』の映像が流れたり、回が変わるときに『ハチナイ』のCMが流れたりして、「応援してきてよかった」と本当に思いました。今年6月の横浜DeNAベイスターズとの「ハチナイター」も観に行ったんですが、これもすごくよかったです。

※3  ハチナイター:2020年秋に千葉ロッテマリーンズとのコラボレーションで始まった冠協賛試合「ハチナイター」は、2021年夏に横浜DeNAベイスターズと第二弾を開催。2021年秋に阪神タイガースとの第三弾が開催された

ー最後に、『ハチナイ』のこれからについて、2人が楽しみにしていること、期待していることを教えてください。

なかひこくん  いちプレイヤーとして、『ハチナイ』はどんどん変わっていくところが魅力的だと思っているので、皆さん無理のないように、これからもおもしろい作品をつくり続けていただけるとうれしいです。最近はメディア展開も増えていますし、ゲームだけでなく、ライブやドラマ原案などいろいろな形に広がっています。でも、結局どうなるか分からないのが『ハチナイ』だと思うので、これからもサプライズをし続けてくれることに期待しています。

レオンくん  僕も新しいものをつくり続けていきたい、と思っています。クオリティの高いタイトルもいろいろと出てきていますが、『ハチナイ』は4年前にリリースされたゲームとしてできることは大分限られてはいるなかで、皆さんを驚かせられることを考えていきたい。チームの戦力をもっと伸ばす方法も今後実装されていくと思いますし、恒常的な腕試しコンテンツも計画しています。これからも『ハチナイ』を楽しみにしていてくれるとうれしいです。

『八月のシンデレラナイン』公式サイト
https://hachinai.com/

公式Twitterアカウント
@hachinai89

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文  杉山 仁 編集  大島 未琴