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鈴木おさむ×中川悠介×香田哲朗が語る、「次のヒットの源泉」はどこにある?

2026.02.02

渋谷から新たな文化・産業を生み出す都市フェス「SOCIAL INNOVATION WEEK 2025」。10月27日から8日間にわたって行われ、延べ7万人が未来へのアイデアを共有した。イベント内では、アカツキの香田が、鈴木おさむ氏、アソビシステム中川悠介氏とともに「エンタメ産業を進化させる10の視点」をテーマに対談。企画、カルチャー、テクノロジーの最前線を走る3者から、果たしてどんな戦略が飛び出したのか。

Akatsuki VOICEではダイジェスト版をお届けします。全編はぜひYouTubeをご覧ください。

金山 淳吾 Jungo Kanayama一般財団法人渋谷区観光協会 理事

電通、OORONG-SHAなどを経てクリエイティブアトリエTNZQを設立。「クライアントは社会課題」というスタンスから、クリエイターやアーティスト、企業などによる共創事業で社会課題解決に取り組む。2016年より一般財団法人渋谷区観光協会の代表理事として渋谷区の観光戦略・事業にも携わる。

鈴木 おさむ Osamu Suzukiスタートアップファクトリー代表

1972年4月25日生まれ。千葉県千倉町(現 南房総市)出身。 19歳の時に放送作家になり、それから32年間、様々なコンテンツを生み出す。2024年3月31日をもち放送作家・脚本業を引退し、現在は、BtoC向けファンド「スタートアップファクトリー」を立ち上げ、その代表を務める。コンサル、講演なども行う。

中川 悠介 Yusuke Nakagawaアソビシステム株式会社 代表取締役社長

1981年、東京都生まれ。東洋大学経営学部在学中に、先輩とイベント運営会社を設立。卒業後もその事業を継続し、2002年から月曜のクラブを借り切った「美容師ナイト」などを開催。2007年にアソビシステムを設立。“青文字系カルチャー”の生みの親。会社を構える原宿でお気に入りの場所は隠田神社。

香田 哲朗 Tetsuro Koda株式会社アカツキ 代表取締役CEO

2006年佐世保工業高等専門学校電子制御工学科卒業。筑波大学工学システム学類卒業後、アクセンチュアに入社。2010年にアカツキを塩田元規と共同創業。創業期からエンジニア兼ディレクターとしてモバイルゲームの開発を牽引。取締役COOとして事業と組織の両面でアカツキの土台を整備。2014年に台湾現地子会社を代表として立ち上げ、ゲームのグローバル配信を成功させる。モバイルゲーム事業部の事業部長兼人事担当役員を経て、2020年に代表取締役に就任。

日本のコンテンツ市場のポテンシャルとは?

金山 まずは現状の共有から始めましょう。日本のコンテンツ市場規模は現在約15兆円(うち海外売上高5.8兆円)。政府は海外売上高を20兆円まで引き上げる目標を掲げています。この数字、皆さんはどう見ますか? 本当に世界で4〜5倍の規模まで行けるのでしょうか?

香田 ポテンシャルは十分あると思います。海賊版も含めれば、今の2〜3倍の潜在市場がすでに存在していますし、これをどう正規ビジネス化するかが鍵です。また、今アニメを見ている海外の若者が経済力を持つ10〜20年後の伸び代も大きいですね。

鈴木 僕は出版社、つまりIP(知的財産)を持っているところが強いと思います。特に映画では、『秒速5センチメートル』のように10〜20代まで動員する作品が革命を起こしています。ただ、一番の課題でありチャンスなのは「音楽」です。BTSが言語の壁を超えたように、日本の音楽がどこまで壁を越えられるかが勝負どころではないでしょうか。

中川 音楽も変わってきましたね。コロナ禍を経て、日本のアーティストが海外に出る流れが加速しています。『ONE PIECE FILM RED』のAdoさんのように、アニメ、映画、音楽が連動して世界中のチャートに入る成功例も出てきています。

日本のエンタメ・コンテンツ産業の黄金期とは

金山 未来の話をする前に、日本のエンタメの「黄金期」はいつだったと思いますか?

鈴木 90年代中盤ですね。SMAPやCDミリオンセラーが連発し、テレビの制作費も潤沢でした。2時間ドラマに1億円かけて赤字でも許されるような、お金がとにかく回っていた時代です。

香田 僕はおよそ30年前、日本勢が世界のゲーム業界を独占していた時代だと思いますね。この時代は週刊少年ジャンプなどの発行部数も凄まじく、回し読みを含めればとんでもない数が消費されていました。

中川 過去の話を聞くとすごいなと思いますが、僕は「これからが黄金期であってほしい」と思っています。

日本のエンタメとマーケティング

金山 では、これからのマーケティングはどう変わっていくのでしょうか?

鈴木 テレビ局の反省点は、マーケティングをしてこなかったことです。「視聴率」という数字にこだわりすぎた結果、若者向けコンテンツがおろそかになり、テレビ離れを招きました。

中川 今はテレビの視聴率と、SNSでのバズや広がりが全く連動していません。入り口が多様化しているので、プロだけでなく、誰でもコンテンツを発信できる「民主化」が進んでいますね。

香田 ゲーム業界でもSteamやAIの登場で、個人(インディーズ)が簡単に参入できるようになりました。ただ、その分供給過多になり、組織で戦うプロと、コストのかからない個人との戦い方が変わってきています。

混ざり合う、プロとアマチュアの垣根

金山 プロとアマチュアの垣根について、どう捉えていますか?

中川 混ざり合ってきていますね。『8番出口』といった個人製作のゲームが映画化されるように、アマチュアの作品をプロがフックアップする流れができています。

香田 一方で、世界市場では『Fortnite』や『Roblox』のような巨大なプラットフォームに乗らないと勝負できない状況にもなっています。

AIはツール、核心は「物語」

金山 AIやデジタル技術についてはどう考えますか? 物語の重要性についても議論したいです。

鈴木 デジタルはあくまでツールです。大阪万博の関連イベントでは、電車の遅延をきっかけに会場を開放した『オールナイト万博』というハプニングが「物語」となって盛り上がったように、爆発的なムーブメントにはデジタルだけでなく、リアルな「物語」が不可欠です。

中川 AIはスピードを上げる便利なツールですね。ただ、物語の核心や熱量は人間じゃないと作れません。

香田 AIによって、これまでお金をかけて出していた「デジタルの豪華さ(リッチな映像美など)」の価値は下がります。だからこそ、それ以外の部分でどう勝負するかが問われるようになりますね。

次のヒットはどこから生まれる?

金山 最後に、日本のエンタメの「武器」と「次のヒットの源泉」を教えてください。

中川 日本の武器は「クリエイティビティの奥深さ」です。次のヒットはどこからでも生まれますが、それを単なるヒットで終わらせず「ホームラン(巨大ビジネス)」にするのが、僕らプロの役割だと思います。

鈴木 武器は、バラエティ番組などに見られる「作り込みのきめ細やかさ」です。次の注目ジャンルは「政治」ですね。政治への関心が高まり、それがコンテンツとして熱を持つようになっていく流れが来ると思います。

香田 日本の強みは、漫画を描いたり音楽をしたりすることが許容される「ボトムアップ型の教育・文化」です。次のヒットは、日本と海外、複数の文化的背景を持つ方々のアウトプットから生まれる気がしています。

金山 ありがとうございました。この3名のプロデューサーと共に、20兆円産業への挑戦は続きます。