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謙虚と傲慢、自信とコンプレックス。両方味方につければ「心がワクワクすること」を仕事にできる

2020.02.18

アカツキのプロデューサー職向け新卒採用イベント『SQUARE』。登壇したのはアカツキが応援する20代の起業家2名。ファーストキャリアの選択肢が広がりつつある今、「心がワクワクすることを仕事にする」「自らが主体となって事業を創出する」ことの魅力と苦労を、代表塩田と起業家が語り合いました。

片石貴展 Takanori Kataishi株式会社yutori 代表取締役CEO

1993年神奈川県生まれ。明治大学商学部卒業後、株式会社アカツキに入社。新規事業部の立ち上げに従事する。2017年12月にInstagramで「古着女子」を立ち上げ、開設から5ヵ月でフォロワー10万人を獲得。2018年4月に株式会社yutoriを創業。

中西裕太郎 Yutaro Nakanishi株式会社TENTIAL 代表取締役CEO

1994年埼玉県生まれ。高校時代はサッカーインターハイ出場経験あり。WEBCAMPに創業期メンバーとして参画後、リクルートキャリアでは当時最年少社員として新規サービスの事業開発や財務戦略を担当。2018年2月にTENTIALを創業。スポーツ×テクノロジー領域で、メディア運営とインソールのD2C事業を展開。

塩田元規 Genki Shiota株式会社アカツキ 代表取締役CEO

1983年 島根県出雲市生まれ。横浜国立大学電子情報工学科を経て、一橋大学大学院MBAコース卒業。 株式会社ディー・エヌ・エーを退職後に、アカツキを創業。著書に『ハートドリブン 目に見えないものを大切にする力』(幻冬舎)。

アカツキは2019年12月、プロデューサー職向けの新卒採用イベント『SQUARE(スクエア)』を開催した。登壇したのは20代の起業家2名。yutoriの片石貴展さんと、TENTIALの中西裕太郎さんだ。この2社は、アカツキCEO・塩田元規が直轄する投資プロジェクト「Heart Driven Fund」の投資先、VILLAGEの一員でもある。

イベントは、冒頭で募った参加者からの質問に答える形で進行。「働くとはどういうことか、なかなか想像できない」「いつ経営者になろうと思ったのか。起業の何が面白いのか」「起業するタイミングはどう決めたのか」「事業を創り、差別化していくとは」「起業は華やかなイメージだが、その裏にどんな地道な努力があるのか」――会場からは、こうした疑問や悩みの声が数多く挙がった。

登壇する塩田・片石氏・中西氏

ファーストキャリアの選択肢が、企業で働くことだけではなくなった今、「心がワクワクすることを仕事にする」「自らが主体となって事業を創出する」とは、実際どんなことなのか?心がワクワクする、自分だけの選択肢を見つけるにはどうすればいいのか?気鋭の起業家が等身大の言葉で語った。

「自信がない」「見返したい」が原動力に

――「いつ経営者になろうと思ったのか」という質問も挙がりましたが、まずはお二人がどんなキャリアを経て起業に至ったのか、教えてください。

中西 スポーツテクノロジーに特化したITベンチャー企業 TENTIALを経営しています。僕はもともとサッカー選手を目指していました。高校時代は全国大会への出場も果たし、夢が手の届くところまで来た矢先、心臓疾患を患ってサッカーの道を断念。その後、ITの世界を知って、起業という選択肢が浮かびました。高卒でリクルートに入社し、ビジネススキルをひと通り学ばせてもらったのち、起業しました。

片石 yutoriという企業を経営しています。インスタグラムメディア「古着女子」の運営を中心としたファッションコミュニティ事業と、バーチャルインフルエンサーを扱うIP事業の二軸でビジネスを展開しています。僕は2016年新卒採用でアカツキに入社し、新規事業開発部で2年働きました。その後、起業し「Heart Driven Fund」にも出資してもらました。アカツキには本当にお世話になっています。

片石氏

――学生時代から、起業は視野に入っていましたか。

中西 はい。病気になってから、「サッカーができなくなった自分に何ができるんだろう」と考えていました。サッカー以上に人に感動を与えることができる、親が喜んでくれるような、人生の選択肢にはどんなものがあるか。そう考えたら「起業しかない」と思ったんですよね。大学にも進学していないし、周りから見たら僕は「サッカーしか取り柄のないヤツ」。それを何とか見返してやりたいという気持ちが原動力になりました。

片石 僕も、漠然とは考えていました。父が中小企業の社長で、いわゆる“会社勤め”のライフスタイルを送っていない様子を見ていたので、僕も自分で何かビジネスをしてみたいという気持ちがありましたね。学生時代はSNS「MixChannel」で動画配信をして、どうやったら再生回数を伸ばせるか?という試行錯誤に夢中になっていました。振り返れば、あれも“プチ起業”のようなものだったのかもしれません。

塩田 中西くんは病気がきっかけで、自分の人生を「意思を持って」選択したんだね。僕も早くに父を亡くしたことで「人はいつか死ぬ」という意識が常に傍らにあった。人生がいつまでも続くものだと思うと、つい意思決定が曖昧になったり、先延ばしできちゃったりするんだけど、皆さんも「もし、もうすぐ死ぬとしたら、どうしたいか」を一度考えてみるといいかもしれない。僕は「自分の命を使うなら、最高に幸せな会社をつくって、自分も幸せになりながら、世の中を良くしていきたい」と思って、アカツキを起業しました。

――早くから起業を意識していたお二人ですが、それでも一度会社に就職していますよね。それはなぜですか。

片石 僕、ものすごく怖がりなんです。正直なところ、あまり自分に自信がなくて、起業してもやっていけるとは思えなかった。だからまずはITベンチャー企業に就職することにしたんです。起業する時も「さあ、アカツキを辞めて起業しよう!」と始めたわけではないんです。いきなりすべてを賭ける勇気はなかったから、当時の上司に相談して、正社員から業務委託に切り替えてもらいました。まずは最低限の生活を確保しながら(笑)、同時に自分の事業を始めてみた。そうして事業が伸びてきた頃に、上司にも背中を押してもらい、自分の会社に専念させてもらうことにしました。

片石氏

僕、ものすごく怖がりなんです。いきなりすべてを賭ける勇気はなかったから、会社勤めを続けながら事業を始めてみました。(片石)

塩田 アカツキを利用した、と(笑)。いや、それでいいんだよ。会社のために働かなくていい、自分のために会社があるんだからね。

中西 僕は、最初はすごく自信があって「ナイキを超える会社をつくるぞ!」と意気込んでいました(笑)。高校卒業後、プログラミングの会社の立ち上げに参画したことも、自信につながっていたと思います。ところが、いざ自分で起業しようと思ったら、まるで社会に通用しないと気づいたんです。ビジネススキルが全く足りない、どこか大きな会社で修行しなければいけないなと。でも、大学を卒業していない僕には、中途採用も厳しいだろうと思いました。そこで、起業家を多く輩出しているリクルートの役員を全員調べて、一人ひとりにメッセージを送ったんです。

中西氏

「ナイキを超える企業を作る!」と意気込んだけど、まるで社会に通用しないと気づいた。だから企業で修行することにしたんです(中西)

塩田 その行動力がすごいね!

中西 そのうちのお一人に「面白いね」と言ってもらって、晴れて中途で入社することになりました。

――「Heart Driven Fund」は若手の起業家にも積極的に投資していますが、新しいことに挑戦している人の共通点のひとつには、「圧倒的な行動量」が挙げられますね。

塩田 今の時代は得られる情報量が多いから、ともすると頭でっかちになりがち。大事なのは、あれこれ考えるより、まず動いてみることなんだけど、特に若いうちは未知なことも多いから勇気がいるんだよね。でも「怖くない」ことは、「すでにやったことがある」ことであるケースがほとんど。一歩踏み出す勇気とは、その怖さを超えることなんだよね。

塩田

あれこれ考える前にまず動くことも大事。若いうちは未知なことが多いから怖いけど、一歩踏み出すのは勇気を持ってほしい。(塩田)

「できない」ことを受け入れると、道が拓ける

――起業前に、会社で働いてみてよかったことはありますか。

片石 とにかく鼻っ柱をへし折られた……いや、折って“いただいた”こと(笑)。アカツキの新規事業開発部に配属されてみると、周りのメンバーとの実力差があまりにも大きかったんです。あらゆることができなかったと言っていい。でも自分としては「これくらいのことはできる!」と思っているから、タスクをたくさん抱えてしまうんです。そして、それがすべて中途半端に終わるんですね。結果、周りに迷惑をかけまくってしまいました。

でもある時「もらった仕事を一つひとつ、丁寧にやろう。相手が期待していることを、まずは期待通りに返そう」というマインドに変わった。自分が「できない」ことを受け入れられるようになったんだと思います。その気持ちが、起業した今もとても役に立っています。「まずは、自分ができないということを受け入れよう」と。

塩田 あまりに自分が「できる」と思い込んでいると、現実とのギャップを感じて苦しいんだよね。もちろんみんなには可能性があるんだけど、一度「できない」自分を受け入れたほうが成長する。だから、謙虚さと傲慢さの両方が必要だと思うよ。

片石 上司の愛も大きかったです。「お前はできないんだから、一つひとつやればいいんだよ」と言い切ってくれました。

中西 僕はリクルートで働き始めた頃、意気がっていたのですが、徹底的にボコボコにされました(笑)。それでも、議事録を丁寧にとるとか、頼まれたことを10倍の形で返すとか、日々の仕事を前向きに、積極的に行うようにしていたら、ようやく周りとの信頼関係が生まれて。そういう小さなことから一通り学ばせてもらい、スキルがついてきたところで卒業させてもらいました。その経験がなかったら、起業しても厳しかったかもしれません。

中西氏

「自分で決めた」ことに胸を張る

――「事業を創り、差別化していくこと」についての質問もありました。代表して塩田さん、エンターテインメントを事業としていくことの本質とはどんなことでしょうか。

塩田 アカツキは、エンタメを「人の可能性を拓くもの」と定義しています。ゲームでも映画でも音楽でもアートでも、エンタメが人を感動させるのは、その人の心の中にある「本当はこうしたい」「こうだったらいいのにな」という欲求が反映されていることに気づいたとき。日常生活を送る中では、「本当はこうしたい」という思いがあっても、なかなかその通りに生きられず、蓋をしてしまう人も少なくありませんよね。

でも、エンタメを通すと、普段は見過ごしてしまう、そんな心の内側に秘めた思いや、真に求めていることに気づくことができる。それがその人に勇気を与えて、可能性を拓くきっかけになったりする。エンタメ以上に、理想的な世界をつくっていくパワーを持っているものはないと確信しています。

事業の本質は、人や社会にどれだけ良い影響・変化をもたらせるかということ。人間が自分の本当の思いに気づき、それに従って生きていける――そんな理想的な世界をつくるのが、アカツキのエンタメ事業の本質です。

――「苦労話が聞きたい」という声もありました。実際に起業して、大変なのはどんなことですか。

片石 昨年は、世間からの注目度と、実際の実力とのギャップが大きくて憂鬱でした。それを超えたら楽になるかなと淡い期待を抱いていたけれど、事業が伸びてきたら伸びてきたで、今度はカスタマーサポートがとにかく大変。いま必死に対応を進めていますが、心が折れそうです……(笑)。

きっと、ずっと何かが“憂鬱”なんだろうなと。その憂鬱と折り合いをつけながら、いかに楽しいことや少しずつできるようになってきたことを見出すか――それが、経営者に必要な心構えじゃないかと思います。

片石氏

塩田 周りからの期待をどう受け止めるか葛藤したり、ありたい自分と実際の自分とのギャップに苦しむというのは、もしかしたら就活生の皆さんにも通じるものがあるかもしれない。

誰かの期待に応えようとばかりしていると、上手くいかなかったときにその「誰か」を恨むことになります。僕だってそうです。「株主の期待に応えなきゃ」とか「社員の期待に応えなきゃ」とばかり思って頑張っていたら、株主や社員のことを嫌いになってしまうと思う。

会場の様子

でも、自分のワクワクする気持ちを優先して決めたり、自分が「この期待には絶対応えよう」と意志を持って選んでいれば、「ダメだったとしてもオッケー」って思えるんです。会社選びにしても、「この会社に入ったら、こんなことをしてくれるだろう、こんな自分になれるだろう」と相手に過剰に期待していたら、きっと傷つきますよ。期待を完全に満たしてくれる会社なんてないから。どんな選択であっても、「自分で決めた」ということに胸を張ってほしいなと思います。

SQUAREのバルーン

アカツキ採用情報

アカツキでは2021年3月に卒業を予定している学生のみなさま向けに、アカツキの社内外で活躍する方々からインプットを受けることでご自身のキャリアや人生について考えられる、採用イベントを行っています。

■アカツキ新卒採用サイト https://recruit.aktsk.jp/students/

文:塚田 智恵美 写真:大本 賢児