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“JAZZ×高校生×青春ストーリー”『JAZZ-ON!』に見る新規IP立ち上げの裏側

2020.07.10

7月で1周年を迎える、アカツキのメディアミックスプロジェクト『JAZZ-ON!(ジャズオン)』。「JAZZ×高校生×青春」を描いた作品の裏側には、音楽への強い思いから生まれたメッセージがありました。プロデューサー・坪井と、マーケティング担当・柳生にその想いを聞きました。

自分の『好き』を過信しない

坪井 『JAZZ-ON!』は、総勢16名の男子高校生がそれぞれの葛藤を抱えながら、部活動のJAZZに熱狂して成長していく姿を描く青春ストーリー。未熟で泥臭くて愚直な男子高校生たちの物語です。現在は、楽曲とドラマを収録したCD、YouTubeでのMV配信を中心に、楽曲やストーリーを展開しています。

柳生 加えて、WEBラジオ『JAZZ-ON! the radio』でのミニWEBドラマの配信や、4コマ漫画『じゃずよん!』をTwitter上で連載するなど、CDとMVを軸に、さまざまなメディアへと進出し始めました。多様なコンテンツ展開に耐えるIPとして大事に育てているところです。

——そもそも、なぜJAZZをモチーフに、IPを開発しようと考えたのでしょうか。

坪井 私はもともと学生時代から音楽が身近にある生活をしていました。中学・高校は吹奏楽部に所属して、大学ではジャズ系のバンドサークルに入り、部室に入り浸っていました。社会人になってからも定期的にライブやセッションバーでの演奏をしています。リモートワークが主流になってからは、ミーティング中に行き詰まると、手元の楽器をいじりだしてしまって、プロジェクトメンバーには呆れられています。

そんな私がプロデューサーになった当時、ちょうど社内で「JAZZを題材とした作品を立ち上げよう」という動きがありました。今までの自分の音楽経験を生かしたいと思い、立候補しました。

JAZZは知れば知るほど奥深い音楽ですが、一方で意識して聴いていなくても耳馴染みがある音楽だと思います。“JAZZ=おしゃれで大人”というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。演奏者、リスナーとしての自分が考えるJAZZをきちんと表現することも大事ですが、一方で、普段は意識してJAZZを聴かない方にも、親しみやすい形で届けられないかと検討を進めていきました。

柳生 作品のコンセプトが固まるまでには紆余曲折がありました。音楽へのこだわりを持つ坪井を中心に、メンバーで検討を重ね、コンセプト、登場するキャラクターや設定、ストーリーを練り上げていきました。

その結果、舞台は2つのJAZZ部がある横浜の高校に。横浜といえばJAZZに力を入れている街として有名なのでぴったりだと思いました。登場するのは、JAZZに対する価値観や考えの異なる2つのチーム、各チーム8名、総勢16名の個性豊かな男子高校生たち……と、細部を描いていきました。二項対立の構造を描くために2チームとシンメ(編集部注:シンメトリーの略)という関係性にもこだわりました。

坪井 もともと音楽好きではありますが、『JAZZ-ON!』の立ち上げに際しては、JAZZについて、その起源や歴史を改めて学び直したり、名盤と呼ばれるものを聴き直したりと、きちんとインプットをすることを大事にしました。特に「世間からJAZZがどう思われているのか」を理解することを重視し、その上で何を、どのように届けるべきか検討しました。コンセプトや設定、ストーリーは、それらを土台につくり上げています。

IP開発にあたり、その分野を好きに越したことはないと思いますが、好きだからこそ、自身の中にある既存の知識を過信しないよう心がけました。

コンセプトや葛藤を体現した「心の声が聞こえる音楽」

——この作品を通じて、どんなことを伝えたいと考えていますか。

坪井 私が一番描きたいのは「理不尽な世界でも、愚直に生きる強さ」です。世の中には、思わず目を背けたくなるような問題が溢れています。特に現代では「なぜ、あの人と分かり合えないのだろうか」「なぜ、こんな思いをしなければいけないのか」と、生きづらさを抱えている人も多くいます

大人になれば、傷つかないように、問題から目を背けたり、やり過ごしたりすることもできるかもしれない。でも、高校を舞台に、大人と子どもの狭間にいる高校生たちを登場人物に据えることで「時に現実に打ちのめされながらも、愚直に向き合い乗り越えようともがく」様を描きたいと考えました。

このコンセプトは、私自身がJAZZという音楽から感じているメッセージ、苦境の中でも前を向いて音を奏でることを止めなかった人々の強さにも通じるものがあると思っています。

柳生 コンセプトについては、坪井を交えて何度も議論しました。難しい現実や、相容れない相手と向き合った先にある、互いの多様性を認め合う世界を、高校生ならではの愚直さ、自分を曲げない姿勢を通して描いていきたいと思います。この世界観やメッセージを描くために、設定や表現上でも工夫をしていますよね。

坪井 登場人物の中に対立構造や葛藤が生まれる様子から、それぞれの信念を曲げない愚直さが見えてくるよう、設定や展開を工夫しています。例えば、舞台となる横浜市立湊ヶ丘高等学校の2つのJAZZ部のリーダーは、それぞれ音楽に対する信念が異なります。本格JAZZ演奏サークル「SwingCATS」のリーダー・智川翔琉は、自らの魂から生み出された音楽を聴き手に届けたい。一方、アニソンJAZZを楽しむ「星屑旅団」のリーダー・鳴海ロランは、聴き手が喜ぶ音楽を届けたい。どちらが良い/悪いではなく「違う」という状態です。相手のことを完璧に理解することができないからといって相手を否定するのでもなく、無視するのでもなく、自分の信念を曲げるのでもない、そんな在り方を描いていきたいと考えています。

また、2つのチームのメンバー同士に、互いに因縁がある、近しいバックグラウンドを背負っているなど、ただならぬ関係を持っている「シンメ」の設定を取り入れています。これから本格的にストーリーが進んでいきますが、このシンメの対をなす2人の関係を通じて、それぞれの葛藤や信念を描いていく予定です。

柳生 これまでに発表している楽曲はいずれもボーカル入りで、登場人物たちが歌っているように聴こえますが、実は「心の中にある感情が、歌となって伝わっている」という設定なんです。こうした表現も、「葛藤しつつも信念を曲げない」様を会話だけでなく、演奏を通して描こうと工夫した点ですね。もちろん不器用ながらに会話をしていくことでわかり合っていく部分もあるので、そうしたやりとりが今後も音声ドラマの中で展開されていくと思います。

坪井 柳生が言った通り、演奏も一種の自己表現です。特にJAZZでは、一緒に演奏している相手と触発しあって、音楽を作り上げていきます。今後も演奏シーンで、お互いの葛藤や信念を知ることができるような表現や手法を模索していきたいです。

1周年キャンペーン「#emonatsu(エモ夏)」がスタート

——7月で1周年を迎えますが、節目にあたりどのような企画を考えていますか。

柳生 「夏を生きる」と「#emonatsu(エモ夏)」をコンセプトとした周年キャンペーンを企画しています。登場人物たちの夏を描くことで、ステージや演奏中の彼らとは違う、等身大の高校生の姿、瑞々しくリアルな瞬間をお届けできるような施策を準備しています。例えば、それぞれのチームでの期間限定のInstagramアカウントを開設する予定です。

周年キャンペーン特設サイトURL:http://jazzon.jp/1st_anniversary/
SwingCATS Instagram:https://www.instagram.com/SwingCATS_official
星屑旅団Instagram:https://www.instagram.com/StarDustBrigade_official
1周年動画:https://youtu.be/ZDwzPyERzpw

坪井 世間的には、ソーシャルディスタンスに配慮するなど、新しい生活様式を前提とした夏を迎えますが、我々は議論を重ねた結果、あえて例年通りの夏を描くことにしました。彼らの日常の中にある一瞬の煌めきを表現し、楽しみに待ってくれているファンの皆さまと一緒に夏を楽しみたい。『JAZZ-ON!』のキャラクターと一緒に夏を感じて頂きたいです

この冬、第二部を皆さまにお届けすることも決定しました。これも応援してくれるファンの皆さまのおかげです。今後も、CDでの楽曲・ドラマの提供を引き続き重視しながら、さまざまな媒体で『JAZZ-ON!』の世界を届けたいと考えています。

——複数のメディア展開を見据えてIP開発をする場合、どんなことが重要と言えるでしょうか。

坪井 メディア展開に関しては、私たちもまだ道半ばではあります。ただ、我々がCDからスタートしたのは「長く愛されるIPをつくりたい」という思いがあったからです。楽曲や音声ドラマを紡いでいくことで、まずは一つの媒体で強固な世界観をつくり上げたいと考えました。

大事なのは、どのメディアに展開したとしても変わらない、作品に通底するテーマやコンセプトを設定することだと思います。最初は、コンセプトや世界観をぎゅっと凝縮してユーザーに届ける。そして、そのコンセプトや世界観を持ち続けながら、表現やストーリーは媒体に合わせて変えていく。たとえ表現が少し変わっても「これも『JAZZ-ON!』だよね」と言ってもらえるような作品にしていきたいです。

柳生 そのためにも、原作として引き続き、CDでの楽曲・ドラマ展開を頑張っていきたいですね。CDを通じて本格的なJAZZ楽曲の良さを広めながら、『JAZZ-ON!』という作品をもっとたくさんの人に知って欲しいです。

坪井 そうですね。声優の方々が、JAZZ楽曲に挑戦するのも本作の魅力なので、楽曲にも注目しながら、多くの人に聞いてもらえたら嬉しいです。

参考情報

JAZZ-ON! https://jazzon.jp/

Twitter https://twitter.com/jazzon_official
4コマ漫画『じゃずよん!』毎週火曜日に連載中

Youtube https://www.youtube.com/channel/UCWbWTsFp-Hlkx5oXY0iJVOg/
Webラジオ『“JAZZ-ON!” the Radio』毎週木曜日配信

文:塚田 智恵美 編集:鶴岡 優子