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グローバル拠点 アカツキ台湾で学んだ、「文化が違う」で思考停止しない働き方

2018.12.18

アカツキ台湾はアカツキのグローバル拠点で、現在100人以上のメンバーが働いています。日本で開発されたアカツキのゲームは、台湾においてグローバル視点で検証した上でさまざまな言語に翻訳、各国に合わせたローカライズを経て世界へ配信されています。

自社でローカライズとグローバル展開の拠点を持っていること。それは、世界中の方々に届けたい感動のクオリティを自分たちでかなえられるというアカツキの強みです。 両チームはどのように連携しているのでしょう。

今年8月に日本からアカツキ台湾に赴任した田川 勝也に、台湾と日本をつなぐ自身の仕事について、また、台湾と日本の連携やグローバル展開についてインタビューしました。

入社3年目の夏。好奇心を胸に、日本を飛び立った

この夏、東京から台北に赴任した田川 勝也。25歳の彼が、初めて海外で働いて感じたこととは?

ー  台湾には、どのような形で赴任したのでしょうか

日本のアカツキからの出向で台湾に来ました。アカツキ台湾では、日本のアカツキが開発するモバイルゲームのグローバル展開を担っています。

ー  台湾赴任に自ら手を挙げたということですが、その理由は?

手を挙げたのは、大学時代に留学をした経験からです。アメリカの大学で1年間学んだのですが、ある講義で「日本企業は過去の栄光だ」と論じられた時の衝撃が忘れられませんでした。「AmazonやGoogleのようなグローバルで偉大な日本企業は?」と問われても、すぐに答えられなかった。その時から「日本発のグローバルで偉大な企業は自分が」と考えていたんです。もう一つ、留学時代の「見たことのないまっさらな世界で挑戦した時、一気に世界が広がったあの感覚を仕事でも経験したい」という理由もありました。

ー  社会人3年目での挑戦、不安はありましたか

不安よりも未知の世界へ飛び込みたい気持ちが圧倒的に勝っていました。入社してモバイルゲーム事業部に配属になり、2年目から大規模プロジェクトの事業責任者として裁量ある仕事を任され満足していたのですが、同時に今後のキャリアを考えている時でもありました。

上司に相談すると、僕が何をするのがいいのか本気で議論し、背中を押してくれました。本当にありがたかったです。

「翻訳すればOK」ではない。台湾から世界へ

ー 田川さんが所属するのは、モバイルゲームをグローバル配信しているプロジェクトですね。どんな仕事をしていますか

日本と台湾をつなぐのが僕のミッションです。ゲームの海外展開には大きく分けて二つの方法があります。一つは、日本版を海外の言語に翻訳して出す方法で、もう一つは、海外向けに作り込んでリリースする方法です。アカツキが取り組んでいるのは後者で、台湾アカツキが開発の中心を担い、海外の環境に合わせた運用施策やユーザーコミュニケーションを考えています。日本版のよいところをしっかり受け継ぎつつ、海外のユーザーに楽しんでもらえるゲームにするため、日本の知見を台湾メンバーと共有し、台湾の「こんな施策をしたい」という声を日本に共有します。そのプロセスを経て、両チーム間の調整をするのが僕の仕事です。台湾メンバーはほぼ全員、母語は中国語です。英語・日本語を話せるメンバーも多く、主にその二言語でコミュニケーションしています。

ー  まさに台湾と日本のブリッジとして活躍しているのですね。考え方やスタイルに違いはありますか

かなりあります。例えば提案方法一つとっても、日本は目的と前提を大事に、コンセプトからしっかり組み立てて作り込むことが多いですよね。台湾は最初に「これがベストだ!」と最も重要な部分から出すことが多いです。それに対して日本が驚き、「これだと◯◯ができないね」と細部を気にすることがあります。そういったことが原因で両チーム間に齟齬が生まれることもあります。双方の考えをつなぎ、調整するのは僕の重要な仕事です。

細やかな日本、ダイナミックな台湾。強みを活かし、つなぐ醍醐味

ー 台湾ではスピーディーな意思決定ができそうですが、そう単純な話でもないでしょうか

アカツキ台湾では、主にリーダーが意思決定するスタイル。同意形成の時間が不要なので、確かにスピーディーです。一方で、「いや、俺はこれがベストだ」というメンバーが必然的に存在しますので、全員が納得できるゴールはない。日本の「個別最適」に対して、台湾では「全体最適」の傾向がありますね。それぞれ一長一短があり、面白いなと感じます。スタイルは違っても「最良の結果を得たい」という強い思いは同じ。両者の違いを強調するよりは、共に理想の結果を求めて一つになれると信じて仕事をしています。

「“文化が違うから”は、 思考停止の言葉」。メガネを外し、世界が見えた

赴任早々迷い込んだトンネルから抜け出せたのは、一つの気づきだった

ー 赴任当初、どのように動いたのでしょうか

台湾メンバーが大歓迎してくれて、すごくうれしかったのを覚えています。 最初の1ヶ月は意気込んで、インシデントの改善提案をしたり、データ更新業務のフローや検証体制の改善、海外版のオリジナルイベントの提案活動など、エンジン全開で取り組みました。ところが、それがあまりうまくいかなかったのです。 最初は台湾メンバーに対して否定的な気持ちになる場面もありました。次第に自分の仕事の価値がわからなくなり、社会とつながっている感覚まで薄くなっていきました。目の前で生じているのは台湾固有の問題なのか?修正可能なのか?それすらわからず、トンネルに迷い込んだようでした。

ー  今、無事にトンネルを抜けられたのでしょうか

はい。苦しいトンネルからは抜け出せました(笑)ある時読んだ本で、「世界が複雑に見えるのは、わたしがそうさせている。決して人生が複雑なのではなく、わたしがそうさせ、幸福に生きることを困難にしている」※という一節に出会い、目が覚めました。苦しみは自分が作っていたんだ!と。自分が「日本のメガネ」をかけたままだったと気づきました。台湾メンバーの90%は台湾出身です。身振りや雰囲気といった不確かな情報で判断していたからうまくいかなかった。自分の勝手な想像でネガティブ係数をかけていたんですね。 「文化が違うから」と決めつけたら、そこで思考停止です。それで、今まで培ってきたメガネを外し、世界を見よう、と気持ちを切り替えました。

「なぜ、こうしてくれないの?」から、「チームを信じる」へ

ー メガネを外して、変化はありましたか 

一つずつ自分の目と耳で確かめるようにしたら、世界が鮮明に見えるようになりました。同時に、「チームを信じる」、「自分の意見や考えを伝える」スタイルへと変わっていきました。「なぜ、こうしてくれないの?」という思いは、「あなたはどんな風に考えていますか?僕はこれが最良だと考えています。どう思いますか?」というコミュニケーションへと変化し、自分の仕事の価値がわからなくなりそうな不安は、「自分が最良だと思ったことをやり続けよう」という意思へと変化しました。そうして裸眼で見る世界は、まったく違うものに変わりました。

ー 物理的にも心理的にも大きな旅をしたのですね

気づきがあってからは、台湾メンバーとのミーティングを増やし、face to faceで話す機会を多く持つようになりました。お互いの顔を見ながら話すコミュニケーションを大事にしています。

11月に一時帰国し、学生向けの採用説明会で海外での仕事ぶりを紹介した

ー  手応えを感じていることは

両チームそれぞれの良さと補う点を見極めながらつないでいくのが、この仕事の醍醐味ではないかと思っていますが、最近は台湾のプランナー達の業務範囲が広がり、以前より創造的な活動に従事できるようになったのがうれしいです。彼らの活躍ぶりに、自分が貢献できている喜びを感じます。

ー 日本と台湾、それぞれのプランナーが刺激を受け合いながら、新たなエンターテインメントが生まれることを想像するとワクワクしますね。田川さんは、グローバルで活躍するのに必要な力とは、どんなものだと思いますか

海外赴任で求められる能力としてよく聞くのは、語学力、課題解決力、積極性などですが、僕が何より大切だと思うのは、今まで信じてきた自分のメガネを外して裸眼で世界を見る勇気です。世界をクリアに見られた時、初めて語学力などが役立つのではないかと思っています。心のメガネを外さなければ、永遠に「文化の違い」という終わりのないトンネルの中でしょう。

アカツキを世界のグレートカンパニーに!

ー  今後、台湾で挑戦したいことはありますか

アカツキのサービスで、世界中の人を笑顔にする。そんな影響力を持つ企業にしたいと強く思っています。海外赴任という大きなチャンスをいただいたので、日本で得たノウハウ・経験を台湾に還元し、よりグローバルな力を備えた組織へと成長させていく。僕はその伝道師として、力を発揮したいです。

ー 10年後の田川さんの姿は、どんなイメージでしょうか
 
 
10年後もやっぱり、見たことのない世界で働いている自分がいると思います。よく「ゴールは何ですか?」と聞かれるのですが、実はゴールは決めていないんです。僕にとっては「挑戦している今そのもの」が目的で、行き先を決めない旅を楽しんでいるようなものです。海外に身を置くということは、新しい環境・文化・哲学にふれるということ。そこで自分に起こるマインドチェンジは、ものすごくエキサイティングです。これこそが僕が言いようのない幸せを感じるところで、生きる意味なんだと思っています。それは、自分が「日本」という強烈なバックボーンを持っているから感じる幸せでもある。この源泉がある限り、世界中どこででも働ける!そう思っています。できれば一生、そういう旅を楽しむ自分でいたいし、その幸せを何倍にもして世界へと還元する挑戦ができたら最高ですね。

ー グローバルで活躍したいと思っている人へ伝えたいことはありますか

まだ台湾赴任から数ヶ月ですが、僕が身につけたことを紹介するなら、まずは 何よりも自分が納得するまで、自ら情報を集め続けることです。「これは自分の目で見た情報か?」と、常に確かめます。 それから、周囲の評価に一喜一憂せず、「この方法は本当に最良なのか?」と問い続けながら、自分の判断を信じ、周囲に働きかけて最良の結果を模索すること。最良だと思うことを常に続けていくこと。 自分なりの指標で良し悪しを判断しながら、仲間と最良の選択を模索し続ける。文化に依存しない人は、きっと真のグローバル人材として活躍できると思います。

「大切なのは、言語習得よりも姿勢。最良だと思うことを常に続けていくこと」学生たちに語りかけた

ー 最後に。台湾での暮らしも楽しんでいますか?

もちろん!毎日仕事の後には語学学校で中国語を学んでいます。中南米など海外から台湾へ来たクラスメート8人と仲良くなりました。帰宅後には仕事をしていることが多いです。台湾の人は家族との時間をとても大切にします。意外に思うかもしれませんが、特別な飲み会でもない限り、夜にメンバーと繰り出すことはありません。こちらに来てから、僕も家族の大切さを以前にも増して感じるようになりました。アカツキ台湾のメンバーとは、主にランチに出かけています。僕のおすすめは魯肉飯(ルーローハン)や葱油餅(ツォンヨゥピン)ですね。台湾は美味しいローカルフードが豊富です。一つだけ例外で、臭豆腐というものすごく臭い豆腐料理をみんなに騙されて食べた時は仰天しました…(笑)ちなみに、台湾メンバーは飲ませ上手で飲み上手。ビールを注ぐスピードは、おそらく世界トップクラスです!
台湾は日本からのアクセスも良いので、皆さんにぜひ訪れてほしいです。

日本と台湾のスタイル、それぞれの良さを活かして

ー 世界へ挑戦する仲間になれた ー
Akatsuki Taiwan Inc. 
GM of Global Game Guild
Wilson Yen より

Wilson Yen(左)  「優秀な人を海外に赴任させない理由はない。その思いは間違っていなかった」

以前の僕たちのチームは、日本と台湾それぞれが抱える課題や実情が見えにくく、誤解や不満が生じていました。田川くんは、その状況を打開するために来てくれました。両チームをつなぐ参謀的な立場でアドバイスや対策をしてくれて、僕たちも日本側の視点で一度考えた上で、台湾にフィットする調整と改善ができるようになりました。その結果、プロジェクトは格段にスピードアップしました。共に世界へ挑戦できる体制ができたのです。

僕たちは日本のゲームをそのまま世界に持っていくのではなく、日本のユニークネスと世界のニーズをつなぎ、グローバルマーケットに適したサービスを作りたいと考えています。今後もっと交流を深め、互いの能力、経験、文化をぶつけ合って世界を変える力にしていきたい。田川くんには、今後も日本の経験やリソースをどんどん引っ張ってきてもらうと同時に、台湾で身につけた経験を持ち帰って、互いをさらに高めていってほしいと願っています。

田川くんがこちらに来る前は心配もありましたが、僕は「優秀な人を海外赴任させない理由はない」と思っていました。実際、彼は今すごくいい仕事をしています。僕の考えは間違っていなかった。期待以上に力になってもらい、僕たちはとてもラッキーです(笑)

これから新タイトルの運営リーダーとしての活躍も期待していますし、台湾のグローバルゲームギルドと日本のさらなる連携など、一緒に頑張ることは山ほどありますね。長期的でスケールの大きな話をしていきましょう!

アカツキ台湾の仲間たちと(前列左から二人目)

私たちが誇りにしたいのは、「すばらしいゲームを世界中の人たちに」という熱い思いと、互いの文化や思考を活かして未来へとつなげる働き方を、海を越えて共有していることです。
今後もアカツキとアカツキ台湾は互いの力を高め合いながら、グローバルでエンターテインメントの世界を盛り上げていきます。

田川 勝也 Katsuya Tagawa株式会社アカツキ/Akatsuki Taiwan Inc.

1993年 宮崎県宮崎市に生まれる。
     九州大学経済学部4年時、アリゾナ州立大学に留学
2016年 卒業後アカツキに入社。2つのプロジェクトでリーダー、ディレクターを経験
2018年 アカツキ台湾へ赴任。大型プロジェクトを担当  現在は、さらに領域を広げ、複数プロジェクトに携わっている

メインビジュアル撮影:葛西 亜理沙 
インタビュー・編集:永沼 歩、坂井 朋子

【協力】Akatsuki Taiwan Inc.
Wilson Yen   
翻訳:Yosi Hong
Rens Verstegen、橋本 佳奈

※出典:「嫌われる勇気」岸見一郎著/ダイヤモンド社