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アカツキがesports事業に参入!代表チャビが語る「esportsの本質」

2018.11.05

近年、日本でも認知度が高まっている「esports」。欧米やアジアを中心に複数の大会が開催され、プロのesportsプレイヤーが活躍する様子は世界中で熱狂を呼んでいます。

そんな中、2018年8月にアカツキはプロスポーツチームのみが参加できるesportsリーグ「League of Professional esports」(以下LPE)の設立を発表しました。

9月17日、『LPE』運営の代表であるチャビ・コルテス・トゥビオが、日本財団と渋谷区が開催した「DIVE DIVERSITY SESSION」にて「esportsの本質」をテーマにトークセッションを行いました。

FCバルセロナのesports事業参入もサポートする、esports業界の専門家チャビ氏。チャビが語る、esportsの可能性と『LPE』の展望とはどんなものでしょうか。

チャビ・コルテス・トゥビオPEL, S.L. CEO

ゲーム業界で20年に渡り、アナリスト、ジャーナリストとして活動。FCバルセロナなど世界的スポーツチームのesports事業コンサルティングやesports大会運営を経て、PEL社のCEOとしてLPE運営に従事。

熊谷祐二株式会社アカツキ esports事業部 マネージャー /PEL, S.L. 取締役

これまでIT企業3社を創業したシリアルアントレプレナー。 2014年にiemo社 共同代表取締役就任を経て、同社をDeNA社へ売却。 2015年にスポーツテック事業を手掛けるSkyBall社を創業、2018年にアカツキ社へ売却するとともに、アカツキのesports事業責任者並びにPEL社の取締役に就任。

esportsはスポーツか?は「YES!」

みなさんこんにちは。チャビと申します。今日は「esportsの本質」というテーマで、私たちが設立したリーグ『LPE』についてのご紹介、現場での市場分析やマーケティングの事例、esportsの将来性についてお話したいと思います。

現在、世界のMLB視聴者数は約1億4万人といわれています。一方esportsの視聴者数は約1億6700万人。実はesportsの視聴者数は、MLB視聴者数を超えているんです。

esportsは、インターネット環境の発達のおかげで急速に変化しました。情報に気軽にアクセスできたり、興味を持ったゲームが世界のどこからでもプレイできるようになりました。その結果、近くの友人同士でゲームをするだけでなく、世界中の誰とでもオンラインでプレイできるようになったのです。

加えて、配信などを通してプロプレイヤーと視聴者の間でコミュニケーションをとったり、視聴者がプレイヤーとしてゲームを楽しんだり…。こうしてesportsのコミュニティが発展していったのです。

こうした話をするとよく聞かれるのが「esportsは本当にスポーツと呼べるのか?」という疑問です。一般的にスポーツと聞くと、サッカーやバスケットボールといったフィジカルスポーツをイメージしますよね。実際にフィジカルスポーツには多くのファンがいますし、そうしたスポーツには皆が友好的です。

私は、esportsもスポーツの枠に入るものであると考えています。なぜなら、esportsもフィジカルスポーツと同様に、個人のスキルや努力、情熱、パッション、チーム間のコミュニケーションといった価値観が重要だからです。スポーツもesportsも、その本質となる価値観は同じです。

LPEが目指す、公平で透明性あるesportsの世界

『LPE』は、プロスポーツ業界の方にesports分野でも戦ってもらう、という考え方から生まれました。プロのスポーツチームは歴史や伝統があり、世界中に多くのファンベースを持っています。

スポーツ界が培った素晴らしい価値観やシステムを、新興であるesportsのリーグづくりに生かしたい。同時に、スポーツ界に対しては、世界中の若者に支持されるeesportsやデジタルの領域をもっと活用してもらいたい、という考えがあります。このリーグは、相互にとって良いインパクトを与えることができるのではと思います。

『LPE』を設立する上で大事にしたことは、リーグで使用するタイトルを特定のスポーツゲームにのみに限定しないことでした。たとえば、サッカー選手ならサッカーゲーム、野球選手なら野球ゲームというように限定するのではなく、本当にesports業界で盛り上がっている様々なタイトルで戦うというのが大事なんです。また、そうすることで、あまりゲームをプレイしたことのない幅広い世代のスポーツファンたちにも、ゲームの楽しさを届けられたらいいなと思っています。

私たちのミッションは、性別や人種、年齢を超えて、誰もが平等に同じゲームをプレイできる世界することです。esportsのリーグ戦は性差を意識することなく平等に戦えます。それから、ゲームはよく暴力的な表現が含まれているというイメージがありますが、『LPE』ではそうした暴力表現を含まないゲームを使用することで、esportsの本質的な価値観を広められるようにしていきたいと思っています。

また、男女の違いだけでなく、どんなコンディション、どんなかたちであっても、チャンスがあるようなリーグにしていきたいです。左の図は、既存esportsリーグのポジショニング・マップです。運営形式や採用タイトル数に応じて、いくつかのタイプに分けられます。これを見るとLPEは、年間を通じた、複数タイトルを扱うリーグを目指すことがお分かり頂けます。右の図はプロスポーツリーグのesports大会とのポジショニングの違いを示しています。LPEは、特定の競技やリーグに留まらず、サッカー、バスケットボール、野球など世界中の様々な競技のクラブチームを迎える予定です。NYヤンキースvsLAレイカーズのような、既存スポーツではあり得ない試合が見られるかもしれません。

FCバルセロナが参戦するLPEだからできること

『LPE』のシステムについてもご説明したいと思います。この『LPE』プロジェクトは、PEL社とアカツキが共同で立ち上げました。我々のコンテンツとプロデュース力で、esportsの通年リーグをつくり、まずはリーグ戦の視聴者を増やしたいと考えています。

『LPE』は、スペインのFCバルセロナやオランダのアヤックス、ブラジルのサントスFCのような有名なプロチームが参加する初のリーグとなります。

これにより、通常のスポーツを応援しているファンという、今までにない視聴者層に興味を持ってもらうという効果が期待できます。

もちろん、ターゲット層として、第一にはesportsの視聴者があります。クオリティの高いリーグ戦を配信することで、彼らの関心を引きたいと考えています。同時に、esportsファンはプレイヤーを通して、スポーツチームを知ることができます。

つまり、esportsと通常のスポーツがフュージョンしたリーグ戦になることで、今までそれぞれに興味をもっていた層を混合することができると考えています。

現在、ゲーム界とスポーツ界それぞれのプロを集めた、今までにないプロジェクトとしてリーグ開催の準備を進めています。すでに決定している日程としては2018年の11月からプレシーズンマッチを開催、2019年から正式開幕いたします。

世界中で広がりを見せるesportsの可能性

最後に、esportsの将来について説明したいと思います。esports視聴者数は2022年に2億7600万人に上るのではないかという予測もされています。NBAやFIFA、NFLといった主要スポーツリーグの視聴者数に追いつき、それを超える可能性もあるのです。私たちは、esportsが今後も安定して成長していくマーケットではないかと考えています。

こちらはesportsメディアの調べで、esportsは若年層に流行っているというデータになります。デジタル化が進んでいく社会の中で20代30代の世代がesportsにとても興味を持っていることがわかります。一方、MLBなどのスポーツファンは平均年齢が高いことがわかります。

こちらのグラフは、esports視聴者のエリア別の分布図になりますが、アジアを中心としたAPACで53%と非常に高い数字を取っています。esportsを視聴することが一般的になってきているといえるでしょう。

こうした人気を受け、企業のマーケティング活用も行われています。日本でも、トヨタやNTTドコモなど大手企業がesports大会に協賛するなどの事例が出てきました。

通常の広告だけではなく、配信を活用した試みなども考えられます。例えば世界的に有名な「Ninja」というゲームのストリーマーがいますが、彼は番組の配信中にUber Eatsを利用するという試みをしています。いわゆるCMのような形で、Uber Eatsから広告料をもらっているんです。

このように、マーケティングの一環としてesportsを活用する様々な業種の企業が、これから多く出てくるでしょう。

esportsはオリンピック種目としても本格的に議論が開始されました。2018年8月にジャカルタで開催されたアジア大会では、esportsが公開種目として採用されるなど注目を集めています。

教育、文化面でのサポートも重要です。全米15州の高校では、esportsが正式に科目として選択できるようになり、大会も教育プログラムの一環として含まれるようになりました。

『LPE』もesportsの将来に貢献していきたいと思っています。esportsの豊かな未来に向け、一歩ずつ一緒に歩んで行きましょう。

質疑応答で盛り上がる会場

チャビの講演の後、アカツキのesports責任者である熊谷も登壇し質疑応答に参加した。

熊谷 ここからは皆さんからのご質問をお受けします。とはいえ、すぐに出てこないかもしれませんので、まずは私からチャビに質問をしてみますね。日本のesportsがこんな風になったら面白いんじゃないか、という提案があれば教えてください。

チャビ 国内でesportsのトーナメントリーグ戦が、より自発的に開催されることが重要だと思います。また、日本でもesportsの浸透の度合いには男性と女性で差が生まれています。この差を埋めていくことも大事だと考えています。

質問者A 海外でのesports大会は競技が始まる前から観客がフェスのように盛り上がっていると聞きます。日本では、そういった大会になりにくいと思うのですが、その違いはどこから生まれると思いますか?

チャビ 海外ではゲームをショーとして楽しむという考え方が発展していますし、そのために観客が見ていて楽しい演出を加えています。日本ではまず、東京ゲームショーのようなゲームの大イベントを活用して盛り上げていくのがいいと考えています。

観客が盛り上がるためには夢中になれるプレイヤーやチームが必要です。日本でもみんなが応援したくなるesportsチームが生まれることで、自然と人気が増すと考えています。
さらに、演出面も大切です。観客がプレイヤーの活躍を応援したくなるような見せ方をすることも必要だと思います。

熊谷 補足しますと、海外の大会も色々な種類があります。サッカーのチャンピオンズリーグのようにプレイヤーの白熱した試合を見る大会もあれば、夏の音楽フェスのように大人から子供まで会場に集まってゲームをプレイする大会もあるんです。後者の方は、友だちの家で一緒にゲームで遊ぶような感覚と近いかなと。そんな風に観客もプレイヤーとして参加できる大会を開催すれば、フェスのような盛り上がりのある空間になるんじゃないかなと思います。

質問者B 先ほど、男女でesportsの浸透度に違いがあるとお話いただきましたが、今後女性にも興味を持ってもらうために良い事例があれば教えてください。

チャビ 女性プレイヤーの発掘に力を入れることが必要です。プロプレイヤーとして活躍している女性に憧れてesportsに興味を持つ人も増えるでしょう。また現在は対戦ゲームタイトル自体が男性に人気があるものに傾いてしまっているので、性別に関係なく楽しめるゲームタイトルを使用することも大切だと思います。

質問者B 『LPE』として女性のプレイヤーをバックアップするという考えはあるのでしょうか?

熊谷 女性のesportsプレイヤーの意見を取り入れて、大会の支援や、プレイヤーへのサポートをしていく予定です。男女差についてもそうですが、年齢差についても検討している点があります。それはサッカーチームのようなU-12リーグ制度です。若いプレイヤーを育成できるリーグづくりも取り入れていきたいと考えています。

女性esportsプレイヤーのエリザベス・Rさん。東京ゲームショウに合わせて来日

質問者C リーグの配信は既存のプラットフォームを使っていく予定なのでしょうか。

熊谷 現状は他社のメディアを使うパターンが多いと思いますが、将来的にはesportsの試合を活性化させる独自のプラットフォームづくりにも挑戦したいです。例えばオフラインでのイベント開催やオンラインでの質問会など、試合以外でも視聴者との関係を構築できるプラットフォームづくりのサポートをしていきたいと考えています。

チャビ 世界的なスポーツチームはSNSなどを通して多くのファンを獲得しています。様々な手法でesportsの人気を高めていきたいと思います。

質問者D サッカーのプロリーグでは移籍やスカウトという話がよくありますが、esportsでも獲得選手の流動は、ビジネスとしても想定されているのでしょうか?

チャビ esportsでも既存のスポーツと同様に、選手の獲得やスカウトは起こり得ると思いますし、そうしたルールの整備も必要になると考えています。リーグに参加するからには勝って結果を残したいですから。

質問者D お話を伺うとサッカーに近い制度を取り入れているようですが、『LPE』では他の競技の導入もあり得るのでしょうか?また、『LPE』はどの程度のレベルの大会を想定しているのでしょうか。

チャビ 『LPE』では、様々なスポーツチームの参加を受け入れる予定はあります。
また、大会について、プロのリーグ戦ですから、もちろんトッププレイヤーを生む大会にしたいと思っていますが、私たちの目的はそれだけではありません。esportsという文化をつくることや、プレイヤーの育成、タレント発掘の場になることも重要と捉えています。
また、既存のスポーツチームが地元住民に愛されるように、esportsでも地域に根ざしたチームが生まれ、地元住民に応援してもらえるようにしていきたいです。『LPE』ではそうした点についてもサポートしていく予定です。

トークセッションは満員御礼、活発な質疑応答も行われ、日本国内のesportsへの関心の高さが伺えました。

このレポートは、2018年9月17日に渋谷・EDGEofで開催された「DIVE DIVERSITY SESSION」での講演を元に記事化したものです。講演では「eスポーツの本質」という表記で発表しましたが、本記事においては「esports」という表記で統一しました。

 

※文中にあるグラフ等の資料は、9月17日「DIVE DIVERSITY SESSION」で利用したものです。

文:堀田 隆大 写真:大本 賢児 

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