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アニメ『怪獣8号』スマートフォン・PC向けゲーム化プロジェクト。ファンの熱量に応える、開発チームの挑戦とは

2024.06.16

6月15日、アカツキゲームスはアニメ『怪獣8号』のスマートフォン・PC向けゲーム化プロジェクトを発表しました。国内外に多くのファンを抱える作品を扱う本プロジェクトは、どのように開発に取り組んでいるのでしょうか。開発チームの想いと挑戦について、アートディレクターの黒籔とプロデューサーの藤田に話を聞きました。

黒籔裕也 Yuya Kuroyabu株式会社アカツキゲームス デザイン部3D開発統括マネージャー / 『怪獣8号』ゲームプロジェクト アートディレクター

様々なゲーム開発会社を経て、アカツキへ合流。グローバルで通用する次世代の3Dゲーム開発を実現するため「プロジェクト暁」を発足、牽引する。現在は『怪獣8号』ゲームプロジェクトのアートディレクターに就任。3Dアーティストチームのマネージャーとして組織開発にも奮闘中。

藤田真也 Shinya Fujita株式会社アカツキゲームス 『怪獣8号』ゲームプロジェクト プロデューサー

2012年アカツキに中途入社。ブラウザゲームのディレクター、プロジェクトリーダーを担当。2013年よりオリジナルIPタイトル「サウザンドメモリーズ」のディレクターに。その後新規オリジナルIPのプロデューサーを経て、プロデューサーとして『怪獣8号』ゲームプロジェクトを牽引している。

ゲームならではの表現で追求し、『怪獣8号』ファンの方に楽しんでいただける作品をお届けする

ー まずこのプロジェクトの全体像や座組などについて伺えますか。

藤田 『怪獣8号』アニメチームの東宝様・Production I.G様とアカツキゲームスの3社共同で原作漫画・アニメに並ぶ第3のコンテンツの柱をゲームが担っていくことを目指した取り組みになります。アカツキゲームスは、ゲームの企画開発、リリース後の運用、マーケティング、プロデュースを担っています。アニメチームと連携した高密度なアニメ連動プロモーション、開発物の迅速な監修フロー等、一体感とスピード感が特徴です。

ー 期待の高い作品だと思いますが、ゲーム開発の方針はどのようなものでしょうか。

藤田 まずは『怪獣8号』ファンの方に楽しんでいただけるもの。それをしっかりお届けしたいと思っています。「ジャンプ+」(集英社)で連載中の原作は、「MANGA Plus」で海外の方も日本と同じタイミングで読むことができ、世界中にファンの方がいます。アニメは地上波放送と各プラットフォームでの配信の他に、アニメとして異例のXでの全世界リアルタイム配信を実施し、オープニング/エンディングに海外の著名なアーティストを起用するなど、多くの漫画・アニメファンを熱狂させ、驚かせてきました。ゲームも同様に、『怪獣8号』ファンの方の期待に応えられる、圧倒的な『怪獣8号』ゲーム体験を感じられるゲームにしていきます。

黒籔 グラフィックスはIPの魅力を存分に感じられるよう、セルルック表現ではありますが重厚さを重視しています。今回公開したティザートレーラーでは、怪獣の災害によって崩壊した都市や、防衛隊の出撃シーンなどを繊細に描くことで、作品の世界観をふんだんに感じられるような構成になっています。『怪獣8号』に相応しい王道な演出で、重厚で壮大なスケール感を片鱗を感じてもらえたら嬉しいです。

藤田 ファンの皆様に遊びたいと思ってもらえる、「初めて『怪獣8号』を読んだときのような衝撃的な印象」をつき詰めた表現をしているので、ゲームならではの『怪獣8号』の持つ魅力を表現できているかなと思います。原作が持つ魅力は何なのか、『怪獣8号』たる肝になる柱は何なのかというのはすごく考えますし、自分も熱心なファンの一人である感覚を大事にしています。

スピード感をもった開発で、ファンの方々の熱量に応えていきたい

ー 本作は『プロジェクト暁』のメンバーが多数在籍していると聞きましたが、今回のプロジェクトに向けて調整したことなどはありますか?

黒籔 昨年8月に発表した『プロジェクト暁』のエンジニアからアートまで、各領域のリードメンバーが本プロジェクトのコアメンバーとして機能しています。当時のマインドで一番大事にしていたのは「スピード感を持って開発する」。それを実現するための開発基盤を作るというのが『プロジェクト暁』の使命だったんですね。それはそのまま引き継がれて、その成果が遺憾なく発揮されています。
『プロジェクト暁』もセルルックグラフィックスですが、「シンプルな設計でポストエフェクトでリッチさを出していく」というコンセプトでした。今回は『怪獣8号』というIPを扱うにあたり、より重厚で重みのあるグラフィックスを作っていこうと考えました。特に気を配っているのはライティングとポストエフェクトですね。モバイル端末の限られた表現能力の中でリッチに見せるために細かな工夫を凝らし、さらに洗練して作られている部分かなと思います。

ー スピード感についても、今回の開発でも遺憾なく発揮されているように感じます。

藤田 原作とアニメがあるので、その熱量にしっかり帯同するということを目指しています。いいものを作るのは大前提、とはいえ永遠に作り続ければいいというわけではないので、スピード開発とファンの方の熱量に合わせて完成させていくことがプロジェクトの肝になっています。なので、アーティスト、エンジニア、ディレクター、プランナー、プロジェクトマネージャーそれぞれが工夫して意識しながら開発していますね。

黒籔 プロジェクトスタート時から「スピード感」は最重要としています。ユーザーの皆様に商品を提供する、市場に投入するタイミングこそ商品の効力や価値なので、そこを逃さず作っていく。“プロの開発を体現する”というのが『プロジェクト暁』の真のテーマだったのですが、それをこのプロジェクトで実現していきます。

関係各社も含めた信頼しあえる『チーム』で、最高のものづくりを

ー このチームならではの特徴や魅力を教えていただけますか。

黒籔 ゲーム開発において万能な人材がすごく多いと思います。3Dゲーム開発は通常、多岐にわたる細かい職能に分かれていますが、経験豊富なコアメンバーが多いこともあってか、セクションをまたいで仕事をしている人が多いかな。手薄なところがあればそれをみんなで埋め合うと言うか、お見合いが少ない多動的なチームです。実例だと、先月まで3Dチームで背景アーティストやってた人が翌月UIのアーティストをやってるとか。僕はゲーム開発を長く経験してきていますが、ゲームを完成させるという目的に向けてそれぞれが最適な行動をとるということに対し、今まで自分が経験した中で一番洗練されてるチームだと思っています。

ー 領域を越えて担当しあうということは、それぞれにある程度裁量を与えているということなのでしょうか?

黒籔 裁量があるというか、基本的に上から何か言われて物を作るということがないんですよね。言われてやってるんじゃなくて、必要だと思ったことを主体的に、能動的にやる。それを提案された時に誰も止めない。「ああ、必要だね、やろう」って。裁量というより、信頼してるって感じだと思います。

ー チームとしてクオリティを上げることに力を惜しまない方々が集まっているのですね。プロデュース側はいかがでしょうか。

藤田 このプロジェクトでのプロデューサーの役割としては、関係各社との連携を密にしていくということが、結果的にプロジェクトに対しての一番の貢献になると思っています。今回は信頼してクリエイティブを任せられるメンバーがたくさんいるので、プロデューサーとしてそれを期待して信じて、全力で関係各社を巻き込んでいくこと、できるだけ多くの目に止まるようプロデュースしていくことが大事だと思っています。

ー お二人ともチームをすごく信頼しているのが伝わってきます。

黒籔 チームにセクショナリズムがないって感じですかね、垣根がない。開発組織としての透明性が高い。組織ができたてで若いから、しがらみとかが何もない。全員がゲーム開発に対して、献身的だと思います。

藤田 関係各社も含めて目指しているところは一致しているので、それをどう実現していくかをしっかり建設的に話せていると思います。ゲームのことはすごく尊重していただいていますし、プロモーションや制作協力のご提案をいただいたり、非常に協力的な関係ができていると思います。

ー 社内のメンバー、関係各社と透明性のあるコミュニケーションが取れているんだなという印象ですが、リモートも多い中、コミュニケーションの取り方で工夫されていることはありますか?

黒籔 コミュニケーションツールとしてSlackを利用しているのですが、日本語のテキストコミュニケーションって、時に冷たいものになりがちじゃないですか。なので、スタンプを多用してますね。テキストは捉え方によってはポジティブな内容でもネガティブに捉えられることもある。でも、スタンプって無条件にポジティブな表現ができるんです。とはいえ、使いすぎるとメリハリがなくなるのでいいアウトプットが出た時に特に力をいれます。クリエイターってアセット1つ、絵素材1つだとしても、何か作って出して、誰かに「いいね」と言ってもらえるとそれだけでモチベーションになったりしますよね。リアルだと普通にできていたことを、リモートワーク下では意識的にやっていく必要がある。誰かが進捗を出してくれた時には感謝と称賛を伝えることが大事かなと。

例えば何やっても褒めてもらえない、反応ももらえない現場だと、だんだん億劫になってくる。締め切りギリギリになってもう直せないっていう時にしか出してこなくなると、結果的にクオリティってどんどん落ちていくじゃないですか。クオリティって結局スピードだと思ってるんですね。10日間与えられて10日かけて最後にアウトプットする人と、3日で1回成果を出せて3回フィードバックを得られる人だったら、絶対後者の方がクオリティが上がる。スピード感が一番大事だから、それを維持するためにできるだけみんなが気持ちよく作業できる、出したら褒めてもらえるみたいなムードを作ることに対してすごく気をつけてるし、文化としても浸透してきてるんじゃないかなと思ってます。

藤田 日々の頑張りとか努力って、どうしても埋もれるじゃないですか。僕がこのチームですごくいいなと思ってるのが、プロジェクト全体会議で定期的に、すべてのセクションの成果物をまとめて共有する時間があるんです。この時間が、いつも楽しみなんですよ。プロデュース的には、客観的に全体を見ることができて「良いものできているな」っていう視点にもなれるし、同じチームのメンバーとして「みんなこうやって頑張ってるんだ」って実感できて、チームの一体感に繋がっていますね。

ー 聞いていて、結束力があっていい循環のあるチームだと感じますが、とりまとめていく上での苦労はありますか?

黒籔 自分も研鑽することですね。常に自分も良いものを出していくことが重要です。それからリモート率も高いので、画面越しのコミュニケーションが前提だと指示を出す側の精度がかなり大事になってきます。なので、自ら絵を描いたり画像検索したり動画作ったりとか。丁寧に繊細に作業していくのが求められるので、目に見えてわかる成果を絶え間なく提供していかないといけないと思います。

作品とともに成長し、会社の10年後の未来を預けられるメンバーを迎え入れたい

ー どういう方に参画していただきたいですか?

黒籔 我々と一緒に成長していけそうな熱意や野心を持った人に来て欲しいですね。会社自体がまだ若いし、ベテランもいますが若い人が多くて空気が若い。ゲーム開発自体が一朝一夕にはできないこと。ゲーム開発会社としては何作か積み上げていかないといけなくて、10年くらいのスパンでの戦いになるんじゃないかと思っています。そう思うと、10年後にちょうど脂が乗ってきて、そのさらに未来を作ってくれるような人に来てもらいたいですね。

ー プロデューサーの視点ではどうでしょうか?

藤田 いい意味で自信を持っている人、勢いがある人に来てもらいたいですね。物作りって内から出てくるものがないと乗り越えられない壁がある。今回の『怪獣8号』自体が「がむしゃらに夢や現実に向き合って、苦しんで、でも負けない」、壁をどんどん乗り越えていくような部分に魅力があると思っていて、作ってるメンバーも同じように成長していると思います。どんどん変化して自分の限界を超えて行ったり、まわりにいる人、隣にいる人を感化できるような、そういう勢いのある人に来てもらいたいなと思います。既にこのプロジェクトに入る前と入った後で、別人のようにビルドアップされている人もたくさんいるので、そういう可能性がある人に来てもらいたいですね。

 

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