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アカツキゲームスの産学連携で見えてきた“即戦力”の育て方。ゲームプランナーとして活躍するための3つの要素

2022.04.14

いまや日本の一大産業になっているゲーム業界。多くの人が幼い頃にゲームを遊び、「いつかは業界で働いてみたい」と夢見たこともあるのではないでしょうか。ところが長引く少子高齢化の影響をうけて採用難が続いている業界は多く、モバイルゲーム業界もそのひとつと言われています。

そんな状況のなかアカツキゲームスでは、現場が求める即戦力を採用するため、2021年にゲームの専門学校と産学連携し、学生向けのゲーム制作ゼミとインターン制度を開始しました。本記事では、発起人の磯原浩二さん、永井邦賢さんをはじめ、インターン生の半田竜太さん・飯嶋悠斗さんの計4名に、インターン制度の狙いや内容、今後の展望などを伺いました。

磯原 浩二 Isohara Koji株式会社アカツキゲームス プロジェクトマネージャー

アカツキゲームスでは他社IPを用いた大型モバイルゲームのPMを担当。若手の人材育成支援や採用業務も担い、学生向けゼミやインターン制度に取り組む。

永井 邦賢 Nagai Kuniyoshi株式会社アカツキゲームス プロジェクトマネージャー

アカツキゲームスではPM業務全般を担当しながらPL補佐も担う。業務のかたわら磯原と共に学生向けゼミやインターンシップを立ち上げ、運営に従事する。

半田 竜太 Handa Ryuta東京コミュニケーションアート専門学校 ゲームプランナー専攻卒 現株式会社アカツキゲームス

アカツキゲームスのインターンではリアルIPを用いたリズムゲームの楽譜(ノーツ)制作を担当。2022年入社。

飯嶋 悠斗 Iijima Haruto東京コミュニケーションアート専門学校 ゲームプランナー専攻卒 現株式会社アカツキゲームス

アカツキゲームスのインターンではCDチームの一員としてお知らせ業務等を担当。2022年入社。

求める人材がいないなら自ら発掘して育てよう、採用課題を解決するために専門学校とタッグを組んだ

アカツキゲームスは2021年に東京コミュニケーションアート専門学校(以下、TCA)と提携して学生向けのゼミとインターン制度を始めています。この開始の背景にはどのような狙いがあったのでしょうか?

磯原  アカツキゲームスが手がけているタイトルは多くが3年以上運営している長期プロジェクトです。運営期間が長くなると配置換えや退職するメンバーが出てきますから、当然新しいメンバーを探します。しかし、長期タイトルを運営するためには蓄積してきたノウハウやカルチャーを理解してもらわなければいけません。これはベテランの中途人材にとっても難しい作業なんです。

これはどの業界の採用に関してもいえることだと思うのですが、私の担当プロジェクトでも「良い人材が見つからない問題」に悩んでいました。現場が求めるスキルを備え、自社カルチャーにマッチできるような素養があり、さらに転職活動をしている人というのはとても貴重です。未確認生物のツチノコを見つけるようなもので、ほぼ見つかりません。

そこで僕たちは「人材がいないなら学生の頃から発掘して育てよう」と考えました。授業とインターンを通して実践的なスキルを教えれば学生のニーズに応えられますし、アカツキゲームスもインターン期間で学生の長所や人柄を深く理解できます。

永井邦賢(左)、磯原浩二

なるほど、人材不足に対応するための施策なのですね。ところで、世の中に学校は多数ありますが、なぜTCAとタッグを組むことになったのでしょうか?

磯原  ゲーム業界に入りたくてどこかに進学するとなれば、専門学校かなと考えていたため、ゲーム開発の授業を行う専門学校の学生にターゲットを絞りました。次にどの学校に声をかけるかですが、これは巡り合わせでしたね。TCAとは以前から親交がありましたし、こちらの課題感や構想を伝えたところニーズが合致したのでゼミの開講が決まりました。

2021年の4月にゼミ受講生を募集し、2021年の8月頃からゼミで出会った半田くんと飯嶋くんの2名がアカツキゲームスでインターンをスタートしました。

ゼミではどのような授業を行なっているのでしょうか?

磯原  学生には、モバイルゲームの現場に出てすぐに活躍するためのノウハウを伝えています。僕はアカツキゲームスに入社した業界未経験者にも研修を行っていますが、「働いてみないと分からないことがたくさんあった」という声をよく聞くんです。

現に、モバイルゲームの開発現場では、次々と課題が発生し、それを乗り越えるスキルや心構えが求められます。しかも、モバイルゲームは約10年しか経っていないので家庭用ゲームと比べて歴史が浅く、学校側だけで教育できるほど体系化されていません。そこで、現場で求められるノウハウを実践的に伝えようと考えました。

具体的には、モバイルゲームの歴史や業界知識、業界用語などを座学で伝えました。業界知識や用語は共通言語なので、身に付けておかないと会話についていけません。さらに、細かな指示がないタスクを任された時の動き方や、「普段遊んでいるゲームの優れた点」を発表するプレゼンなど実践機会も設けました。

座学で使われた資料の一部

磯原  その他にも、アカツキでサービスが終了したタイトル『シンデレラナイン』『シンデレライレブン』の素材を活用してゲームを開発する授業もしましたね。

かなり現場に近い実践的な授業だったのですね。

卒業・進級制作展にて展示された『シンデレラナイン」の素材を使用して作られたミニゲーム(反射神経ゲーム)

ゲームプランナーにとって大事なのは「愛」「情熱」「実践」

先ほど育成の話が出たので、少し深掘りしたいのですが、磯原さんや永井さんが、ゲームプランナーを育成するうえで心がけていることを教えてもらえますか?

磯原  まず僕はゲームプランナーに必要な事は「愛と情熱」だと考えています。これさえあれば、モバイルゲーム業界でやっていけるとも思っています。なぜかというと、特に漫画やアニメなどのIPをもとにしたゲームにおいては重要なことで、ユーザーさんは並々ならぬ愛と情熱をそのIPに注いでいます。だから僕たち運営もファンの熱意に応えられる愛とパッションが必要なんです。

僕はIPのIは“愛情のI”で、Pは“パッションのP”だと思っていて、かれこれ10年以上言い続けているんですね(笑)。そこでゼミの中ではそれも教えつつ、「自分が愛と情熱を注いだもの」をプレゼンする課題に取り組んでもらいました。そこで、半田くんと飯嶋くんはIPに対するユーザーさんの愛と情熱をちゃんと理解できている素晴らしいプレゼンをしてくれて、これなら現場でも十分にやっていける素養があると確信出来たので、インターンにスカウトしました。なので、育成というより、発掘するうえで心がけているのは、そういう素養があるかないかを判断できるカリキュラムを行うことで、金の卵を取りこぼさないようにすることですね。

もうひとつ重要だと思っているのはオンボーディングのプロセスです。人材育成の現場で使われている「ロミンガーの法則」では、人の成長に影響を与える要素として「現場の経験」が70%、「人から受けるアドバイスや影響」が20%、「研修」が10%を占めるといわれています。だから今回のインターンでは早く現場で学べるよう座学の比率は抑え、実地で学べるプロセスを組み立てました。

永井 僕は、実践的であるか、を大切にしています。ゲームプランナーとしてお仕事をする上で最低限必要な能力は「オーナーシップ」と「調整力」だと思っています。ゲームのプランナー職は自分ひとりでは何も生み出せない職種です。デザイナーさんやイラストレーターさん、サウンドクリエイターさんやプログラマーさんなど、誰かに何かをお願いする仕事で、関係する人々を取りまとめて引っ張って行かなければいけない。

ゲームプランナーはオーナーシップを発揮して周囲の力を借りながら、ユーザーの皆さんにゲームを届ける仕事なので、ゼミのなかで実際にミニゲームを作るという、オーナーシップと調整力を実践で学べるカリキュラムを組みました。こういった、カリキュラム自体がより実践的で、リアリティのある、現場で活きる学びとなるように心がけて構成しています。結果的に今回のインターンにも、それが活きていると感じています。

おふたりの価値観が浮き彫りになるお話ですね。実際に授業を受けてみて学生の皆さんはどう感じましたか?

半田  現場で求められる心構えやコミュニケーションを教えてもらい、さらに実践もできたのですごく勉強になりました。以前は実際の仕事があまりイメージできていませんでしたが、ゼミやインターンを通して現場の理解度が上がったと思います。

飯嶋  半田くんとほぼ同じ感想ですが、教えてもらったノウハウは一般的な授業ではなかなか学べないものばかりでした。インターンで現場に携わるようになり、業界で働くイメージもつきましたし、満足度はとても高かったです。

なぜ半田さんと飯嶋さんはゲーム業界に? ふたりが話す原体験

話は変わりますが、なぜおふたりはゲーム業界に入りたいと思ったのでしょうか?

飯嶋  僕は中学生の時にモバイルゲームにハマったことがきっかけでした。「こんなに面白いゲームが無料でできていいんだろうか!」と感動して、運営に感謝の想いが湧いてきて。だから僕も将来はゲーム業界で働きたいと思うようになりました。

半田  僕は飯嶋くんとは真逆で、専門に入学する当初はそこまでゲーム業界で働こうと思っていませんでした。小さい頃からバスケを10年以上続けてきましたが、高校バスケ引退とともに辞め、進路に悩んでいたんです。もともとゲームは好きだったため、高校の先生にすすめられてTCAに入りました。

アカツキゲームスで働くうちに開発職へのイメージが変わり、今はゲームの開発や運用に関わって行ければ良いなと考えています。

半田竜太(左)、飯嶋悠斗

インターンとして開発現場で働くなかで学んだことはありますか?

半田  気づいたことは、普段からゲームに触れてきたことがすごく役に立つということです。僕は中学生の頃からリズムゲームをずっとやってきて、アカツキゲームスではリズムゲームの譜面(ノーツ)を作るチームに配属されました。もともと遊んでいたので、「ノーツを作ってください」と指示をもらってすぐに業務が把握できましたし、プレイヤー目線で遊んで楽しい配置を考えることができました。

譜面を作るために一日中楽曲を聴き込むこともありましたね。そのうち自然と楽曲を口ずさむようになり、いつの間にか開発ゲームで取り扱うアーティストのファンになっていました。

ノーツの制作以外にも学ぶことが多く、プランナーとしてIP理解の施策や開発チーム内のコミュニケーション施策、総務業務など様々な仕事を任せてもらい、すごく良い成長体験をさせてもらっています。

磯原  半田くんは肝が据わっているんですよ。他のチームの周年をお祝いする時に、当日朝に頼んでも「やります」と言って堂々とやり遂げてくれました。

左から永井邦賢、磯原浩二、半田竜太、飯嶋悠斗

飯嶋さんはどのようなことを学びましたか?

飯嶋  僕は運営タイトルのCS(カスタマーサポート)業務の担当でしたが、ゼミで学んだことはインターンですぐに役立ちました。たとえば「不具合が起きた時は一旦深呼吸して落ち着く」こと。慌てて対処しようとするとまた別のトラブルが発生してしまうので、すごく実践的な学びでした。

あとはCS業務を担当してみて、IPへの理解が重要だと感じましたね。たとえ1通のメールでも、ユーザーさんに喜んでいただける言い回しで対応すれば「あの運営は世界観をしっかりと理解してくれている」と信頼される要因になります。

そうした対応や施策運営において、長年漫画やゲームに親しんできた経験が役に立ちました。

永井  飯嶋くんはなんでもポジティブに考えてくれるので、チームメンバーとして尊敬しています。他の人ならへこむような失敗も「成長機会だ!」と捉えて糧にしてしまうのです。このポジティブ具合はチーム内でも随一だと感じています。

磯原さん、永井さんから見ても、今回の取り組みは良いインターンシップだったのですね。

磯原  はじめてのインターンシップとしては出来すぎていると感じています。これも巡り合わせで、半田くんや飯嶋くんが来てくれて良かったです。

今回はトライアルで始めたのでインターンの人数を絞りましたが、今後の改善点が見えてきましたし、企画職以外にも応用できるのではと感じました。

「愛と情熱を持ち、先を見据えてチャンスを掴め」、僕らがこの業界を目指す人に伝えたいこと

最後にゲーム業界を志望するに方々に伝えたいことがあれば教えてください。まずはインターン生の半田さん、飯嶋さんからお願いします。

半田  僕からは「ブレずに好きなものを追いかけてください」と伝えたいです。命をかけてもいいと思えるくらい好きなものを応援してきた経験は、思いもよらぬところで役に立ちますし、自信にもなります。

飯嶋  僕から伝えたいことは「積極的にチャンスを掴みに行くこと」です。ゲーム制作の現場で働ける経験は貴重ですし、僕も現場で学ぶことがたくさんありました。機会があれば積極的に挑戦してチャンスを取りこぼさないようにしてください。

とても頼もしい言葉ですね。磯原さんや永井さんからもお願いします。

磯原  僕から伝えたいことは「愛と情熱を価値にすること」です。僕は学生さんと話す時にいつも「ゲーム業界はあなたの好きなものが武器になる」と伝えています。しかし気持ちだけではチャンスは掴めません。キャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定されるという理論もあるのですが、半田くんや飯嶋くんは自らチャンスを掴むための行動をしたということですね。

皆さんも積極的に手を挙げて欲しいし、偶然を引き寄せるために好きなものを発信して欲しい。「こんな知識や経験は価値がない」と思っていても、発信すれば誰かが必ず評価してくれるはずですから。

永井 これから挑戦される皆様には、ぜひ先を見据えて、一つ一つ行動の選択をしてほしい、と伝えたいです。今回も、僕らが「人材が見つからない状態」に対して、先を見据えてゼミなどで行動を起こしたから、半田くん、飯嶋くんのふたりが挑戦してくれ、アカツキに来てくれました。未来は行動した先にしかないものなので、自分が目指したい未来しっかりと考え、その上で自分の行動を選択してこれからの道を歩んでいただきたいです。

―これから業界を目指す人を勇気づけてくれるようなメッセージですね。先を見据えて行動し、チャンスを掴む、これを続けていれば憧れていた業界で働けるかもしれません。本日はお時間をいただきありがとうございました。

文  鈴木 雅矩 編集  大島 未琴 写真  岡村 智昭