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異色のタッグで世界を獲る!アカツキが目指す「esportsの未来」

2018.11.08

アカツキは、PROFESSIONAL ESPORTS LEAGUE, S.L.(以下、PEL社)の株式を取得、子会社化し、PEL社が設立したesportsリーグ『LPE』の運営をサポートするとともに、アジアにおける事業開発パートナーとなりました。

『LPE』の特徴は、なんといってもプロスポーツチームのみが参加できるesportsリーグであること。すでにFCバルセロナ(スペイン)、サントスFC(ブラジル)、ビジャレアル(スペイン)といった世界各国のプロサッカーチームが参加を表明しており、日本からは東京ヴェルディが参加予定。さらに、サッカー以外の有力スポーツチームとの協議も進行中で、大きな注目を集めています。

今回は、PEL社のCEOであるチャビ・コルテス・トゥビオさんと、アカツキのesports事業責任者の熊谷祐二さんにインタビュー。海外esportsのプロフェッショナルであるチャビと、日本のシリアルアントレプレナーである熊谷。異色のタッグを組んだ『LPE』のキーマン二人に、esportsの未来について語っていただきました。

チャビ・コルテス・トゥビオPEL, S.L. CEO

ゲーム業界で20年に渡り、アナリスト、ジャーナリストとして活動。FCバルセロナなど世界的スポーツチームのesports事業コンサルティングやesports大会運営を経て、PEL社のCEOとしてLPE運営に従事。

熊谷祐二株式会社アカツキ esports事業部 マネージャー /PEL, S.L. 取締役

これまでIT企業3社を創業したシリアルアントレプレナー。 2014年にiemo社 共同代表取締役就任を経て、同社をDeNA社へ売却。 2015年にスポーツテック事業を手掛けるSkyBall社を創業、2018年にアカツキ社へ売却するとともに、アカツキのesports事業責任者並びにPEL社の取締役に就任。

esportsの伝道師は、なぜアカツキとタッグを組んだのか?

― アカツキのesports事業と連携しようと思った経緯を、改めて教えてください。

チャビ 最初にこのプロジェクトの話をしたときに、ビジョンと価値観がとてもマッチしました。とくにesportsというデジタルな部分と、トラディショナルなスポーツをミックスさせるという点では、はじめから話が合いましたね。

『LPE』の企画はいろいろな会社や投資家にプレゼンしましたが、ビジネス以上の部分で共感できたのは、唯一アカツキだけでした。esportsで社会に何をもたらすことができるか?とか、esportsの歴史をつくるといった点です。そこが決め手になりました。

熊谷 アカツキはゲームを主力事業としていますが、決してそれだけではなく、エンターテインメントの会社だと思っています。エンターテインメント全般に投資していくなかで、esportsはすごく注目していた分野ですね。今年のはじめにチャビと出会って、僕らがesportsをやるのであればグローバルでやりたいことを話しました。チャビはビジョナリーな人物ですし、アカツキもビジョンやミッションを大事にする会社なので、そういった価値観が合ったんです。

FCバルセロナからオファーが来る男。チャビ氏の影響力

― 『LPE』にはFCバルセロナというビッグクラブが参入しています。彼らが参入に至る決め手となったのは?

チャビ まずは私のバックグラウンドから説明しましょうか。私はひとりのファンとしてゲームが大好きです。メディアやゲーマー、そして大会の主催者など、さまざまな立場でesportsに関わってきました。

2006年にロサンゼルスで行われたE3で、初めて大きな予算を組んで、自分のディレクションによるesportsのドキュメンタリーを作ることができました。そのときにesportsが非常に大きな将来性を持っていることに気づいたんです。

その後、伝統あるプロスポーツチームであるFCバルセロナが、esports業界への参入を模索していると聞き、コンタクトを取ることができました。約1,500社の中から、当時の私の会社の提案が選ばれて、esportsのプロフェッショナルなコンサルタントとしてFCバルセロナに関わるようになりました。

このとき選ばれたのは、サッカー界のコネクションを使ったからではありません。FCバルセロナというクラブにふさわしいデジタル戦略を提案し、認めてもらったからです。数あるオファーの中で一番だったという結果には自信を持てましたね。FCバルセロナのようなビッグクラブは人材の異動が多く、デジタル戦略部門のトップは3回も替わっていますが、私が提案したプロジェクトは継続し、今も信頼してもらっています。

他の提案と決定的に違ったのは、FCバルセロナというブランドが何を必要として、どんなアクションを起こせばesports業界での居場所を確立できるか、それを明らかにしたことです。FCバルセロナはスペインの歴史や文化にも関わる団体ですし、そのFCバルセロナのために仕事をする責任と誇りを感じています。

― FCバルセロナの他にも、世界的なビッグクラブが目白押しですね。

チャビ こうしたクラブチームは、esportsに対する不安を抱えていました。たしかに成長を続けている分野ではありますが、彼らはリスクを負いたくないんです。どうすれば確実にその中に入り、事故を起こさずにすむかを考えていました。

私がクラブとのコミュニケーションで時間をかけてきたのは、esportsそのものの説明と、サッカークラブだからサッカーゲームをやらなければならないという固定観念を彼らの頭から外すこと。esportsで本当に成功しているタイトルで戦えば、プロフェッショナルな活動ができるんです。

また、『LPE』がつくる環境によって、彼らが自分たちと同じくらいのブランド力を持つクラブと戦えることも重要でした。彼らは、名前もよくわからない、本当に存在しているかどうか分からないような団体とは対戦したくない。『LPE』ではその問題がクリアになり、クラブ同士でのエコシステムの中で戦えるのが強みですね。今後もビッグネームの参入を発表していきますので、楽しみにしていてください。

熊谷 esportsと『LPE』はマーケティングとしての魅力も持っています。たとえばヨーロッパのクラブなら、アジアやアメリカで認知度を上げたいし、その地域の若年層にリーチしたい。アジアでも同じで、ヨーロッパやアメリカで知ってもらいたい。トラディショナルなスポーツとesportsは、ユーザー層の違いを補完しあえるので、そこに魅力を感じて参入してくれていると思います。

esports界のリオネル・メッシを誕生させたい

― 日本ではあまり知られていませんが、FCバルセロナのようなプロスポーツクラブはサッカーが有名な一方で、他の競技のチームも持っています。参入するクラブはesports部門を持っていたのか、それとも新設したのでしょうか。

チャビ 既存のesportsチームが『LPE』で戦うケースもありますが、新設するクラブが多いです。そこには『LPE』のコンセプトに関わる、ふたつの理由があります。

ひとつは、esportsのプロ化を推進するために、プロクラブにその組織を作ってもらうこと。

もうひとつは、タレントの育成。バルセロナにサッカーのユースチームがあるように、esportsでも同じようなアカデミーを作って、身近な人たちを育ててタレントを発掘し、成功させるというストーリーは、『LPE』として目指したいところです。

― そのストーリーの部分でもクラブと合致を?

チャビ esportsの将来を担う若い世代をタレントとして発掘し、安定した環境で育成を進めたいという点は共感できましたし、私たちが伝統あるプロクラブに望んでいる大事な要素です。

たとえば、いくらお金を持っていたとしても、本当に存在しているかどうか分からないような団体では、子供を預けた親が「うちの子はどこで何をしているの?」と不安に思ってしまいます。ですが、FCバルセロナのアカデミーであれば、安心して任せられますよね。

― 2018年秋から始まるプレシーズンマッチに向けて、クラブチームで選手の準備は進んでいるのでしょうか。

チャビ それぞれのクラブで準備を進めています。近いうちに発表を予定しているクラブもありますが、発表のタイミングを計っているところもあり、その判断はクラブによります。

大切なのはレベルの高い大会を目指すために、良いチーム作りをすることです。各クラブにいる強化部長のもと、予算と参加する予定のタイトルに合わせてチームを作っている段階ですね。

熊谷 esportsに参画することにどんな意味を見出すかはクラブごとに違いますし、地域ごとに流行っているゲームタイトルも異なります。ですので、『LPE』ではクラブの意思を尊重したうえでゲームタイトルを決めています。

― 他のスポーツと同じように、esportsの世界でもスターの存在が不可欠ですよね。選手のプロデュースに関しては『LPE』もサポートを行なうのでしょうか。

チャビ アメリカで生まれたモデルに、ドラフト会議という形式がありますよね。各クラブが主催し、『LPE』がサポートするドラフトを行うことによって、新しいタレントを発掘したいと思っています。身近にいるタレントや若い選手で、今までチャンスがなかったけれどチャレンジしたい、しかも自分が応援している憧れのクラブでそのチャンスがめぐってくる。そんな状況を、世界の各地で作りたいんです。

すでにこれを実現させたクラブもありますし、『LPE』も積極的にサポートします。クラブとのコミュニケーションにおいても、大事な要素ですね。

熊谷 選手のプロデュースは、クラブ単体でできることとリーグレベルでやること、いろいろあると思います。僕らは「esports界のリオネル・メッシを早く誕生させたい」と思っていて、そのためにはリーガ・エスパニョーラ、チャンピオンズリーグ、ワールドカップという輝く舞台があり、それを僕らが演出しなくてはならない。

あとは、選手とファンとのエンゲージを深める部分。たとえば、クラブレベルだと選手を知ってもらうための動画をたくさん作ることは難しいけれど、リーグがサポートすることはできます。そういうところは積極的にプロモーションしていきたいですね。

ゼロからのスタートが、やがて文化になる日まで

― 『LPE』の拠点であるバルセロナのオフィスでは、現在どのような活動をしていますか?

チャビ プロダクト面ではセットの制作を。私たちがストリーミングの映像を作るので、そのための機材やスタッフの確保を進めています。また、大会本部が各タイトルのレギュレーションを作っています。

あとは、キャスターやショーマンに良い人材をそろえることも大事です。良いショーを作らなければ大会は盛り上がらないので。これまでアイデアとして持っていたものを実現させる、モチベーションとリアリティのある毎日を送っていますよ。

クラブとの交渉では、イングランドのプレミアリーグのビッグクラブとも話が進められています。グローバルにスポーツ団体を取りまとめるリーグなので、サッカーだけでなく、アメリカの四大リーグやインドのクリケットチームも。確定するにつれ発表していき、開幕に向けて盛り上げていきたいです。

バルセロナの本拠地をおくLPEのオフィス。スペイン、アメリカ、フランス、ポルトガル、アルメニア、そして日本。国際色豊かなメンバーが揃う

熊谷 バルセロナのオフィスには約20名のスタッフがいます。日本のプロ野球やJリーグ、世界でいえばチャンピオンズリーグのようなものを作ろうとしているので、やることがいっぱいあります。一般的な会社と同じく会計・総務のメンバーもいますが、各スタッフがいろいろなことを兼務しながら取り組んでいますね。

クラブとの交渉も、スペイン国内から、アジアやアメリカなど世界中を飛び回っていますし、パブリッシャーとの契約も必要です。できたばかりの会社なので、“ど”が付くほどのスタートアップ、言わば“どスタートアップ”ですね(笑)。

― 熊谷さんは、これまでさまざまなスタートアップを手掛けてきましたが、『LPE』のスタートアップは何が違いますか?

熊谷 これまでのスタートアップと違うのは、最初からグローバルでビジネスを立ち上げていることですね。グローバルに展開する、大きなポテンシャルのあるプロジェクトですし、やりがいを感じています。

0→1(ゼロイチ)をたくさんやってきましたが、グローバルに挑戦できるチャンスはなかなかありません。『LPE』は“どスタートアップ”かつグローバル拠点で全世界に展開することが魅力的ですし、確立された中で歯車を回すというよりも、ゼロからイチを作っていくアドベンチャーな要素が多いです。自分で新しいものを作りたいというマインドを持っている方には、ぜひ参画していただきたいと思っています。

とくに日本は今、これまでのesportsの座組みから大きく変わろうとしている状況です。まったく新しいesportsビジネスが生まれようとしているので、そこに興味を持つ方とは積極的にお話をしていきたいですね。世界に飛び出したくてもなかなかできない人が多いなかで、アカツキのサポートとともにチャレンジできるチャンスになると思います。

― 日本のesportsシーンは海外に比べて遅れていると言われています。この状況をどのように変えていきたいと考えていますか?

チャビ 私たちは日本のesportsにも貢献したいと思っています。将来のためには現在が大切です。まずはリージョナルな形でクラブやサポートしたいスポンサーを集めて、国内で強くなる。こうした土台がしっかりとできているからこそ、外に出たときに活躍できるようになります。

アジアでは中国や韓国のほうが進んでいますが、その中国も数年前までは遅れていて、投資などアクションを起こしたから今があります。日本にもアクションが必要です。『LPE』とアカツキの共同プロジェクトを通して、日本のesportsに貢献できたら嬉しいですね。

日本は良いゲームを作るという意味では世界一だと思っていて、しっかりとしたゲームの文化を持っています。だからこそ、esportsの分野に力を入れるべきだし、いずれは世界的な先進国になる必要があると思います。

熊谷 チャビが言ったように、日本はゲーム文化が発展しています。ゲームの他にも、アニメなど日本独自の文化がたくさんある。これからは他の国では成り立たなかった、日本独自の新しいesportsの文化を作っていきたいですね。具体的なアイデアもたくさん持っています。テクノロジーを絡めた動画配信とか、やりたいことはいっぱいありますよ。

― 『LPE』が日本のesportsシーンを次のステージに進ませるかもしれませんね。

熊谷 十分にありえると思います。日本のプロチームからもお声掛けいただいていますし、日本にはいくつかのメジャースポーツがありますから。彼らがチャレンジすることによって、他の人たちにももっともっと浸透するはずです。これは『LPE』の価値観とも合致するところです。

― 有名なクラブが多数参入することでリーグの価値が高まり、スポンサーを集めるうえでも強みになるのでは?

チャビ 参入クラブひとつひとつを見ても、ブランド力とマーケティング効果が非常に高い。それがひとつのリーグに集まって戦うわけです。しかも、固定した地域ではなく、グローバルで展開するので、ものすごく高いマーケティング効果があると思っています。

『LPE』としては、このバリューを活用してスポンサーを集めたり、収入に変えていったりして、エコシステムを安定させる努力をしなければなりません。

熊谷 世界のビッグクラブといわれているチームは、SNSのアカウントに数億人規模のファンベースを持っていて、すごく魅力的です。そういう人たちに対して、esportsにどうやって興味を持ってもらうかは、僕らリーグとしてのチャレンジであると同時にクラブのチャレンジでもある。

スポンサーはまだ公開していませんが、多くの問い合わせをいただいています。『LPE』の価値観に合うと感じる企業もあるので、今後しっかりした手順を踏んでつなげていきたいですし、グローバルの展開にチャレンジするマインドを持っている方とは、たくさんお話しをしていきたいです。

― 最後に、『LPE』が今後のesports市場にどのようなインパクトを与え、どんな未来を見据えているか教えてください。

チャビ 言葉で表わすなら「安定」と「継続性」ですね。現在のesports業界は、まだまだ不安定です。たくさんのチームが生まれては、いきなり消えてしまうこともあります。『LPE』は歴史あるスポーツクラブと手を組むことによって、そうした不安定さをなくしていきます。社会的に責任のあるプロスポーツクラブがesportsセクションを作れば、簡単に撤退できませんから。

この「安定」と「継続性」によって、やがて文化が生まれるでしょう。esportsという新しい文化を社会にもたらすことができれば、esportsの将来はもっと魅力的なものになると思います。

熊谷 メッシを見て世界中の子供たちがサッカーボールを蹴っているように、esportsの選手に憧れて、小さい子供たちが汗を流しながらゲームのトレーニングをする。それを家族が支えて、地域の方々が応援して、選手がテレビに出ているのをみんなが見る。こんな文化が当たり前のように根付いて、プロスポーツと同じようにesportsが広がっていく社会をつくりたいです。

インタビュー:2018年9月18日

文:松田 剛 写真:大本 賢児 構成:鶴岡 優子

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