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ゲームシナリオライター交流会「シナリオ食堂」レポート ~サイバーエージェント×アカツキゲームス シナリオについて大いに語る~

2023.04.19

株式会社サイバーエージェント主催のオフラインイベント、ゲームシナリオライター交流会「シナリオ食堂」が3月16日に開催されました。100人超のゲームシナリオ関連職の方が集結したこのイベントに、アカツキゲームスのシナリオ職(ROOTS)がトークセッションのゲストとして登壇しました。

チームでシナリオに取り組む両社がトークセッションで語ったそれぞれのこだわりや強み、そして昨今なかなか見ない規模のゲームシナリオライター交流会で一体どのような会話が交わされたのか、イベントの様子をレポートします。

それぞれのシナリオ関連チームの色が見えたトークセッション

イベントは立食パーティー形式。参加者たちがテーブルに分かれてお寿司を食べながら自由に話し合うグループ交流会(前半)から始まりました。会場があたたまってきた頃、開催されたのはトークセッション。株式会社アカツキゲームスのシナリオ職「ROOTS」のメンバーと、株式会社サイバーエージェント ゲーム・エンターテイメント事業部(SGE)のシナリオ組織「シナリオユニオン」のメンバーが、参加者から事前に寄せられた質問に答える形で展開されました。

アカツキゲームスの「ROOTS」はプロジェクトを越えてシナリオのクリエイティブとマネジメントを横串で見ていくチームで、2018年に活動をスタート。「ROOTS」の名前には「シナリオはすべての根幹にあるもの」という意味が込められています。

サイバーエージェントの「シナリオユニオン」は10社以上あるゲーム関連の子会社のシナリオディレクター・ライターによるチームで、2016年に発足。シナリオ職の採用・育成や新規プロジェクト応援、社内用シナリオバイブル制作などを行っています。

Q1.シナリオ職の働き方

最初の質問は、「シナリオ職の働き方」。企業に所属するゲームシナリオライターは普段どのような場所でどんな働き方をしているのかというテーマからディスカッションが始まりました。

ROOTS内藤

アカツキゲームスでは現在、リモートワーク中心となっています。コロナ禍前からリモートワークへの移行準備が進められていたそうで、私の場合2020年の入社当時からフルリモート。入社以来オフィスに出社したのはまだ10回あるかどうか。同じ会社で働いているのに今日初めて顔を合わせるメンバーもいます。

シナリオユニオン鎌田

サイバーエージェントではリモートDAYが決められているのですが、シナリオ職は収録もあるので、比較的自由な働き方が認められています。出社してもZoom用のBOXに籠もって執筆するなど、フレキシブルな働き方をしていますね。

比較的一人で作業を進めることが多いシナリオ職のメンバーに孤独を感じさせない工夫として、「ROOTS」では定期的な1on1の実施やノウハウ共有会・懇親会の開催、社員アンケートの実施と全体会での情報共有などに取り組んでいます。

サイバーエージェントは子会社間の距離感がかなり近く、週1で合同ミーティングを実施したり、会社間の異動なども頻繁にあるのだそう。

シナリオユニオン鎌田

違う会社という感覚はなく、隣の部署ぐらいの距離感で分け隔てなくコミュニケーションを取っています。同じビル内でフロアも近く行き来しやすい環境もプラスになっていますね。コロナ禍前は頻繁に実施していた対面での共有会やレビュー会、コンペなども、そろそろ再開させたいと思っています。

いずれの会社もフレキシブルな働き方を担保しつつ、コミュニケーションが取れる場を設けていることがわかりました。

Q2.活躍できる人物像

続いての質問は、「活躍している人物像は?」です。各社でシナリオ職としてどのような人が活躍しているのか語ってもらいました。

ROOTS大竹

ソーシャルゲームはとにかく物量が多く、リリース後は待ったなしで運用が始まりますし、イベントや新機能追加なども発生するので、作業はずっと続きます。それだけ大量のライティングを長期間一人でやるのは難しく、だからこそチームで一緒につくっていく力が必要です。

ROOTSスライドより

また、IPに対するファンの期待を裏切らないため、膨大なインプットをするモチベーションを持てる「IPやキャラクター愛がある人」や、多様なバックグラウンドを持つ人が集まるシナリオ職の中で、掛け合わせができるような「強みや個性を持っている人」は活躍しやすいとのことです。

シナリオユニオン西山

指摘された3点はサイバーエージェントでもすべて当てはまりますね。今挙げられた観点以外では、「いいものをつくるために手段を選ばず動ける人」は活躍している印象があります。悩んだ時は1イベント単位でも「こういう事に詳しい人いませんか?」と探して、会社を越えてどんどん話を聞きに行きます。フットワーク軽く幅広い人から話を聞くために、普段から地道に会社を越えた繋がりをつくる努力も重要だと思います。

シナリオユニオン高林

 「強みや個性がある人」という話がありましたが、自分の強みや個性はこれだと自覚して積極的に発信できたり、強みを理解しそれをどう活かせるかまで考えられる人は求められるし、活躍しているように思います。

一人ですべて完結させる必要はなく、何か1つでも自分の強みや個性をチームの中で発揮していくことができれば活躍できそうですね。

Q3.シナリオ職の社内での評価基準

3つ目の質問は「シナリオ職の社内での評価基準」。どういった基準でシナリオ職の評価を行っているのでしょうか。

ROOTS水野

理不尽な思いをさせることなく、シナリオという不定形なものに納得感のある評価をつけるため、アカツキゲームスで重視しているポイントは3点あります。

1つ目は「期日を守る」こと。ただ、シナリオ起因ではない理由で遅延した場合はトラブルにどう対応したかが大切です。

2点目は「要件を満たす」こと。「自分は面白いと思う」という主観ではなく、プロデューサーなどからオーダーされたポイントを押さえられたかで判断します。もしチームや監修者と合意した要件に添って書いたにもかかわらず、ユーザーから不評だった場合はプロジェクト全体の責任と考え、それを理由に個人の評価を下げるということはしていません。

3点目は「期待に応える」こと。業務委託、契約社員、正社員それぞれ任される役割や期待は違いますので、その中で自分がどの範囲で何を期待されているのかを自覚する必要があります。そのうえでトラブルがあった時には一人で抱え込むのではなく、周りに頼ったり相談できるのも重要なスキルだと伝えています。

シナリオユニオン田中

期ごとに目標を立てて追ってはいきますが、シナリオは定量的に計るのが難しいセクションです。ですから売り上げに繋がらなかったからダメと評価するのではなく、ユーザーの反応など定性でも見ますし、うまいとか面白いといった技術的な面で見ています。

両社とも評価が難しいシナリオの仕事を多面的に捉えようと工夫しているのが伝わってきました。

Q4. 採用時に課している課題と評価基準

ここで質疑応答に入り、ゲストからの「採用時に課している課題と評価基準は?」という質問に対して、まずはサイバーエージェント側から。

シナリオユニオン田中

技術的な部分は大きな指標になるので、社内のプロジェクトからテーマを選んでシナリオを書いてもらい、フィードバックを反映した第2稿をあげてもらう課題を出すなどしています。

また会社で働くシナリオ職の場合、組織に所属する意義を出す必要があります。シナリオは一人で完結するものではないので、チームで円滑にコミュニケーションを取りながら一緒にものづくりができるかという点は重視しています。

続いてアカツキゲームスからは、

ROOTS大竹

アカツキゲームスでは社風に馴染むか、同じ志を持ってもらえそうかというマインドの部分は注目しています。

また、シナリオディレクターとしての技術的な面を見る課題としては、あえてクオリティの低いシナリオを渡して、ディレクションを見る方法なども取り入れています。例えばいきなり命令口調で指示を書くような人と一緒にやっていくのは難しいかもしれませんね。

と、両社個性的な課題を出しつつ「チームで一緒に働きたいと思えるか」という基準は共通していることが伺えました。

会場からはまだまだ質問の手が挙がっていましたが、残念ながらここで時間となり、トークセッションは終了。その後はテーブルごとに交流会の時間に。

「ゲームシナリオライター」の歴史と、急速に進む多様化

グループ交流会(後半)では、どのテーブルも熱気にあふれ、シナリオ職同士ならではの情報交換や同じ立場だからこそわかり合える話などで盛り上がっていました。同じテーブルで話していた相手が、実は同じプロジェクトに参加していた、なんていうことも頻発したそうです。ソーシャルゲームはクレジットが出ないので気づかれないことが多いのですが、こうした機会で形成された繋がりが、今後助け合い切磋琢磨し合うことに繋がればいいなと感じました。

シナリオ職には幅広い年齢や経歴の方がいて、雇用形態も様々。シナリオは作品に年齢の影響が出にくいため、長く活躍しやすいと言われています。ゲームシナリオライターにおける人材の厚みと多様性が伺える光景でした。

そんな中でゲームシナリオに携わって30年以上というシナリオディレクターの大ベテランから伺った「シナリオ職の歴史」は、特に興味深い内容でした。

「30年前はゲームシナリオライターという業種がない会社も多く、プランナーやディレクターが書いている場合が多かった。ゲームシナリオ専門の人なんてほとんどいないし、みんなフリーランスなので、助け合うために数人で互助会を作って活動しているケースも多かったですね。ゲーム会社としても外部のライターに出した方が安く早くできるので、当時はシナリオを外部に発注することが多かったようです。
それが、ソーシャルゲームの登場によってシナリオライターに求められるものが変化し、それに伴って雇用形態も変わりつつあると感じています。長くフリーランスでやってきた方も会社に所属する人が増えてきましたし、若い人は会社に入ってゲームシナリオを書くことがひとつの目標になるでしょうね」

 

コンシューマーゲームからソーシャルゲームへの移行がシナリオ職の裾野の広がりや働き方の多様化にも繋がっているのだと知ることができました。

ゲーム企業の中でも、シナリオ職に関するチームが形成されてから日の浅い企業は多く、アカツキゲームスでも正式にシナリオ職が組織図に掲載されたのは2022年。手探りで運営する企業も多い中で行われたこのイベントは、各社の考えるチームビルディングや評価・採用方法などシナリオ業界のリアルな状況を知れる貴重な機会となりました。

ゲーム開発を支えるシナリオ職。つながりの強化と業界の活性化を願う両社

最後に、両社のトークセッション登壇者に、イベントの感想を伺ってみました。

シナリオユニオン田中

シナリオチームの運営方法が会社によってやり方が違うのかどうかさえわからない状況でした。だから「ROOTS」での取り組みを聞けたのはとても勉強になりました。同じ悩みを抱えているんだと思えることもありましたし、やり方や意識している部分の違いにも気づけたので、早速自社の取り組みにも活かせそうです。

ゲームシナリオはどれだけいいものをアウトプットしていても、認知されにくい仕事。こうして横の繋がりを強めていくことで、ゲームシナリオに携わる人にもっとスポットライトが当たる業界になっていけばいいなと思います。

ROOTS水野

今回非常に多くの方が熱量高く参加してくださったことに驚きました。日々これだけ多くのシナリオライターが頭を悩ませ、手を動かして支えてくださっているのだということを、我々ももっと自覚すべきだと感じました。そういう方の前でノウハウを言語化することは責任を伴いますが、同時に自分たちの大切にしてきたことには価値があるのだと再認識することもできました。

また、シナリオ職の横の繋がりに力を入れている組織が他社にもあることが嬉しく、いい刺激になりました。サイバーエージェントさんが会社を越えていい信頼関係を築いているのを拝見して、自分達ももっといい繋がりを作っていけそうだと感じました。

イベント中、何度も口にしていた「ライターは孤独な仕事」という言葉。今回「シナリオ食堂」にこれだけ多くの人が集まったのも、ものを書く上で仲間や同志が必要だと感じていることの表れなのかもしれません。今後もこうした会社を超えた交流の場を通して、ゲームシナリオ業界の活性化と技術向上に貢献できればと思います。

素晴らしいイベントを開催してくださり、ありがとうございました。