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トップクリエイター・水口哲也氏が見込んだ、色褪せない“アカツキらしさ”

2020.12.25

年2回開催されるアカツキの社内カンファレンス「Akatsuki MASHUP DAY」。ホテル椿山荘を会場に開催した今年2月の第一回目に続き、第二回目が11月13日に開催されました。今回は初のオンライン開催となり、目黒の本社ビルから全社員に向けて配信されました。

例年どおり多彩なセッションが揃うなか、注目を集めていたトークセッションが「アカツキと水口哲也氏の未来」です。ゲストは今年6月からアカツキ社外取締役を務める水口哲也氏。約30年にわたりゲーム業界をけん引し「共感覚的体験」を追い求めてきたトップクリエイターが、アカツキ共同創業者の塩田元規、取締役の戸塚佑貴と意見を交わしました。

水口 哲也 Tetsuya Mizuguchi Enhance代表

セガ・エンタープライゼス入社後、同社情感デザイン研究室室長、ユナイテッド・ゲーム・アーティスツ(UGA)スタジオ代表を歴任。現在は、米国法人Enhance(エンハンス)の代表取締役を務める。また、慶應義塾大学大学院特任教授、金沢工業大学客員教授も兼任。2020年6月よりアカツキの社外取締役

戸塚 佑貴 Yuki Totsukaアカツキ 取締役 Head of Games

新卒入社したディー・エヌ・エーでソーシャルゲーム事業を経て、創業3年目のアカツキに入社。スマホゲーム市場黎明期より、プロデューサー・ディレクターとして複数のゲームプロジェクトの立ち上げを担当。取締役としてゲーム事業全体の執行に取り組む。アカツキの取締役 Head of Gamesとしてゲーム事業全体の総責任者を務める。

塩田 元規 Genki Shiota アカツキ 共同創業者 非常勤取締役

ディー・エヌ・エーに新卒入社後、2010年6月に共同創業者の香田哲朗とアカツキを創業。「A Heart Driven World.」というビジョンのもとアカツキの成長を牽引し、業績拡大に貢献する。2020年6月に代表取締役CEOを共同創業者香田哲朗にバトンを渡し、アカツキの外でもハートドリブンな活動を行う。

気鋭のクリエイター・水口哲也とアカツキの邂逅

戸塚 本日は、今年6月に社外取締役に就任いただいた水口哲也さんをお招きしています。さっそくですが、水口さんのご経歴を紹介するMVがありますので、そちらをご覧ください。

 

戸塚 それでは水口さんから一言ご挨拶をお願いします。

水口 ご縁があってアカツキの皆さんとご一緒することになりました。今後、社外取締役として関わっていけることを楽しみにしています。僕がこの業界に入ったのは、セガに入社した約30年前。現在に至るまで、ゲームのさまざまな側面を見てきました。

Enhance代表、アカツキ社外取締役の水口哲也氏

戸塚 学生のとき、セガに入社を直談判したとか。

水口 そうなんです。当時、ゲームセンターの花形と言えばアーケードゲーム。なかでも、大きな体感ゲームがとてもカッコよく見えたんです。とくに目を引いたのが高さ4、5メートルはありそうな「R360」というゲーム(X軸とZ軸方向に360度の回転機構を備える体感型筐体)。「誰がこんなものをつくるんだろう?」とよく見てみると「セガ」と書いてある。それでアポなしでセガに行って、受付のお姉さんに「おたくの会社に入りたいんですけど」って。フツーに人事部紹介されましたけどね(笑)

当時からVRというコンセプトはあって、NASAが火星探査用の遠隔操作システムを運用していたんです。このテクノロジーをゲームに導入できたら、映画や小説を超える体験が世界に発信できるんじゃないかと胸が躍りました。

戸塚 VRがすでに30年前にあったという事実が衝撃的です。そう考えるとVRで表現できること、スマホで表現できること、さらにPS5といった次世代機が加わって、表現の幅がどんどん広がっていってますね。

水口 ここで、少しアカツキとの思い出を話しましょうか。10年前くらいだったかな、僕がげんちゃん(塩田)とてっちゃん(アカツキCEO・香田哲朗)がいる代官山のオフィスを訪ねたんですよ。

塩田 たしか、創業2年目の頃でしたね。まだメンバーが20~30人規模の時代です。

水口 ずいぶん経つけど、その時に感じたエネルギーや勢いが今も変わらず残ってるよね。これまでいろんな会社と関わったけど、アカツキみたいな会社って見たことない。

「法人」と言うぐらいだから、会社にも“人格”があるんですよ。それは創業者や経営者といったトップマネジメントから溶け出して形成されるものだけど、これだけ大規模な組織になっても「アカツキ」感がちゃんとある。ポジティブなエネルギーに溢れていて、なんか好きなんですよね。

アカツキ 取締役 Head of Games 戸塚佑貴

戸塚 そう言っていただけると嬉しいです。

VRやコンシューマー、スマホなど、この10年でゲーム業界もぐっと多様性豊かになりましたが、それぞれ「没入感」をもたらそうとしている点では共通していますよね。これからの10年は、どんどん統合されていくんじゃないかと思っています。

水口 それは間違いないね。スマートフォンの機能が増えたり、形状が変わっていくなかで、スマホゲームによる体験の質も進化していくでしょうね。

技術・アイデア・人の融合で良作が生まれる

戸塚 塩田さんにとって、水口さんはどんな存在なんですか?

塩田 いつもハグしてもらってるお兄さんって感じ(笑)。知り合った当初からすでにトップクリエイターだったんだけど、僕らの話をピュアな気持ちで聞いてくれてね。

アカツキ創業当時、業界にはビジネスライクにモバイルゲームをつくっているベンチャーもあったんですよ。そんななか、アカツキは命がけで開発に取り組んで、「ゲームってそもそもなんだっけ?」を模索してきた。そういう問いにも水口さんは耳を傾けてくれて、いつも安心感がありましたね。

水口 自分も30代のときは結構ピリピリしてたけどね(笑)。ゲーム開発ってクリエイティブやテクノロジー、アイデアが大事だけど、人も育てていかなきゃいけない。そこに気づいて丸くなったのかもしれないな。とはいえ、年に一度くらいはめちゃくちゃ怒ることもあるけど。

戸塚 作品はヒットしたけど開発チームはボロボロってことも少なくありませんよね。何かの・誰かの犠牲の下に成り立っているところもあるというか・・・。

水口 人も育てるし、作品もつくりたい。それが融合したところに、達成感があると思うんですよ。

塩田はリモートでセッションに参加。会場の二人は手元のPCで塩田と接続しながら、ゲーム談議に花を咲かせた。

塩田 実は、僕が代表を退任することを決めたのは、水口哲也という人間が多分に影響しています。水口さんも10年ほど駆け抜けて、2~3年の休養を挟んでいるんですよ。それで僕にも「いろいろなことを並行してゆっくり進める時間も大事だよ」と後押ししてくれて。僕が辞めて悲しんでいるメンバーがいるとしたら、それは水口さんのせいです(笑)。

水口 え、マジ?俺?(笑)それはアカツキのメンバーに怒られそうだね。でも、チームにも会社にも言えることだけど、統制する人にエネルギーがなくなると、どんどん良くない方向に行っちゃうことがある。だから、創業から10年、全速力で走り続けてきたげんちゃんにも、僕の過去の経験からアドバイスしました。けど、まさか社外取締役をお願いされることになるとは思わなかったな。

塩田 僕からメッセンジャーで就任を打診したんですよ。そしたら、「楽しそうだからやるよ」って言ってくれて。

水口 アカツキには創業からの縁もあったし、やっぱり好きな“人格”なんだと思います。

コロナ危機で再評価される協力プレイの価値

戸塚 先日、新たなプロダクトの配信が始まりましたね。

水口 Xbox Series X、Xbox One、Windows 10 PC向けの「テトリス エフェクト・コネクテッド」ですね。2018年にPS4、PSVRで発売した「テトリス エフェクト」をマルチプレイ対応に拡張したものです。

テトリスがこの世に生まれてから35年、今までいろんなバージョンのテトリスが生み出されてきたんだけど、いまだに、初期ののテトリスが最も完成されているっていう人もいます。僕らが「テトリス エフェクト」でやろうとしたことは、テトリスの再発明。音楽やビジュアル、ストーリーテリングの力を駆使して、テトリスでどこまで人の感情を揺さぶれるか、感動させることができるか、ということです。VRでプレイすると、なおすごい、みたいな。さらに、通信で協力プレイができるようにしたくて「テトリス エフェクト・コネクテッド」になった。

 

戸塚 これは面白そうですね! プレイヤーたちが一体になっているような感じです。

水口 対戦ゲームも根強い支持があるんだけど、プレイ中にギスギスした感じになって、心にどこかマイナスの感情が残ったりすることもある。「テトリス エフェクト・コネクテッド」は協力プレイによって、プラスの感情を生み出すことに重きを置いています。

戸塚 おっしゃるとおり、対戦ゲームを毎日プレイするのはしんどいかもしれません。アカツキもさまざまなタイトルに協力プレイの要素を盛り込んでいるんですけど、そういうゲームって長く続けたくなるんですよね。

水口 「テトリス エフェクト・コネクテッド」のコンセプトは、アカツキのマインドと共通するところがありそう

戸塚 コロナ危機で人と会えない分、相対的にゲームやSNSでのつながりが評価されている気がします。ゲームを介したつながりは、コロナ禍でより重宝されるようになるんじゃないでしょうか。

水口 確かにそうですね。リアルに会えない状況が続いているけど、その状況が、ゲーム業界ではプラスに働いている印象があります。

作品に込められたハートドリブンの原石

戸塚 このセッションを観ている社員から「『Rez』(音楽ゲーム要素を盛りこんだ3Dシューティングゲーム)の開発秘話を聞きたい」という質問が届いてます。

水口 特段、大ヒットしたわけではないですけど、プロデューサーとして心血を注いだタイトルです。ゲームで「気持ちいい」とか「幸せ!」といった感情を引き出したいという思いが原点にありました。僕がセガに在籍していた2001年にPS2、ドリームキャストでリリースした作品です。

構想自体、頭の中では360度VRみたいなイメージでしたが、もちろん、そんなテクノロジーは存在していなかったので、普通にコンソールゲームとして発表しました。VRの実現は2016年の「Rez Infinite」まで待たなくてはなりませんでした。15年越しですね。

戸塚 僕らもスマホゲームとかキャラクターとかの魅力を5~10年かけて追求しなくてはいけないと思っています。情熱が失われないようにチームを数年単位で組んで、本質的価値を探っていきたい。

水口 人間の本質を捉えた「いい体験」って、色褪せないよね。そこがゲーム作りの面白さだと思います。今はちょっと違うかなってアイデアも、いつか命を得るときがくるかもしれない。つくりながら、試しながら、模索していくしかないんですよね。

戸塚 頭のなかの感覚とか、アカデミックな探求もしているんですか?

水口 あまり公にはしないけれど、やってます。ゲームデザインって本能や欲求の再設計みたいなものだと思っています。もともと人間に備わっているのが「本能」で、後天的に得ていくのが「欲求」。積み木を積んでは壊すを繰り返していた赤ちゃんも、成長すると、いつしか積み上げた瞬間に達成感を得るようになる。本能の延長線上に欲求があるわけです。

世界中、誰しもがそういう本能や欲求を持っていて、そのまわりに積み重なっていく経験の“地層”ももっています。だからこそ、ぼくたちは世界中の人と、ある経験でつながれる。その共通性が、いったい何かをよく考えます。だから、こういう視点からの掘り下げも、エンターテイメントを作る上で大事なことだと思ってます。

目黒本社の配信会場の様子。セッションを視聴するメンバーからの質問も受け付けた。

塩田 最後に僕からも質問です。水口さんの作品って、水口さんの“カラー”があると思うんですけど、これまでにないカラーを出したいという気持ちはあるんですか?

水口 何度か自分の殻を壊してみようとしてつくった作品はありますよ。例えばプロデュースした「NINETY-NINE NIGHTS」(大軍勢を操るアクションゲーム)とかね。でも全然違うことにチャレンジしても、何か自分の”カラー”は含まれるもんですね。ストーリーやメッセージ性や、音楽の中とか。
今、ぼくと仕事している内外約50人のスタッフは、割と近い感覚のメンバーが揃っています。それがゲームであっても、アートであっても、共感覚的な体験を深めて、もっと感動させたいよね、時代を良く変えたいよね、みたいな。だったら、その部分をもっと濃く・深くしてやろうという気持ちが強いですね。

塩田 思いが詰まった表現の原石みたいなものがあって、結局それが作品にじみ出てくるのかもしれませんね。

水口 げんちゃんが言うところの「ハートドリブン」ってやつにつながるんじゃないかな。そういう本質的なものこそが、世界中の人に受け入れてもらえる感覚があるんですよ。

戸塚 水口さん、今日はありがとうございました。また、今日みたいにアカツキでゲームの話を一緒にしたいです。よろしくお願いします。

関連リンク

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文:名嘉山直哉 写真:樋木雅美 編集:奥井佳奈