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「良い品質のゲームをつくる鍵は、いかにブレずに開発しきるか」今の市場で求められるディレクターの役割

2023.10.02

Akatsuki Games Creator’s interview」では、アカツキゲームスのめざす「日本最高峰の開発力と運営力で日本発グローバルヒットを生み出す」ための日々の取り組みや考え、今後の展望を、各プロジェクトで働くプロフェッショナルにインタビューしていきます。今回は、新規開発プロジェクトのディレクターをしている須河さんに、今の市場で求められるディレクターの役割について語ってもらいました。

須河 史朗 Shiro Sugawa株式会社アカツキゲームス ディレクター

2016年4月に株式会社コロプラに入社、『白猫テニス』で企画・開発を担う。2019年よりアカツキにて運用タイトルを経験後、新規開発チームに合流し、2022年からディレクターを務める。趣味はキャンプ。

田川 勝也 Katsuya Tagawa株式会社アカツキゲームス 企画部管掌執行役員兼事業管掌執行役員

2016年にアカツキに入社し、プロジェクトリーダーやディレクターを経験。2018年にアカツキ台湾(曉數碼股份有限公司)へ赴任し、2019年からCEOを務める。2021年7月からは現アカツキゲームスに戻り、事業及び企画部において事業管掌役員を務める。趣味はテニス。

強みは「数値に裏付けされた意思決定」と「SNSと連動した持続可能なゲーム体験」

田川 開発プロジェクトのディレクターとして、どのような領域を担当していますか。

須河 協業開発のプロジェクトを担当しております。当社側は運営企画とサーバーサイドエンジニアリングを強みとして持っており、それぞれの会社が強みを発揮しあいながら1つのプロダクトを作り上げております。

田川 今回のプロジェクトにおいて、アカツキゲームスのディレクターに期待されていること、重要視していることは何だと思いますか。

須河 他社さんと協業する際によく強みとなるのが「数字を知っていること」です。当社の担当しているタイトルは売上規模が日本のタイトルの中でもトップランキングに入っていることが多く、継続率などの各種KPIが数値化されて分析しやすい状態にあります。各施策を数字で判断できることがまず強みです。運営型タイトルは長期にわたりユーザーさんに楽しんでもらえるよう、サービスとして継続し続けなければなりません。その観点での善し悪し、施策の優先度等の意思決定を行うことができます。リリースしていないゲームに対しても、数値の裏付けのある仮説を設定し意思決定に反映できることが、当社の強みになると思います。

もう1つはゲームを長期運用する経験が多く、その中でゲームをゲームアプリ単体で扱っていない点です。今の時代、ゲームをゲームプレイの目的のみでやっている人はかなり珍く、TikTokやDiscordといったSNSでの活動にも積極的なユーザーも多い状態です。YouTube、Twitter(X)、Discord、TikTok、そしてゲーム、これらを丸々含めたものが運営型ゲームであると僕たちは思っています。ゲームとSNSの立ち位置が何かを理解して開発・運営を進められるのが、当社の強みなのかなと思います。

田川 須河さん自身はどうしてその2点が重要だと考えるようになったのですか。

須河 アカツキゲームスは幸いなことに協業をお声がけいただく機会が多いです。その際に、自分たちがやるべき領域や協業先が受け取るメリットをしっかりと深掘りしなければならなかったんです。

ゲーム開発に強いノウハウを持っている協業先に対して、対等な関係で価値を出せる領域がなにかを考えたときに、先に言ったような「数字を知っている」ことや、運営型ゲームの「ソーシャル性」を外部サービスもうまく扱いながら考えることができる、ということが強みなのかなと思いました。この領域はまだ今のゲーム業界ではノウハウ化されていない部分だと考えています。

チーム全体が常に胸を張って開発を続けるためのブレない論理構造

田川 もともと成長産業であった日本の運営型ゲーム市場に対し、最近は海外のゲームもどんどん参入してくるなど、競争環境としては激化していますよね。今後この市場で重要になってくるポイントはどんなところにあると思いますか?

須河 スマートフォンゲームの歴史を少し遡ってお話していこうと思います。スマートフォンの普及に伴い、初期は「スマホで遊べるゲーム」として、フリックやタップなどのスマホならではの遊びを提供するゲームが開発されていきました。一定のマーケットが確立され、今度はそのゲームを自分の好きなIPで遊びたい、というニーズに変化した。日本はもともと大きなゲーム市場が存在していたので、国内だけで売上を担保しやすいという特徴があります。そのため、日本市場向けのキャラクター・IPゲームが多く立ち上がって行った。そのままなんとなく安定期に入ったところに、莫大な開発費をかけたグローバル向けのクロスプラットフォームゲームが海外から参入してきて市場を席巻し始めた、というのが今の日本のゲーム市場だと見ています。

以前はグローバルで好まれるゲームシステムと日本独自のゲームシステムに大きく違いがあり、日本国内のユーザーは日本国内で開発されたゲームを好む傾向にありました。ただ、競争の激化と開発費の高騰により新作の数が少なくなってきています。その間も諸外国がどんどんゲームを提供してくれるので、日本のユーザーも海外ゲームに少しずつ順応し始めてきていると感じています。

田川 運営型のゲーム開発が大規模になってきているなかで、ディレクターやプランナーに求められていることは何だと思いますか?

須河 過去のノウハウや成功体験にとらわれてしまうと、苦しくなってきてしまうと感じています。市場に対して諦めず成長する姿勢が、アカツキゲームス内で今一番求められ評価されるポイントだと思っています。

ディレクターという役割でいうと、「ブレない状態をつくる」ことでしょうか。開発規模が大きくなった分関わる人数も増え、意思決定も複雑になっています。いろいろな成功体験を持った優秀な人材が集まっていて、かつ時代の変化が激しすぎて誰も正解がわからない。開発が延びれば延びるほどコストはどんどん膨れ上がって、ビジネスリスクも高まります。つまり、今の時代、良い品質のゲームを作る鍵は、いかにブレずに開発しきるか、というのが僕の考えです。

ひたすらクオリティを追求していくために、出てきた意見をできるだけ1つにまとめた状態を維持し、状況や環境が変わっても、根本の企画はコロコロ変えないようにする必要があります。そのためには、最初から企画の論理構造を明確にしておかないといけない。

これはディレクターにとっては、葛藤と戦うつらい部分でもあります。開発期間が長期に渡ると、「企画を変更してもっと今の時代に合わせたものを出したい」とか「こっちのやり方のほうがもっと売れるのでは」という欲が出てきてしまうんです。それで企画が変更になるプロジェクトがあってもいいと思いますが、もしそれが原因でリリースにつながらないと、作る側の満足感はあってもビジネスとしてはリスクが高くなってしまう。ゲームの品質とビジネスリスクのバランスはいつも葛藤しながら意思決定をしています。

田川 企画をぶらさないために、どのような工夫をされていますか?

須河 まず、僕のなかでは、必要な時間をかけて、みんながモチベーション高く、同じものを作り続けていることで成功に近づくというコンセプトを持っています。市場の変化ももちろん考慮しますが、正直3年後の市場なんて誰も読めないからです。だから、僕自身はブレないんです。

次に、ステークホルダーを含めたチーム全体に対しては、「常に安心して、胸を張れる状態をつくる」ということです。例えば株主や役員、協業先が安心して予算を投資し続けてくれるために、どんな分析結果や言語化が必要か。どんな方針を立てれば、チーム全員が胸を張って「今自分はこれを作っているんだ」と言えるのか。セクションリーダー、ディレクター、協業先、経営陣の顔を予測しながら言語化して方針をまとめていく。こうすることで、チーム全体がブレない状態になると思っています。

田川 ディレクターと一口に言ってもいろいろなタイプがありますが、須河さんはどちらかというと組織ディレクションをして作るものを決めていくタイプですよね。セクションリードやメインプランナーが作りたいものに集中させられる環境が、結果として品質が上がるという信念を持っていると感じます。

須河 自分はひとりでやることの限界を感じたのでこのスタイルになったんですが、正直ディレクターの色だと思っています。アカツキゲームスはどちらかというとメンバーに対して責任を渡していきながら、ボトムアップで作っていくために対話と責任と自主性を重んじる文化が強くある会社です。そこが今の自分のスタイルともマッチしているところかなとは思っています。

田川 たしかにアカツキゲームスには言語化をしながら客観的に議論する風土があると感じています。企画の議論においてはどのように感じていますか?

須河 マネジメント層がコミュニケーションの時間をよく取ると感じています。「自分が決める」というスタイルではなく、どちらかというと対話して意思決定をする印象です。論理破綻がないか、課題と目的に正しく向き合っているかを精査するためのヒアリング能力が高いこと、そうした対話を通じて意思決定することに重きをおいています。理不尽なひっくり返りを感じることはないですね。なのでアカツキゲームスで重要なポジションを任される人は「ユーザーにとっていいもの」の価値観を言語化して共感され、正しく裁量を使い責任を負う、みたいな人なのかなとは思います。

活性化された組織が、飽きさせない運用を生み出す

田川 今は新規開発のディレクターを担当していますが、もしまた運用ディレクターをするとしたら、どのように取り組みますか?

須河 僕は、組織の活性化された状態と運用のクオリティはイコールだと思っています。当社は品質管理や不具合への対処に関して厚い体制のある会社だと思っておりますので、逆に少し攻めた運用企画が可能だと感じております。では1番避けたい状態はなにかというと「飽きること」です。運用組織自体が慣れている、飽きてしまっているときは、ゲームの運用もどんどん味気ないものになってしまいます。逆に運用自体をやりがいに感じている組織状態のときは、チームも想像がつかないことを考え出すことができます。

そうなったときに僕がやるべきことの1つは、チームの負荷を高める存在になることです。負荷を高めるというのは残業や稼働を増やすということではなく、常に新しい課題を与えるという意味です。慣れてきた頃に全然違う課題をチームに与えていく。これを僕は「組織のキングボンビーになる」と呼んでいます笑。自分が壁になって乗り越えるべきものを変えつつ、健全なストレスを与えることによって、それを超えるという形で組織のやりがいに変化を生んでいくことです。

もう1つは、当社には若手がどんどん入ってきているのを活かすことですね。ベテランがこれまで培ったノウハウを活かした安定感ある施策ももちろんありますが、若手が一生懸命向き合って出した運用施策っていうのは、少し突拍子はないかもしれないけど想像がつかなかった結果をもたらしてくれることも多い。

サービスとして起こしてはいけないトラブルはもちろん品質管理側で防いでいきますが、そうではない少し挑戦的なイベントを意図的に散りばめて、チーム全体がその結果を少しハラハラドキドキしながら施策を回していく組織構造をどれだけ維持するかが、運用ディレクターの役割の1つだと思います。

田川 最後に、厳しさもあるゲーム業界ですが、そのなかでもどんな人が今の業界を楽しめると思いますか?

須河 安定した中で自分の作りたいものを作りたいという人にとっては、今の時代はかなり苦しい時代だと感じています。この状況下で、ゲーム業界への挑戦がリスキーと判断する会社も当然あります。ただ、そのなかでアカツキゲームスは挑戦権を持った会社だと感じています。おそらく今の厳しい状況で挑戦できる機会というのは、僕の人生でもそんなにはないと思います。この強大な市場と時代に対して、日本のゲーム業界として一矢報いる気概があり、その経験を求めたい人にとっては、今は最高の思いができるチャンスであり、アカツキゲームスはそれに対して応援する会社でもあります。会社全体が一丸となって大きな挑戦をしている今、一緒に切磋琢磨しながら挑戦できる人間にとって楽しいタイミングだと感じています。

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