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爆発的な成長を生む組織開発とは?サイバーエージェントとアカツキに共通する「進化を続ける組織づくり」

2018.09.20

才能を開花させ、爆発的な成長を生む組織づくりに必要なものとは何かーー。

言わずと知れた日本のネット企業の雄、サイバーエージェント、そしてアカツキ。実はこの2社、数々のユニークな社内制度運用により独自の企業風土を築き、成長につなげているという共通点があります。

8/6に開催された「Makuake MEET UP DAY 2018」には、幅広い業種・業態、事業規模もさまざまな企業の経営者や人事担当者が集まりました。とりわけ組織開発や人材開発を題材としたイベントや書籍への関心が高まるなか行われたセッションは、大きな注目を集めました。

爆発的な成長を遂げるアカツキとサイバーエージェント。両社それぞれの人事システムと、組織づくりの秘密をひもときながら、経営者や人事担当者が抱える課題解決のヒントを探ります。

登壇者

塩田 元規 しおた げんきアカツキ 代表取締役 CEO

1983年 島根県出雲市生まれ。横浜国立大学電子情報工学科を経て、一橋大学大学院MBAコース卒業。 株式会社ディー・エヌ・エー新卒入社、アフィリエイト営業マネージャー、 広告事業本部ディレクターを経て、退職後に、アカツキを創業。

曽山 哲人 そやま てつひとサイバーエージェント 取締役 人事管轄

1974年神奈川県横浜市生まれ。上智大学文学部英文学科卒業。1998年伊勢丹に入社、紳士服配属とともに通販サイト立ち上げに参加。1999年、20名程度だったサイバーエージェントに入社。インターネット広告の営業担当として入社し、後に営業部門統括に就任。2005年に人事本部設立とともに人事本部長に就任、2008年より取締役、2014年に執行役員就任などを経て、再度2016年に現職。

勝屋 久 かつや ひさし勝屋久事務所 代表

1962年東京生まれ。上智大学理工学部数学科卒業後、日本IBMにて25年間勤務。2000年IBM VentureCapitalGroup パートナー日本代表、経済産業省IPA未踏IT人材発掘・育成事業プロジェクトマネージャーなどを経て、2010年8月に独立。生き方そのものを職業として夫婦で活動中。2014年から本格的にアーティストとしても活動開始。(株)アカツキ(証券コード3932) 社外取締役、(株)クエステトラ 社外取締役、(株)マクアケ 非常勤役員、(株)エーゼロ 非常勤役員、ビジネス・ブレークスルー大学客員教授、富山県立大学MOT非常勤講師、KATSUYA♡学院共同創業者、総務省地域情報化アドバイザー、福岡県Ruby・コンテンツビジネス振興会議理事・ビジネスプロデューサー、鯖江市NPO法人エル・コミュニュティ理事など多様な顔もある

「社員が仲良くする」には、経営の意思決定が必要だ

勝屋 これまでに1万社もの企業の経営者とお会いしてきましたが、その中でもサイバーエージェントとアカツキは特別な存在だと感じています。両社とも社員を大切にしていて、各人の才能を開き、仕事のパフォーマンスを高めていこうとしている点で共通しています。アカツキ創業者として組織をデザインしている「げんちゃん」(塩田)と、サイバーエージェント創業者である藤田晋さんの意を汲んで組織をつくり上げてきた「そやまん」(曽山氏)――今日は、そんな異なる立場の2人に、組織づくりに対する考え方やテクニックを聞いていきたいと思います。

まずは、そやまんから。なぜサイバーエージェントが「自分らしく生きて、かつ仕事を楽しめる人」を生み出す組織をつくれたのか、聞かせてください。

(左から)モデレータを務めた勝屋氏、アカツキ塩田、サイバーエージェント曽山氏 日頃から塩田、曽山氏と交流がある勝屋氏のリードで和やかな雰囲気でスタート

 

曽山 サイバーエージェントには現在、有期雇用を含めて約9,000名の従業員がいます。この規模になっても、社員向けの匿名アンケートなどからは、社風を表すのに「風通しがいい」という言葉が非常に多く上がります。こうした企業風土が形成されたのには、2003年に「社員同士が仲良くすることに投資をしよう」と、経営の意思決定が行われたことが大きかったと考えています。

実は当時社員同士の仲が良くなかったたんです。飲みに行くこともないし、お互いを批判し合う、激詰めし合うといったことも(笑)。かくいう僕も、その張本人でした。「あいつより、俺のほうが稼いでる!」――なんとなく、そう言っていないと生き残れないような雰囲気だったんです。

勝屋 それ、僕もIBM時代にやっていました(笑)。

曽山 そうですか…(笑)。でも、業績が伸びている部署に目を向け、よく観察してみると、ランチや飲みに頻繁に行っていて、メンバー同士がよく話をしているということがわかった。そこで、藤田をはじめとする役員で議論し、社員同士が仲良くすることに経営として投資することを決めたんです。

具体的には、大きく3つのことを始めました。ひとつは「飲み会」。月1回、チームで行くことを条件に、一人あたり5,000円を支給しています。2つ目は「部活」。10人以上で組織された部活に、一人当たり毎月1,500円の活動費を支給しています。僕もボルダリング部に入って活動しています。飲み会では部署内の交流を、部活では部署横断の交流を、それぞれできるというわけです。そして3つ目は「表彰」。営業もクリエイターもエンジニアも、毎月必ず表彰を行っています。ベーシックですが、これによって社内の情報流通がスムーズになったし、トラブルや不正も明らかに減りました。

勝屋 げんちゃん、アカツキは今年で創業8周年を迎えました。これまで一貫して組織づくりに力を入れて、投資もしてきたと思います。具体的には何をやってきたんですか。

塩田 青臭いですが、僕たちはビジネスを成功させるために組織づくりをしてきたわけではありません。僕らが幸せになった結果、ビジネスが成功する――この構図を実現するための組織づくりをしています。合理性があるわけではないので、あくまで「哲学」です。そうしたい、という僕のWillありきで、創業以来ずっとその考えを貫いてきました。

とはいえ、経営をしていると色々ありますよね。会社としての存亡に関わるような危機に直面したとき、そういうスタイルの経営って、揺らいだり迷ったりしそうになります。そういう局面で、自分たちの「幸せ」や「志」を選択できるか。それが経営者として重要なことだと思うのですが、僕自身、創業2~3年目の苦しい時期に何度かそれを選択できなかった経験があります。ビジネスの成功のために、自分たちが大切にしていることを犠牲にしそうになることが多々あった。その度に、周りのメンバーに引き戻してもらいながら、経営や組織づくりに対する信念がだんだん強くなってきたと思います。

アカツキの組織づくりのキモは、「感情」を大切にするということです。社内では、積極的に感情を表現していい。それが大前提になっています。職場では大体、誰もが仮面を被るじゃないですか。表立って言えるのはポジティブなことばかりで、ネガティブなことは言ってはいけないという空気。でも、本物のつながりは感情を分かち合ってこそ生まれます。感情を全面に出して、嘘のない関係が築ければ、たとえネガティブなことを言われても相手のことを嫌いになりません。感情でつながることで、何かあれば助け合える、苦しいときも一緒に乗り越えられる会社になるんです。

毎朝4~5人のグループで「24時間以内にあった新しいこと・良かったこと」をシェアし合う「Good & New」 や、皆で朝食を食べる「パワーモーニング」。具体的な施策は色々ありますが、特にアカツキらしいと思うのは「分かち合い」の文化です。普通のプレゼンやレポートは、一対1あるいは1対多の一方通行であることが多いですが、アカツキでは「誰かの話を聞いて、自分がどのように感じたか」をシェアするのがポイントです。分かち合いなので、正解も不正解もない。何か正しいことをいう必要はない。感じたことを分かち合うだけです。感情をだせる場になるし、深いつながりを生みます。それが目に見えない力になります。組織論的に言うと、いま話題の「ティール組織」でいう組織にWholeness(全体性)を持ち込むというイメージに近いと思います。

「HOW TO」を頭で理解しているだけでは、良い組織はつくれない

曽山 創業直後のアカツキは、苦しい判断をする局面が多々あったとのことでしたが、どんな苦労をしてきたんですか?げんちゃんのさわやかな様子からは、想像しにくいのですが(笑)。

塩田 大学在学中に多くの経営者にインタビューして「幸せな経営とは何か」を教えてもらいました。それで僕は「人が幸福になる経営とは何か」をテーマに会社をつくりたいと思うようになったんです。でも、実際何かを形にするには夢や理想だけじゃなくて力も必要。だから、大学院卒業後にDeNAに入社して自分の力を上げるため、がむしゃらに働きました。でも、力を求めすぎた結果、自分自身が 価値を“生む”ことではなく、だれかに”勝つ”こと、優秀であるかどうかということに重きを置きすぎるようになってしまいました。そんな経験を経てアカツキをつくった当初の僕は、周りの人を寛大な心で受容できるようなピュアな状態じゃなかったんですよね。

たとえば、ちょっと上手くいかないと、その人に対して「こいつ、仕事できないな」と思ったり、それが態度に出てたりした。それを目の当たりにした周りのメンバーは、「自分もそういうことを言われているんじゃないか」と疑心暗鬼になるわけです。良い雰囲気の会社になるはずがありません。そんな状況を見かねた共同創業者の香田くん(アカツキ 共同創業者 取締役 COO 香田 哲朗)に本気で怒られて、ハッと目が覚めました。

創業2年目には、こんなエピソードも心に残っています。アカツキ内部で勝屋さんに講演をしてもらった時、参加したメンバーの1人が、「アカツキに来ると元気になる」と言ってくれたんです。それが僕の心の戦闘モードをふっと解除してくれた。大学の時のピュアな気持ちにすごく戻れた。だから、社内外問わず、アカツキと関わった人が元気になる組織をつくりたい――そんな当志を思い出すことができたんです。「偉大な会社になる」「世界を変えるサービスをつくる」と書いていたメモの下に、信頼を基盤に才能を活かしながら事業を生み出す組織、「タレントドリブン」な会社をつくると書き足したのを覚えています。

勝屋 げんちゃんは、外部から新たな知識を得てやり方を変えたというよりは、内面的に変わっていったんですね。

塩田 組織づくりの「HOW TO」を聞いて色々と実践してみようとすることは、もちろん素晴らしいですが、頭で理解して実践するのと、心から納得して実践するのとは違います。本心から思っていないことを無理してやっていても、周りに伝わってしまうんですよね。

そやまん、僕は“サイバーエージェントLOVE”なんですが、サイバーエージェントの組織づくりは、メンバーが幸福を感じられるようデザインされた素晴らしいものだと感じています。でも一方で、「表彰されるから頑張る」という、人を外から動機づける仕組みは、その人が自身の真の才能を発揮するのを阻害する可能性があるんじゃないかとも思うのですが…。内的な動機づけと外的な動機づけのバランスについては、どう考えていますか。

曽山 サイバーエージェントには「21世紀を代表する会社を創る」というビジョンがあり、メンバーの評価基準はこれに尽きます。このビジョンに共感できるかどうか、このビジョンの実現のために行動できるかどうかがすべてです。それを評価するために、100社にのぼる子会社を立ち上げ、その社長を任せてみて、マッチしたらどんどん権限を委譲していくという方法をとっています。当然、子会社の社長として成功する人もいれば、そうでない人もいます。

塩田 子会社の社長をやってみて成功できなかった人が、違う形で活躍するケースもありますか?

曽山 会社が掲げるミッションの中に、「挑戦した結果の敗者には、セカンドチャンスを」というのが明文化されていて、実際にセカンドチャンスを得て成功した人はたくさんいます。でも実態は、2016年頃までそうした事例は少なく、失敗すると辞めてしまうケースが多かったんです。そこで、個別面談を大量に実施するようになりました。

藤田からは「事業撤退が決まったら、まずは子会社社長をよく労うように」と言われています。社内ヘッドハンターが面談をして労った上で、リクエストを聞き、希望する事業に異動させる。社長で失敗したら、次は別のことをやるケースが多いですね。そうすると同じ失敗を繰り返しません。当然ですが、必ずしも「社長が正解」というわけではないんですよね。

そうやって、「セカンドチャンス」の事例を増やすことに努めてきました。普通じゃ考えられませんが、「損失額自慢乗り換え」なんていうのもあります。僕は営業時代に1億円の損失を出したことがあるのですが、それを飲みの場で話すと、「曽山さん、手ぬるいです。僕なんて2億ですよ」という人がいたり、「わたしは資本金5億円の会社を2社潰しているので、10億です」という人もいる。失敗しても、辞めずにバリバリ活躍している例が、今ではたくさんあります。

塩田 事例が蓄積されることで、風土ができあがってきたんですね。

曽山 はい。風土を変えるには、事例が必要だと思います。新規事業をやろうとしている会社はたくさんありますが、上手くいかない理由はひとつしかない。それは、セカンドチャンスを与えないからです。失敗を認めず、左遷・降格とマイナス評価が厳しい。「失敗するとあんな目に遭う」と、誰も挑戦しなくなるという負のスパイラルです。

塩田 「風土を変える」ということと関連して、新卒採用についても聞かせてください。僕は、新卒入社組が一定の割合を占めるようになると、組織は勝手に良くなっていくんじゃないかという感覚があるんです。組織づくり、風土づくりというのは時間がかかるものなので、「果報は寝て待て」じゃないですが、変に動かそうとするより、僕はハワイで遊んでいるくらいのほうが、実はいいんじゃないかと(笑)。

曽山 たしかに風土は、新卒が入ってくることによってつくられる部分も大きいと感じますね。それが続いて、2~3年経つと、新しい風土ができる。新卒/中途ともにその傾向はありますが、特に新卒が引っ張ってくれているのは間違いないと思います。

マネジメントの素養を見抜く“キラー・クエスチョン”

勝屋 ここからは、参加されている皆さんから質問をどうぞ。

参加者A 僕もかつて社長をやっていたときは、“嫌なやつ”でした。げんちゃんが、社員に対して胸を張ってビジョンを語れるようになった転機を教えてください。

塩田 何かひとつのことがきっかけで劇的に変わったというより、変化のプロセスがずっと続いている感覚ですね。「組織が大事」と言いながら、それと相反するようなことをやってしまうことが何度もあって、その度に苦しい状況に立たされて、必要に迫られて改善してきました。毎年のように、何らかの大きな事件が起こるんです。例えば創業3年目には、創業時のメンバーが8人中4人辞めてしまったり、新たに採用した人がアカツキの企業文化に不適合だったために組織が荒れてしまったり。さすがにそのときは、もうどうしたらいいかわからず泣きました。でも、今思えばそうやって感情を出したことが、結果的に良い方向に働いたと思っています。経営していると、人前で涙を流すことは難しいものですが、本当に苦しいときには苦しいと言ってしまったほうが、周りが助けてくれ、解決に向かっていくものなんですよね。

8月2日に、アカツキはビジョンとミッションをアップデートしました。創業以来大切にしてきた「感情を報酬に発展する社会」、「ゲームの力で世界に幸せを」という思いはそのままに、新しいビジョン「A Heart Driven World.」と新しいミッション「Make The World Colorful.」を掲げています。刷新にあたり社員と改めて向き合い、真剣に議論するプロセスを経て、アカツキは、また一歩進化したように思うんです。

参加者B 曽山さんに質問です。僕も前職で人事を担当していましたが「現場では力を発揮するが、マネジメントは不得手」という人が多いと感じます。そういう人たちを、曽山さんはどう扱い、どのように次のステージに導いていますか。

曽山 現場で力を発揮する人と、マネジメント適格者は、必ずしも一致しないと考えています。そこにまず、経営の意思決定が必要です。成果を出す人を守らなければ、業績が低迷します。逆に、成果を出す人を守りすぎると他の人が辞めてしまい、結果的に業績が低迷します。サイバーエージェントでは、マネジメントを担う人は「人間性が優れている人、人望が厚い人」と決めていて、周囲から慕われていなければ絶対に上に立たせません。そのため、僕が直轄する社内ヘッドハンティングチームは普段から役員と飲みに行って、社内の評判を聞くことを大事にしています。

また幹部候補者には、将来どんなことをやりたいか随時ヒアリングしています。このとき、その人に人望があるかを確かめる“キラークエスチョン”が1つあるんです。「周りにイケてるやつはいる?」――こうたずねて、人の名前がどんどん出てくる人はマネジメントの素養があると言っていい。周りにいる自分以外の人の力を見抜くことができるという証拠ですから。2人ほど挙げて後が続かない場合は、自身の力で結果は出せても、マネジメントには不向きである可能性が高い。そういう人は、役職ではなく、業務内容や給与で厚遇するようにしています。

塩田 いまの質問は「社員の幸せを考えて日々動いている、当の人事担当者は果たして幸せなのか?」という問いでもあると感じます。

曽山 確かに人事担当者の中には、自分の仕事をいまひとつ楽しめていない人が多いかもしれません。サイバーエージェントの場合、僕が営業から人事に異動した際に、人事の役割を再定義したことも大きかったように思います。それまで人事は、「労務担当」「新卒採用担当」「中途採用担当」といった機能で捉えられていましたが、僕は「人事とはコミュニケーションエンジンである」と新たに定義しました。経営が言っていることを、現場にわかりやすく伝える。現場が言っていることの中で、経営が知るべき本質を伝える。この橋渡しが人事の役割であると捉え直したのです。その機能を各部門が主体的に担えるのなら、コミュニケーションエンジンである僕ら人事は不要。そのときが来たら、解散してもいいと思っています。

塩田 「そのときが来たら、解散してもいい」って、めちゃくちゃいいですね。人事も経営も、究極的には自らの存在価値がなくなる状態を目指すのが本質です。

アカツキの人事も、葛藤は全然あると思います。現場のメンバーたちは、よほど意識的にならないと、日ごろ人事がやってくれることに対して感謝を伝えることって難しい。やっていて当たり前で、やらないと文句を言われやすい、家族のお母さんみたいな立場ですかね(笑)。でも、もちろん、組織づくりに重きを置くアカツキにとって、人事は最重要チームです。人事の状態は組織全体にも波及します。だからこそ、僕ら経営が人事部門が大切であり、彼らにリスペクトと感謝をもつことがまず大切です。アカツキらしさを伝播する「らしさエヴァンジェリスト」というメンバーたちとBBQに行ったり、半年に一度の全社合宿の際には人事に対して積極的に「サンクスカード」を贈るようにしたり。人事には営業成績のようなわかりやすい指標がなく、働く動機として「感情報酬」が占める割合が必然的に高くなります。人事ががんばれる指標づくりは必要だと思います。

サイバーエージェントとアカツキが理想とするチームとは

勝屋 げんちゃんとそやまんは、もし今新しいプロジェクトを立ち上げるとしたら、どういうチームをつくっていきたいですか?

塩田 実験的ではありますが、「強いリーダーシップが引っ張る」のではないチームをつくってみたいですね。というのも、強いリーダーがいると、どうしてもそれに依存する構造が生まれてしまうからです。マンガ『キングダム』で始皇帝が法治国家をつくったときのように、チームとして守るべき哲学を設定し、メンバー各人がそれに向き合いながらプロジェクトを進めていきたい。逆に言えば、一人一人がリーダーです。誰かに依存するわけではなく、個人が主体性と創造性を最大限発揮することが求められるチーム。これまでは僕のリーダーシップで引っ張る傾向が強かったのですが、ここ2年ほどで、その様相が変わってきているんです。

曽山 強いリーダーシップで引っ張るのではないチーム、同感です。僕はワークショップが好きで、その際に「世界最高」を基準に考えることをポイントにしています。もし自分たちのチームが「世界最高」になったら、それはどんなチームか――それを各人で考えて、ふせんに書き出します。それを貼り出して、「これはいいね。こうなろうよ」とか「これはちょとイマイチだね」と議論することで、自然とメンバーの目線が揃っていき、強いリーダーがいなくてもプロジェクトが自走していくようになるんです。

チームマネジメントについて言えば、「独裁」と「民主主義」の間を行ったり来たりすることが、これからの経営には必要なのではないかと考えています。すべてを民主主義で進めようとすると決まるものも決まらないし、決まったところで凡庸なものになる。最終的には、誰かの「やりたい」という強い信念が必要だし、それが反映されたプロジェクトのほうが面白い。組織というものは必ず偏るものですから、「独裁」と「民主主義」の間の絶妙なバランスをとれる組織が、真に優れた組織と言えるのではないでしょうか。

塩田 少林寺拳法の言葉に「力愛不二」というものがあります。愛なき力は暴力であり、力なき愛は無力である。この言葉にも学びつつ、愛と力を統合したチームマネジメントを目指していきたいですね。

 

イベントの最後には、モデレータである勝屋氏が「LOVE」の文字を大きく映し出し、人をしっかり見て、成長させることができる企業とは「心で経営することだ」と締めくくりました。これからも、成長を続けるサイバーエージェントとアカツキ。成長により事業も人も増え続ける中でも、才能を開花させ、爆発的な成長を生む組織を継続していけるのか。今後もサイバーエージェントとアカツキの人づくり、組織づくりの進化は続きます。


この記事は、2018/8/6に行われた「Makuake MEET UP DAY 2018」のイベントをもとにしています。