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アカツキゲームスのボードゲーム開発新卒研修 第二回目で進化した「世界観」の打ち出し方

2022.06.30

 アカツキでは例年、ゲームプランナーに必要や企画力や自走力を身につけてもらうため、企画職の新卒社員に向けてゲーム開発研修を実施しています。アカツキゲームスではこの取り組みを2022年も実施。前回公開した第一回目の作品につづき、今回は1チーム8〜9人で開発に取り組んだ2つの作品をご紹介します。

第二回目の開発となる今回の両作品の特徴は、なによりもプレイヤーを引き込む世界観が強く打ち出されていること。各チームがどのような経緯で、世界観の強化を選んだのか。それぞれの理由にも注目です。

『ラサ:4つの正義』世界の命運はひとりの「AI」が握っている、デッキ構築型ボードゲーム

チームAの作品は、4人向けの特殊能力×デッキ構築型ボードゲーム『ラサ:4つの正義』です。ゲームの舞台は近未来。AIが人類を凌駕するシンギュラリティ後の世界で、この世の命運を握るAI「ラサ」を巡り、AIと人類が争います。

物語のキーパーソンとなる「ラサ」は、全AIに遠隔アクセス可能な超高性能AIで、女性タイプの機械の体を持っています。彼女の協力を得れば人間社会もAI社会も思うがまま。そのため、さまざまな思惑を秘めた4つの派閥がラサに接触しようとしているのです。

チームA最終発表スライドより。4つの派閥にはそれぞれ思惑がある。

プレイヤーにはゲーム開始時にこれらのロールが割り当てられ、各々がめざす世界をつくるために他プレイヤーと争います。

ゲームの目的はラサを自身の派閥に引き込むことです。 ラサがどんな行動を取るかは、ラサの精神データの状態で左右します。これをゲーム上で表現したのが「RP(Rasaパラメーター)」で、プレイヤーの行動に対応して−12〜+12の範囲で変化していきます。

プレイ時のカード。「-1」と書かれたカードがRPを表示している。(開発中のカードを用いた写真です)

ゲームの勝利条件は、それぞれの派閥に定められた条件を他プレイヤーより早くクリアすること。

例えば、人間穏健派の場合「RPが-1〜-5の状態で解放カウント(ゲーム開始時は「5」に設定され、プレイヤーの行動で数値が減っていく)を0にする」、AI過激派の場合「RPが+6〜+12の状態で解放カウントを0にする、もしくはRPを+12に到達させる」が勝利条件です。この条件を達成するため、プレイヤーはそれぞれに配られた山札を手に、リソースと手札を駆使して頭脳戦を展開していきます。

さて、ラサを自身の派閥に引き込み、己の正義を実現するのは誰なのでしょうか?

相手プレイヤーの派閥は非公開、素性を推理しながらアドバンテージを稼げ

『ラサ:4つの正義』はどのような経緯を経て生まれたのでしょうか? ゲームを制作したチームAの代表者にインタビューしました。

 

チームA開発者代表 左から堀越雅行、高橋一馬、高野巧樹(開発中のカードを用いた写真です)

―『ラサ:4つの正義』は世界観がSFサスペンスのようで引き込まれました。このコンセプトやストーリーはどのように構築されたのでしょうか?

高橋  今回は、与えられたお題をふまえ「プレイ時間60分程度で、コアボードゲーマーをターゲットにしたもの」を制作することになりました。コアボードゲーマー人口で最も多い層が「20代後半〜30代前半の男性」です。リサーチを重ねたところ、この年代のユーザーは、ゲームにロールプレイを求めていて、SF作品が好き、という共通項が浮かび上がってきました。そこで、SF要素を全面に押し出しながら世界観を構築したんです。

『ラサ:4つの正義』の世界観

それで「人間 VS AI」の構図が生まれたのですね。他ゲームとの差別化要素はありますか?

高野  特徴として、プレイヤーはそれぞれの派閥が分からない状態でゲームを始めます。どのプレイヤーがどんな条件を満たそうとしているのか分かりませんから、序盤は探り合いになるんですね。派閥を隠しながら、自分が有利な状況へ盤面をコントロールしていく必要があります。

―お話を聞いていると、駆け引きが問われそうなゲームですね。

高野  そうなんです。さらに、プレイヤーは自分のターン開始時に、好きなタイミングで自分の派閥を明かすことができます。立場を明かすと妨害を受けやすくなりますが、強力な特殊能力が得られ、クリア条件を満たしやすくなります。 心理戦とボードゲーム特有の戦略性を同時に味わえるので、テストプレイの際は「くやしい!もう一回やろう」という声が自然と生まれていました。

開発中のカードを用いた写真です

高橋  約1か月の限られた時間で完成させるのは大変でしたが、自信を持って市場に出せるゲームになったと自負しています。僕は学生時代にボードゲームカフェに勤めて数百種類のゲームを遊んできました。『ラサ:4つの正義』にはその知識をふんだんに詰め込んでいます。

手前味噌にはなりますが、僕が過去に遊んだボードゲームのなかでも10本の指に入る作品だと思います。一度遊べばハマってくれる人は多いはず。ぜひプロジェクトを支援してください!

意気込みは十分ですね。クラウドファンディングの成功を祈っています!

商品の詳細は『ラサ:4つの正義』のMakuakeプロジェクトページで

『ラサ:4つの正義』公式Twitter

『星貫砲コスモレイ』超弩級のビーム砲で異星人の拠点を打ち砕け! 協力型デッキ構築ゲーム

続いて紹介するのは、チームB開発の作品、2〜4人向けの協力型デッキ構築ゲーム『星貫砲コスモレイ』です。

ゲームの舞台は宇宙開拓が進んだ近未来。人類は万能エネルギー資源「ユピテリウム」を発見し、新技術を次々と開拓、繁栄の時代を迎えていました。この繁栄がいつまでも続くと思った矢先、ユピテリウムを狙って異星人ギガスが襲来。人類への攻撃を開始します。

地球史上最大の危機に対して、各国は地球防衛軍を発足。巨大宇宙要塞ゼウスを拠点に異星人ギガスを迎え撃ちます。防衛軍の最終目標はどんな構造物も一撃で粉砕する人類最強の兵器「星貫砲コスモレイ」を放ち、異星人ギガスの司令母艦「タルタロス」を破壊すること。

しかし、ギガス軍は指をくわえて待っているわけではありません。毎ターン、ギガス軍の山札からは軍艦が現れ、防衛軍を襲ってきます。これに対抗するためプレイヤーは防衛軍のクルーになり、星貫砲コスモレイにエネルギーを貯め、ギガス軍の猛攻をしのいでいくのです。

開発中のカードを用いた写真です

開発中のカードを用いた写真です

カギとなるのは本作のリソース要素となる「ユピテリウム」。この資源は防衛手段となる兵器や作戦カードと交換可能です。さらに、ゲームの展開が進むと強力な兵器や作戦もアンロックされます。

さあ、地球の運命は諸君らの手に託された。いざ放て!  星貫砲コスモレイ!!

世界観は往年の名作SFを踏襲、君も地球を守るクルーにならないか?

王道SFの世界観を踏襲した『星貫砲コスモレイ』はどのような経緯を経て生まれたのでしょうか? こちらもゲームを制作したチームBの代表者にインタビューしました。

チームB開発者代表 左から福島優喜、上杉拓己(開発中のカードを用いた写真です)

本作は宇宙戦争モノのアニメや映画を彷彿とさせる世界観ですね。この世界観はどのように作られたのでしょうか?

福島  僕らのミッションは“コアボードゲーマーに刺さる新作をつくること”でした。このターゲットについて調べたところ、30〜40代の男性が多いと分かりました。

上杉  そこで僕らは、この世代にファンが多い宇宙戦争モノのSF作品を世界観の参考にしました。『星貫砲コスモレイ』も往年のSFアニメやロボットアニメと同様に「漢字+カタカナ」のタイトルにして、ゲームロゴもそれらの作品を意識しています。

開発中のカードを用いた写真です

なるほど、自分がまさに30代でターゲット世代なのですが、企画書を見た時にワクワクしました。ゲームにはどのような魅力や特徴があるのでしょうか?

開発中のカードを用いた写真です

上杉  この作品の魅力は、協力プレイのなかで、プレイヤー同士が一体感を感じられることだと思います。例えば、プレイヤーはお互いに作戦カードや兵器を共有することができるんですね。自分のユピテリウムが余っていれば作戦カードと交換して、「これ誰かいりますか?」と渡せます。そのため、コスモレイをチャージする技術者役、敵艦を攻撃する兵士役、作戦カードを発動する軍師役などさまざまなロール(役割)を担いながら、強大な敵に立ち向かうことができるんです。

福島  さらにゲームが進めば、「パイロット」や「艦長」など、強力なバフ能力が使える技能カードもアンロックされます。

技能システムはアツいですね。パイロットが「俺が敵機を倒してくる。艦長、後ろは任せた!」みたいなロールプレイもできそうです(笑)。協力プレイのなかで、プレイヤー同士の絆も深まるのではないでしょうか。

上杉  そうですね、チームが一丸となって敵の猛攻をしのぎながら、エネルギーを貯めに貯め、最後にビームを放つ! そんなカタルシスが味わえるので、仲は良くなると思います(笑)。

チームB最終発表資料より。初期からビームを放つシーンがキーとなっていた。

無事、星貫砲を放てたら、プレイヤー同士でハイタッチしちゃいそうです(笑)。個人的にも好きな世界観なので、プロジェクトの成功を祈っています!

商品の詳細は『星貫砲コスモレイ』のMakuakeプロジェクトページで

『星貫砲コスモレイ』公式Twitter

『ラサ:4つの正義』『星貫砲コスモレイ』はMakuakeでプロジェクト公開中

近未来サスペンス、宇宙戦争とテーマこそ異なりますが、どちらもSFを舞台にした『ラサ:4つの正義』と『星貫砲コスモレイ』。いずれも1プレイ60分程度かかる、腰をすえてじっくり楽しむゲームです。

これらのボードゲームはクラウドファンディングサービスMakuakeで公開中。支援が集まれば作品は商品化され、皆さまのお手元に届けられるかもしれません。

どちらも自信作ですので、「遊んでみたい」と思われた方はぜひ、以下のURLからご支援をお願いします!

文  鈴木 雅矩 編集  大島 未琴 写真  山口 真由子