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偉大なゲームを作るために「変化に適応できる組織」を作る(後篇)

2020.08.07

Chief of Staff, Gamesの湯前 慶大さんに、エンジニアの考え方をベースにしつつも、職能の違いを大事にした組織作りについて話を聞く後篇。聞き手は引き続き、アカツキ応援団でエンジニアリング・アドバイザーの能登 信晴さんです。

前篇を読む→ 偉大なゲームを作るために「変化に適応できる組織」を作る(前篇)

湯前 慶大 Yoshihiro YunomaeChief of Staff, Games

新卒で日立製作所システム開発研究所(現横浜研究所)に入社。Linuxカーネルのアップストリーム活動に従事。2014年10月にクライアントエンジニアとしてアカツキに入社。2017年4月よりVP of Engineeringとしてエンジニア組織のマネジメント業務を行いながら組織づくりに従事。

能登 信晴 Tokiharu Notoアカツキ応援団鼓手長 エンジニアリング・アドバイザー

ソフトウェア・エンジニアリングと人事・組織デザインの境界領域を専門とし、2012年よりアカツキのエンジニアリングを支援。湯前さんの入社以来継続的に 1 on 1 を行い、長きにわたるサポーターのひとり。

目指すのは「変化に適応できる組織」

能登 ゲームの事業部でどういう組織づくりをしていきたいですか?。

湯前 「変化に適応できる組織」はひとつの大事なキーワードです。アカツキはこれまで社内外の変化にうまく適応してきたなと思います。僕がアカツキに入社した2014年から考えて全く予想も出来ない状態に今なっていると思っていて、5年後・10年後に更に面白い会社になるためにも、変化しつづけないといけないなと思っています。

こうやって言うと、変化させまくっちゃう人みたいに思えますが、実際、僕自身は保守的なんです(笑)。僕がこうやって掲げることで、良い塩梅に僕自身の行動が強制されて、適切な方向に進めるだろうなと思っています。

さらに言うと「個が輝く組織」にしたいのと、「チームで解決できる組織」にしたいっていうのがあります。個とチームを二項対立的に考えたいわけでなく、やるべきところをちゃんと考えてやれるように、自然になのか、選択できるような組織でありたいなと。

僕の中では個の最大値は組織の最大成果の一つではあるよなって思ってて。クオリティ高いゲームを作ろうと思ったときに、一人の突拍子もないアイデアから面白いゲームは出るのかなって思っていて、みんなで相談して突拍子もないものが出るのはまれなんじゃないかと思ってるんですよね。突拍子もないアイデアとか、こんな技術を使ってみたらもっといい体験ができるんじゃないかとか、一人ひとりの考えからクオリティの高いゲームが作られていくんじゃないかなって思ってるところです。

一方、一人のできる量は決まっているので、どうやってスケールさせるかってことはチームでやることなのかなって思うんですよね。

チームでやればやるほど、個のとがりがなくなるし、個のとがりを作れば作るほどチームの連携は難しくなる。けれど、それをいい感じにまわせるようになったらいいなあと。どうやったらいいかの明確な答えはないし、この割合がベストというのはないと思うんですけれど、そういうのを自分たちの組織なりチームなりで模索できるようにしていきたいなって思ってるってことですね。

能登 アカツキの中で、とがった個人と個人がいて思いも寄らない組み合わせができるとか、1+1が2以上になるみたいなものは、あるんですか?

湯前 僕の見えている範囲で大きな事象はすぐには出てこないですが、小さいレベルでそういうのが積み重なって複利できいているんじゃないかと思うんですよね。あとは、1+1だと直線上の議論の感じがするんですけれど、ベクトルの違う組み合わせだと補完関係になったりして、新しい価値を生み出す時もあるなと。僕と戸塚さん(取締役 Head of Games)の関係性もそうで。ゲームシステムとして面白いという観点の他に、ちゃんと安定してゲームができるというのも一つの価値で、そういう違う方向の価値を組み合わせることで面白いゲームが生み出されるんじゃないかと。

能登 従来的な組織は真面目な人が歯を食いしばって苦手な役割もやるけど、アカツキはお互いの強み弱みを認めあって1+1=2以上になるようなことはありますよね。

湯前 補完関係にある仲間がお互いのとんがりを活かしていければ理想だなと思っているところですね。それが個が輝き、チームで解決できる組織ということなのかなと。

現場感を大事にするためのまなざし

能登 これだけ大きな組織で、個を大事にしつつ現場感も保つって限界もあるような気がしますが、どうやって隅々までまなざしを向けているんしょうか?

湯前 僕の役割が偉そうなので、偉い人みたいな扱いを撤廃したいと思っていて、まず人間性を出そうと意識しています。マネジメントする人ってすごいスーパーマンみたいな感じで想像が進んじゃう立ち位置なので、同じ人間に思われなくなっちゃう気がしています(笑)。それを取り払う為にも、犬が好き、走る、お酒もすきとか人間味を出すようにしています。

組織活動的にはキャリアに悩んでいる人にはすぐに相談に乗るようにしています。例えば、他の人から僕と1on1するように推薦されることがあって、そういう依頼はすぐにやろうとなりますね。

僕自身、課題解決、課題発見がすごく好きな人なんです。
相手が何に苦しんでいるかわかることで、自分がチーム運営するときに学びを得る事もできるし、相談する側が小さなことだと思うかもだけれど、実はそれが組織にとってすごく大きな課題になっていることかもしれないし。だから、僕は誰からも気兼ねなく相談してほしいなってスタンスです。

能登 湯前さんのやっている機能は、チームとして機能するようにもなるんですか?

湯前 いずれそうなると良いなと思って、少しずつ広げています。例えば、社内ではfourというEngineering ManagerやProject Managerの集まるAgileコミュニティを作っています。お互いの意見を出し合って、より良い組織とは何か、より良い開発チームとは何かを自分たちで議論して解決にもっていく場を作っています。目指しているのは社外のAgileコミュニティのような形で、僕が指揮をとるというより、自律的に動けていけると理想だなと思っています。

能登 チーフっていう役割って一人でリードするけど、スクラムの自己組織化だと自分いらなくしてみたいな事もありますよね。そこを目指すんですか?

湯前 それは根本思想ではありますね。自分が常に指揮とって組織をマネジメントするのはちょっと違うな、と。最初はそういう行動をすることもありますけれど、良いゲームを作ることと良い組織をつくることは自分たちで自然とまわしていけるようになると思っていて、その状態を作りたいと思っています。だから1on1も個人の中でどう感じているのか、を聞いて自分自身のことを理解することを促し、どうやったら現状起こっている問題を自分で解決出来るか考えてもらいます。自分で自分のことを理解できるようになると、自分の中の正しいポジションを理解できるようになります。そうすると、その人が動きやすくなるし、自分が動きやすくなるためにどう他者に働きかけるかという行動を取れる、それが結果的に良い組織になっていくと信じています。

経営メンバーになった、その先のビジョン

能登 湯前さんとして、これからどういうことをやっていきたいとか、どういう人間になりたいとかありますか?

湯前 僕のやってることって、他にあるキャリアパスではない選択をしている感覚はあって、もはや次を考えるのって正直つらいです(笑)。

僕は現場感を失いたくないなーというのはいつも思っていることです。僕の組織作りの根本は、スクラムマスターの話とかもそうですが、現場の課題意識からのもので、そのあたりの現場感が失われるといい組織を作るってことも乖離しちゃうなって思うんですね。組織づくりの理論はもちろん学んでいくこと前提ですが。

現場感を失わない為にも、現場の人と対話するのは忘れないでいきたいし、現場のやり方の解決策をほかの会社でやってない方法で解決するのがたのしい。それは、ポジションとかではないなって感じですね。

能登 それって、CTOがコードを書く時間を失いたく無いですって言っているのに近いですよね。

湯前 それに近いかもですね。

能登 そもそもCTOとかVPoEがコードとどう付き合うかって10年以上いろんな人が試行錯誤してる話だけど、現場感を大事に組織改善できるかって僕らエンジニアから見たら新しい課題ですよね。

湯前 そうですね。そのカギになりそうなのが、人材開発や組織開発をいかに事業の中に入り込んでやっていくかですね。例えば、僕ら事業をやっていく中で、人の入れ替わりがあったときに、引き継ぎのやりかたって自己流でやってるけれど、学習理論を取り入れたらきっともっと効率的になると思うんですよね。人事では人材開発や組織開発について学んでいる方が多いんですけれど、まだアカツキで事業の活動の中に入り込んでいるケースって少ないと感じています。
そういうことができるようになると、より効率的に組織が運営されていくことになっていくんじゃないかと。僕の中でホットトピックです。

能登 事前にいただいたメモの中で、「経営者であり続けたい」という言葉を使っていました。経営者であり続けたい経営者は結構多いけど、それを言語化される人は少なくて、湯前さんは自己目的化してないはずだから、どういう意図で経営をやっていきたいって思っているのか聞きたいなって思いました。

湯前 僕の中では、今回経営メンバーの中に入って考えることは、自分なりの学習につながっているって思っていて、自分の知らない考え方を学べるいい機会だって思ってるんですね。これまで現場で学べることは一定のところまでは学んでこれたので、今度は視点を変えることでまた違った発想が生まれるんじゃないか、と。
何度も現場感を失いたくないと述べているように、最終的には現場に落とし込む、というのが大事だと思っています。あり続けたい、という言葉を使いはしましたが、「現場を大切にして学んだことを現場にアウトプットする経営者でありたい」、が正しい表現ですね。

個とチームの両方を成長させるために

能登 湯前さんの特徴だなって思うのは、学んだことを試してみたいマニアなんですよね。それがずっと続いてここまできて、ELTに入って学ぶこともあって、ずっと変わってなくて、スケールや役割は少し変わっているんですが、根本は変わってない。

湯前 まさに、学んだことを試してみたいマニアなんです!本を読んだりすると、全部実行してみたくなる(笑)。

能登 若干、やっかいな人かもしれないですよね(笑)。経営メンバーに入って、その中でむずかしいけどやりがいがあるテーマとかあります?

湯前 あらゆる専門性を言語化していくことですね。
事業を作っていく中で、それぞれの専門性を使って推進しているっていうのはあると思うんですよね。でも、周囲も自分も専門性を言語化できていないので、専門性を認識せずに正しい評価を受けていないケースがあるんですよね。例えば、よくわからないけれど、この人いるとうまくいく、みたいなパターンがあるんです。他にも、専門性はなんとなく理解しているけれど、言語化が追いついていないのでその人のレベルが本当のところ良くわからない、とか。そういう人たちがちゃんと評価される状態になると、再現性も生まれるし、キャリアを描けてもっと高みを望めると思っているんですよね。そうすると、個人としても嬉しいし、会社としても嬉しい。だから、良くわからない人の専門性を言語化して専門のスキルとは何かを言える状態にしていきたい。

能登 ある種の抽象化や言語化を通して、ロジックでもその人の役割を理解できるってことですかね?

機能性がわからなくてもその人がいればうまくいくことをたたえてやっていく部分はアカツキにあったけど、それをロジカルにとらえて再現性のある形にしていきたいってことですよね?

湯前 そうですね。それのキモの一つに、人材開発、組織開発という専門性の切り口があるんじゃないかなって思ってます。例えば、ハブとなって情報を整理するのがうまい人は、このあたりの専門性を発揮していると思うのですが、本人や周囲がその専門性の自覚がないと「なぜかこの人がいるとうまくいく」ぐらいの理解度になっちゃうと思うんですよね。

なんで僕がこんなに個を強調するかというと、僕はチーム開発を学んできた人間なので、個の開発を信じると自分に言い聞かせることで中庸を保つってことをやってるんだと思いますね。

能登 放っておいたら割とチーム開発を優先しがちという事ですよね?

湯前 そうです。そう言うことです。

あらゆる専門性を言語化する、ということ以外では、アカツキに限定せず、より広い場所での活動もできたらいいなと思ってます。
僕のビジョンは世の中をいいプロダクトが溢れるようにしたいというのがあって、そのために僕の経験がいきると思っていて、それが社会貢献になるのはモチベーションになっています。Podcastやコミュニティ活動を通じて個人や会社単位で相談にのる場合もあります。困っているならカジュアルに相談してもらえるような存在として活動していきたいです。

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