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【グローバルで通用する3Dゲーム開発を】「プロジェクト暁」のディレクション術

2023.08.29

8月18日、アカツキゲームスのオンライン発表会「Akatsuki Games Now」にて、次世代ゲーム開発基盤プロジェクト「プロジェクト暁」が公開されました。「日本最高峰の3Dモバイルゲーム制作会社」をビジョンに掲げ、アカツキゲームスの技術の粋と未来への展望を形にした本プロジェクトは、どのように開発が進められたのでしょうか。その開発術をお届けします。

黒籔裕也 Yuya Kuroyabu 株式会社アカツキゲームス デザイン部3D開発統括マネージャー / 『プロジェクト暁』ディレクター 

様々なゲーム開発会社を経て、アカツキへ合流。グローバルで通用する次世代の3Dゲーム開発を実現するため「プロジェクト暁」を発足し、これを牽引する。現在は3Dアーティストチームのマネージャーとして組織開発にも奮闘中。

世界に通用する3Dゲーム開発を

―「プロジェクト暁」を立ち上げた経緯について教えてください。

黒籔 この「プロジェクト暁」は、「グローバルで通用する3Dゲームを開発できる会社にしたい」と、アカツキゲームス代表の戸塚(佑貴)、副社長でエグゼクティブプロデューサーの山口(修平)よりオーダーされ、それを実現するためのタスクフォースとして発足しました。

黒籔 山口より「忍」と「和」という2つのテーマを受け取り、それをベースにコンセプトデザインを進めていきました。キャラクターに関しては、「現在で活躍する忍者」というものを、今の日本のマンガやアニメの文脈で再構築することを念頭に進めています。舞台装置としては、「和」をベースに、サイバーフューチャーという方向性を加え、敢えて生活感のない人工的な未来都市として「アカツキ市」を生み出しました。日本人固有の文化として忍者や侍、あるいは日本刀の海外人気は高く、こうした和のエッセンスは海外展開においてもポイントになると考えていました。

ゲームの舞台となっている「アカツキ市」

―約1年間で作品をつくり上げるというのは困難も多かったと思いますが、「魅力的な映像デモ」に留まらず、リアルタイムに遊べるゲーム作品として開発を進めた理由を教えてください。

黒籔 前提として、この「プロジェクト暁」には3つのミッションがありました。

1、ゲーム開発基盤の開発
2、次世代グラフィクスのための企画デザイン
3、これらを実現するチーム組成

後続プロジェクトが決定していることもあり、その「ゲーム開発の基盤」となりうる、Unityやスマートフォンで実際に遊べるゲームのプロトタイプとして作るということは必須要件と考えていました。チーム組成という観点でも、プリレンダ映像制作とゲーム開発では求められるスキルセットが大きく変わってきます。後の接続のことを考えると、ゲームのプロトタイプ開発として進行することは必然だったかと思います。

―開発フローの全体像と、開発環境について教えてください。

黒籔 プロジェクト発足から完成まで、約1年余りと超短期開発で遂行しました開発環境はUnityです。UnrealEngineの選択肢も上がりましたが、Unityはユーザーが多く、社内のエンジニアもUnityの習熟度が高かったため、Unityを選択しました。ターゲット端末はiPhone12を想定し、安定した60FPS駆動を目指しました。

―本作はセルルックが特徴的な作品ですが、セルルックで世界に勝負しようと思った理由を教えてください。

黒籔 大前提として、アカツキゲームスは「セルルックのキャラクターIP」を打ち出していくという指針があります。またアニメや漫画などの文化は、グローバルで戦っていくとしても日本がもつ固有の強みになると思っています。

ポジティブな雰囲気で開発を進めるチームビルド&ディレクション術

―今回の開発はフルリモート化で進行したそうですが、コミュニケーションの秘訣など、チームでの開発を円滑化するコツがあれば教えてください。

黒籔 開発当初から完成までフルリモートで進行し、SlackとZoomが主なコミュニケーション手段でした。さらに、大半のスタッフが初めて一緒に仕事をする関係性でしたので、制作の方向性や意思を統一するのは非常に難易度が高い状態でした。Slackのテキストのやり取りだけでは意思疎通が難しいと感じていたので、具体的な「画像」や「動画」による指示出しを徹底的に行なっていました。私自身がアーティストであり、ある程度の動画編集技術を持っていたので可能だったことですが、スタッフからも指示が具体的でわかりやすいと好評だったと思います。また、Slackのワークスペースは全てのチャンネルがオープンになっており、スタッフ全員がチーム内の業務上のやり取りや進捗を全て閲覧することができる状態にしていました。

チーム内のコミュニケーションを活発化させる手段の一つとして、スタンプを押すという行為が便利で効果的でした。チームメンバーが何か投稿した際に、見たら必ずスタンプを押していくという文化を推進したんです。テキストによる返信は解釈の余地が生まれますが、「いいね!」スタンプは完全にポジティブですからね。地道な積み重ねの中で、フルリモートでも信頼関係を築く空気づくりを心がけました。

―短期間開発におけるディレクションの方法や、チームビルディングのコンセプトについて教えてください。

黒籔 ディレクションで常に心がけていることとして「具体性」があります。曖昧な指示をできるだけしない。前述の「画像」や「動画」による指示出しがそれに当たりますね。ルックであれば自分でラフイラストを描いたり、アニメーションや演出であれば動画コンテを作ったり、3Dモデルを詳細にポージングして絵コンテを作ったりしていましたね。2本のPVに関しても、絵コンテで指示をするのではなく、全編の構成がわかりやすくなるように楽曲付動画コンテとしてMAD動画を作成しました。あまり一般的な作り方ではないと思いますが…。

もう一つのこだわりは「つくらないものを決める」ということ。つくるものとつくらないものを早い段階で決めています。決して手抜きをするのではなく、「ユーザーはそこを見ないよね」「画面に映らないよね」という部分を早期に定義して、そこにはいっさい手を付けないということです。最初の段階で完成ビジュアルを決めて、つくらないところを明確化する采配が大切と考えています。「この画をつくれば勝ち筋が見える!」という部分の、逆をつくらないようにする意識に近いですが、このあたりは経験がものを言う部分かもしれませんね。

黒籔 ゲームはビジュアルとサウンド、ユーザーが遊ぶ体験が組み合わさった総合体験ですから、「完成したときにどう動くのか?」を想像するにあたっては文字よりも画像、画像よりも動画と、解像度を上げて語るのが効果的だと思っています。アウトプットに近い具体的なディレクションがあると、作業する側も、それを判断する側も判断基準がわかりやすくなり、開発スピードに直結すると考えています。

―どのような方に「プロジェクト暁」を見ていただきたいですか?また、これから一緒にゲーム開発を行なうにあたって、求める人材像があれば教えてください。

黒籔 アカツキゲームスとはこの水準のものをつくれるゲーム開発会社なんだ!?」という驚きを与えられたら嬉しいですね。

『Emotional Trailer』の冒頭に「万法帰一」という言葉を引用しています。万物は一から生じ、一に帰ると。この「プロジェクト暁」の世界観でも「忍」と「獣人」という2つの種族の対立を描いているのですが、いろんな価値観や考え方の人がいる中で最終的には一つにまとまっていく。そういうことを描きたかったんです。現実も同じで、弊社でもいろんな価値観の方がいらっしゃいます。そういった中で、チームで働くということを大事に考えてくれる人、そういう人がいいですね。

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取材・執筆協力:池田大樹(CGWORLD)、小村仁美(CGWORLD)、神山大輝(NINE GATES STUDIO)