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『八月は夜のバッティングセンターで。』制作裏話。野球愛で結びつく原案とドラマ

2021.09.08

2021年7月8日より、テレビ東京系で好評オンエア中の深夜ドラマ『八月は夜のバッティングセンターで。』。この作品は、アカツキの人気コンテンツ『八月のシンデレラナイン(以下『ハチナイ』)』を原案としたオリジナルドラマ。実力派俳優・仲村トオルと数々の映画新人賞を獲得する若手女優・関水渚のダブル主演。毎話、個性的な女優と日本野球界のレジェンドがゲスト出演し、野球ファンはもちろん、ドラマファンからも熱視線を集めている話題作です。

そんな『八月は夜のバッティングセンターで。』は、一見すると原案と共通する要素がなさそうなストーリー。制作も「これまでにない」スタイルで進んでいったそう。本作のプロデューサーであるテレビ東京の寺原洋平さんと、アカツキで『ハチナイ』のプロデュースを担当し、『八月は夜のバッティングセンターで。』の仕掛け人でもある後藤ヨシアキが、その舞台裏を明かします。

寺原洋平 Terabaru Yohei株式会社テレビ東京 プロデューサー

2002年テレビ東京入社。映画部、編成部などを経て、現在はテレビ東京配信ビジネス局配信ビジネスセンターに所属。深夜ドラマの企画とアイドル事業を担当。手がけた作品は『サ道』『絶メシ Road』『お耳に合いましたら。』など。

後藤ヨシアキ Goto Yoshiaki株式会社アカツキ プロデューサー/マーケター

2016年アカツキ入社。『八月のシンデレラナイン』プロジェクトの企画立ち上げ期からマーケティングを担当。アニメ・ドラマ・マンガに加え、コラボ企画や楽曲制作などハチナイのメディアミックスを統括

「憧れ」を抱く者同士のタッグから生まれた異色ドラマ

今回、ドラマ『八月は夜のバッティングセンターで。』を制作するに当たって寺原さんは原案となるゲーム『ハチナイ』もプレイされたそうですが、どんな印象を持たれましたか?

寺原 じつはぼく、これまでゲームはほとんどやってこなかったんです。実際に『ハチナイ』に触れみたら、コンプレックスを感じましたね。

後藤 コンプレックス?そうだったんですか?

(左)寺原洋平さん、(右)後藤ヨシアキ

(左)寺原洋平さん、(右)後藤ヨシアキ

寺原 そもそもTVドラマは無料で観られるものですが、アプリゲームはユーザーがお金を払って遊ぶもの。つくり手側の置かれている厳しさが違います。そのため、クリエイター側に確固たる戦略とノウハウがある!というのを後藤さんとの会議で感じてました。

後藤 なるほど。我々からすると、ゲームはどうしても「やるぞ!」という能動的なアクションをユーザーに強いてしまうので、受動的に楽しめるTVドラマがうらやましいですよ。特に、寺原さんが手がけてきた『サ道』など、「直感的でなんだか心地いい」感覚になれる作品にめちゃくちゃ憧れます。

ドラマ『八月は夜のバッティングセンターで。』

ドラマ『八月は夜のバッティングセンターで。』

ドラマの原案となった『八月のシンデレラナイン』

ドラマの原案となった『八月のシンデレラナイン』

お互いに憧れを抱く者がタッグを組んで生まれたのが『八月は夜のバッティングセンターで。』と言えそうですね。制作はどのように進んでいきましたか?

寺原 今回は、まさに異種格闘技でしたね(笑)。違う業種同士でタッグを組むことになったので、シナリオも通常のドラマ制作のセオリーを無視したやり方でつくることにしました。例えば、通常は構成を決めるプロット作成の段階で脚本家を入れる場合が多いのですが、今回はそれをやめたんです。

博報堂ケトル畑中翔太さんや、『新聞記者』『やくざと家族』などで知られ、いま最も勢いのある映像ディレクター集団・BABEL LABEL代表山田久人さん、そしてテレ東のプロデューサー2名、アカツキの山口修平さん、後藤さんというメンバーでプロットづくりを行いました。アカツキのお二人との打ち合わせは刺激的でしたね。「いつもどういうかたちでストーリーをつくっていくのだろう?」とゲーム制作者のセンスに興味津々だったので。

寺原 このドラマは1話ずつ、いろいろな悩みを持った女性がバッティングセンターに来るのですが、打ち合わせの中で後藤さんのアドバイスを受けて、10代の若い目線からスタートして、20代、30代の悩みを持つ女性のエピソードにつなぎ、さらに広い年齢層に刺さりそうな登場人物の話に展開していくかたちにしました。

他にもやり取りで印象に残っているのが、登場人物のコスチュームへのこだわりです。仕事帰りの設定だったら、服装で仕事の内容やオフィスの雰囲気がわかるものにするべきだとか、キャラの性格がこうだからドレスはこのデザインとか。ぼくたちももちろん考えるところですが、キャラクター性についてとことん深ぼっていく後藤さんの姿勢は本当にすごいなと。

後藤 わかりやすい部分ではヒロイン夏葉舞の制服でしょうか。イメージしたのは薬師丸ひろ子さんの『セーラー服と機関銃』。複数の制服案があったのですが、なんでも良いわけではなく、誰が見ても〝女子高生が〟バットとボールを持っているという視覚効果が欲しかったので拘ってしまいましたね、衣装合わせの現場にもお邪魔しましたし。女子高生とバッティングセンター、そして蒸し暑い夏の夜という組み合わせが一番エモい、というのが根底にある企画なので、キービジュアルで惹きつけるのは重要だと考えています。

主人公・夏葉舞

「野球愛」でつながったスタッフと、豪華キャスティング

今回は、豪華でバラエティーに富んだ俳優のキャスティングも話題です。

寺原 そうですね。キャスティングを一緒にディスカッションしていったのも新しかったです。ゲーム制作の方たちのキャスティングの思考に非常に興味があって。後藤さんが、女優さんやタレントさんにものすごく詳しいのにも面食らいましたよ。

後藤 出版社時代の経験と、いち深夜ドラマファンとしての感覚だけです(笑)。そこに、寺原さんたち最前線の視点や経験から、アイデアをいただいて素晴らしいキャスティングになったと思います。

なかでも、第8話に登場するハロー!プロジェクトのユニットBEYOOOOONDSに所属する山﨑夢羽(やまざき ゆはね)さんの起用は、多方面から連絡をいただきました。ハロプロは女性ファンも多いですし、ファンの皆さんの熱量がかなり高い。寺原さんと畑中さんが打ち合わせで山﨑さんを熱弁していたのは今でも印象深いです。

寺原 深夜ドラマというのは、キャスティングでいつも苦労するんですが、今回はすべてが上手くいった。それはプロットやキャスティングといった根本の部分からアカツキさんと一緒につくっていけたことも大きかったと思います。あと強かったのが、野球の力。今回、僕のなかでもうひとつのミッションとしてあったのが、みんなの野球愛を、この作品で成仏させることだったんですけど(苦笑)。

「野球愛」ですか?

寺原 じつは、仲村トオルさんが出演OKしてくださったのも、それが大きかったんです。仲村さんは、中学でずっと野球をやっていたけど、プロにはなれないと思い、野球を諦めて役者になった方。球場での撮影の合間、ほかの人がキャッチボールしてるところをずっと眺めていらっしゃいました。それに、関水さんも高校で野球部のマネージャーをやっていたりと、良い縁があるんです。

後藤 6月にドラマの番宣として、東京ドームで開催されたハチナイの冠協賛試合の始球式を仲村さんと関水さんに担当いただいたんですが、あのときもお二人の野球愛を感じました。始球式を終えて帰えられるのかなと思ったら、お二人がぜひ試合を観たい!と、我々と一緒に最後まで試合を観戦されていて。

『八月は夜のバッティングセンターで。』第1話より

第1話より

寺原 そう。仲村さんと関水さんの野球愛は本物なんですよね。

後藤 スタッフの皆さんにも野球好きがとても多いですよね。

寺原 ドラマの監督は、強豪高校の野球部出身ですし、僕も中高ずっと野球部でした。BABEL LABELの皆さんも「野球ものがつくりたい」とずっと言っていました。 協力してくれた裏方のスタッフさんも野球好きの方が多く、現場の雰囲気は最高でしたね!

後藤 その熱が映像にも表れていますよね。レジェンド登場のシーンではスモークが焚かれていたり。打ち合わせ時になかった演出ですもん(笑)。

第1話に登場した岡島秀樹さん

野球愛でいえば、元プロ野球選手のレジェンドの方々も登場します。とても豪華なメンバーですが、オファーも苦労したのでは?

寺原 たしかに、本当にそうそうたる面々ですよね。第一話の岡島秀樹さんに始まり、山﨑武司さん、川﨑宗則さん、五十嵐亮太さん、里崎智也さん、吉見一起さん、山本昌さん、古田敦也さんにこれまで登場いただきました。テレビ東京内でも、スポーツ局から「何がどうなって、このメンバーを集められたんだ?」と聞かれましたよ(笑)。

後藤 会議室で「このエピソードには○○選手ですよね!」って話てる時は楽しいんですけど…実際のところ、皆さんご快諾いただいてから、時間差で緊張が高まりました。

寺原 オファーの際に、企画をお話すると、皆さん「バカだねー、でもおもしろい!」と(笑)。こういう切り口でドラマに出演することがおそらくなかったので、「マジか!」という気持ちで皆さんノッてくださったんです。第一話の放映のときも、わざわざ仲村トオルさんの事務所さんが電話をくださり「すごく良かった!」と感想をいただきました。みんなの野球愛から始まった作品にうれしい反響を得られて、本当にありがたいです。

後藤 放送がスタートする前は、「どういうドラマ?」と疑問に思った方も多かったはずなんですね(苦笑)。でも一度観てもらえたら、居酒屋でおじさんが繰り広げている野球談義を最高の演出で表現したドラマなのだと感じていただけるはずです。

それでいて、「野球を通じて人が成長していく」という『ハチナイ』のメッセージ性も引き継いでいますよね。

寺原 本当にそうですね。ドラマ好きな視聴層に、この作品を通じて『ハチナイ』というゲームの存在を知ってもらえたらひとつの成功だと思います。

第一話が放送される前でまだどんなドラマかわからないときから、TVerのマイリスト登録数がすでに4万5,000件以上(9月6日時点:11万3,100件)あったんですよ。仕掛ける側が「喜んでもらいたい」という気持ちを大事にするとビジネスの成功にもつながるというのを、今回アカツキさんと打ち合わせを重ねる中で実感しました。

『ハチナイ』ファンも、野球を知らなくても、楽しめるドラマ

野球ドラマとしてのおもしろさも十二分ですが、働く女性の悩みに寄り添ったお話でもあるので、幅広い層に楽しんでいただけそうですね。

寺原 そうですね。さっきから野球、野球と言ってますが(笑)、野球ファンではない方に訴える魅力も明確にあります。その一つが「オジ萌え」です。例えば、会社で一生懸命頑張っているのに理解されないときってあるじゃないですか。でもこのドラマでは、仲村トオルさんがその辛さに共感し、前に進む手助けをしてくれる。野球を知らなくても、「仲村さんに頑張りを認めてもらえる」という快感は、この作品のポイントだと考えています。

後藤 仮に野球がわからなくても、根本はヒューマンドラマ。困っている登場人物が「オジさんの野球理論」によりスッキリと心のトゲが抜かれていく様子は、夏の夜の清涼剤になっているかなと。

そして、何度かお話にも出ていましたが、『ハチナイ』ファンも楽しめるつくりになっていると。

後藤 そのとおりです。ドラマが始まった当初は、「『ハチナイ』が原案と言いながら、かなりかけ離れた話じゃないか」というお声もいただきました。でも、最終話まで観ていただければ、ゴリゴリの『ハチナイ』イズムを感じていただけるはず。ゲームやアニメのファンの方には、ぜひ最後まで通して観ていただけると嬉しいです。24分×9回なので、意外とサクッと視聴できます、これからという方は各種配信プラットフォームでぜひ!

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『八月は夜のバッティングセンターで』
公式サイト https://www.tv-tokyo.co.jp/hachinai89/
公式Twitterアカウント(@tx_hachinai89

『八月のシンデレラナイン』
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文:阿部美香 編集:服部桃子(CINRA) 写真:大本 賢児