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アカツキゲームスのクライアントエンジニアが考える、チームエンジニアリングに求められる要素

2024.07.02

Akatsuki Games Creator’s interview」では、アカツキゲームスのめざす「日本最高峰の開発力と運営力で日本発グローバルヒットを生み出す」ための日々の取り組みや考え、今後の展望を、各プロジェクトで働くプロフェッショナルにインタビューしていきます。今回は、新規開発プロジェクトでリードエンジニアを務める小野さんのプロジェクト異動後の挑戦や理想のチームの形について、エンジニアリング・アドバイザーの能登さんを聞き手に迎えて、お話を伺いました。

小野 敦夢 Atsumu Ono株式会社アカツキゲームス『トライブナイン』プロジェクト クライアントエンジニア

2018年アカツキ中途入社。大型長期運営プロジェクトを担当し、後に『トライブナイン』プロジェクトに参画。バトルパートのリードエンジニアを担当。

能登 信晴 Tokiharu Noto株式会社アカツキゲームス エンジニアリング・アドバイザー

ソフトウェア・エンジニアリングと人事・組織デザインの境界領域を専門とし、2012年よりアカツキグループのエンジニアリングを支援している。

新しいゲームエンジンが台頭するなかで、エンジニアとしての成長を求める

能登 最初にまず、今までのキャリアを簡単にお話しいただけますか。

小野 アカツキ(現アカツキゲームス)にジョインしてからは、大規模運営タイトルに数年携わっていました。クライアントサイドのチームに所属して、新規機能開発や改修を担当していました。ユーザー数が多いということもあり、もし万が一本番で不具合が出てしまったら大変なことになるので、各職種、各チームと、スケジュールや影響範囲の観点で誠実にコミュニケーションしながら着地点を見出し、推進する、ということを行っていました。今は『トライブナイン』チームに所属しています。

能登 前のプロジェクトでもとても重要な役割を担っていたと思うのですが、どうして異動することになったんですか?

小野 異動先からのニーズもあったと思うのですが、自分としてはシンプルに未経験のゲームエンジンに取り組んで、ゲームエンジン自体を深く理解しながら、新しいプロダクトを作りたいと思っていました。ゲーム業界でクライアントサイドを担当するにあたり、ゲームエンジンへの理解度がすごく大事になります。現在のアカツキゲームスの評価基準でも、「クライアント専門性」と呼ばれる項目がありますが、そこでもゲームエンジンの理解度はかなり重要視されていますので。

能登 それで『トライブナイン』プロジェクトに異動されて3Dアクションゲームに携わっていくわけですが、もともとそういう開発経験はありましたか?

小野 この規模・レベルのプロダクト開発経験は、ほぼなかったと言っていいですね。

能登 そんな中でも異動直後からかなり活躍されていたと聞いたんですが。

小野 私が参画したときは『トライブナイン』プロジェクトが一つの山場を迎えるタイミングでした。ちょうどゲームのバトル体験のブラッシュアップとアクション基盤システムの刷新という、ゲームのクオリティを左右する大きなイベントが起こっていたんです。

能登 それはプロジェクトとして重要な局面ですね。コンテンツ(バトル)においても基盤においても、物量はもちろんスピード感もかなり要求されそうです。

小野 はい、おっしゃるとおりものすごく重要なフェーズだったので、強い危機感をもって臨んでいました。自分は参画したばかりで、まだまだアクションゲームのことを理解していなかったですけど、他チームにいたベテランエンジニアが、常に方向性について相談に乗ってくれたりしていて。とてつもない量のチケットをPMさんと眺めながら、「どうにかしますから、どうにかしましょう」みたいなやりとりをしたことを覚えています。とにかくこのゲームのバトルが面白いってことがわかるところまで、ストレッチして頑張ろうと思って取り組んでいました。

ユーザーが没入できる、別世界をくり抜いたような存在感を実現する

能登 過密なスケジュールの中で、おそらくPMやプランナーとのやり取りもあったと思います。他の職種との協力や共同作業で何か工夫されたことはありましたか?

小野 アクションゲーム開発を進める際に、複数セクションを並列で進ませていくことがよくあります。プランナーがパラメーターをデータ設計して、3Dアーティストがルックの部分を創り込んでいく。それを先回りして、ベースの動きをさせるためのデータの「叩き」みたいなものを自分が作り、プランナーやアーティストの皆さんにどんどん入力してもらえるようにしました。

能登 こういうデータを先に作っておいてもらわないと実装できません、ということではなく、小野さんの方で他職種の領域も仮データを作成して、後から正規版のデータを入れてもらうという動き方をしていたんですね。

小野 正直、あのときは本当に一分一秒が惜しくて、この状況を乗り切るまでは、自分でやれることは全部やったほうがいいなと。実際にそれが最速だったし、そのときに必要だったのは、ゲーム性の検証に欠かせない最低限の数のキャラクターと装備のデータだったので、どうにかするぞと。

能登 最低限の数のキャラクターといっても、最初のキャラクターの機能実装とデータ作成をいくつか行うには月単位で時間もかかりますよね。小野さんが1番成長したと感じるのも、この時期ですか?

小野 濃かったですね。今もチャレンジは続いています。そんな中、3Dアクションゲームの経験が少ない自分にとって、並行して進んでいた『プロジェクト暁』とそのリードエンジニアの長野さんの存在は大きいです。開発自体は『トライブナイン』が先行していたのですが、設計思想など、大いに参考にさせていただきました。

能登 アクションゲームって、リアルな物理法則そのままの動きを再現するのではなく、ある意味現実と違うけれどかっこいいアニメーションを実現しなければなりませんよね。

小野 それは未だに課題が多いですね。現実と同じが必ずしも良いわけではないけれど、かといってシステム的な都合の良さを押しすぎると今度は作り物感が増してしまいます。例えばゲームの表現における、投射物の軌道が物理的に正しいとは限らないですが、そうしないと敵に当たらない。ゲームとしての面白さ、遊びを保つことと物理的な整合性、そして見た目のかっこよさや気持ちよさの両方を両立するためにはどういう仕様がいいのかというのは、常に考えなければならない領域です。理想としては、「別の世界をくり抜いたような存在感」を出したいと思っています。そうじゃないと多分プレイヤーは没入してくれません。

能登 僕らが生活している現実世界でもなく、いかにも作り物でもない、また違ったリアリティのある世界が作れるはずだと?

小野 そういう世界だと受け入れられる世界ですね。その中に必ず一貫性やルールを持たせてそこに1つの世界があることに対して説得力を持たせないと、多分どんなにかわいいキャラクターが動いていても人形にしか見えないんじゃないかな。それがまるで生きているかのように錯覚できるからこそ、ユーザーもそのキャラクターを好きになれると思います。

能登 確かにそのキャラクターが生きているっていう錯覚もあるだろうし、ある種の物理法則が働いている独自の世界があって、その世界に愛着を持ついうのは面白いですね。その理想の状態に向けて、どんなチャレンジをしていますか。

小野 おそらく「リアリティのあるゲーム」は、システムや絵作りといった全ての要素の整合性を複合的に解釈して、最終的になるべき絵を想定して、考え抜いて作られているとは思います。それにはエンジニアだけの問題じゃなくて、プランナー、アーティスト、QA との高度な連携が必要になるはずです。それをやるためには、もっと検証プロセスをスケジュールに組み込んでいく必要があると思います。

能登 そういう試してみる、遊んでみるという実証みたいなことをしていかないとなかなか実現していけないと考えているんですね。

小野 そうですね。今もチームのいろんな職種の人たちが厳しいスケジュールの中で頑張ってくれています。でも、本来はチーム全体でじっくり時間をかけてゲームを遊んでフィードバックしあって、さらに緻密に調整していくことが必要なんじゃないかなと思います。

能登 面白さを作っていくというのは、「これ作ってください」「はい作りました、組み込みます」というような一方向ではないですよね。自分たちで遊んで試してみて、それでここが違うということがわかって、じゃあそこからどうするかという試行錯誤がずっと続きますから。

小野 そういうプロセスをしっかり作っていきたいですね。ゲームってプロセスの良さでクオリティも変わってくると思いますので。

メンバー全員が「自分はゲームを創る一員である」と信じられること

能登 ゲームによってどんなプロセスがいいのかが変わってきますよね。

小野 そうですね。私が前に所属していた長期運営タイトルと『トライブナイン』でも、プロセスはかなり違っています。長期運営タイトルには長期運営タイトルの、新規開発には新規開発の正しさがある感じです。それは、大事にしているプロダクトの価値の違いかなとは思います。長期運営タイトルは安定的に運用する必要があるし、チームも大きいからこそ仕様決定のプロセスをちゃんと運用していく必要があります。逆に新規開発は不確実なものを作っているので、面白いかどうか手応えを検証しないといけないんです。

それから、『トライブナイン』はディレクターが「このゲームでどんな遊びを実現したいのか」「どういうところが面白いか」などをすごく言語化してくれています。それを前提として全てのセクションの担当者が、インゲームはこうあるべき、アウトゲームはこうあるべきということを考えていて、このトップダウン要素とボトムアップ要素のバランスがすごくいいんです。各セクションが主体性を持って作り上げてはいるけど、プロジェクトとして見失っちゃいけないゴールが明確になっているからこそ、迷わずに開発できていると感じています。逆に、本来目指すゴールにちょっと矛盾しているのではと思うときでも、そこをベースとして話し合えるから議論がスムーズです。面白さに対してはディレクターが責任を負ってくれているので、自分たちは迷わずにそこを目指せる感じが『トライブナイン』チームのいいところで、すごくありがたいと思っています。

能登 今いろんな課題を出してくださったことも踏まえ、今後の作っていきたい理想のチームの形って具体的に何かありますか?

小野 メンバー全員が当事者意識を持って、自身で考えて動ける組織じゃないとチームが絶対スケールしないと思いました。個々の機能開発にリードが介入しないといけない組織だと、チーム規模は4人ぐらいが限界です。メンバーにある程度大きな単位で裁量を渡して、リードは目標の品質に期間内に着地できそうかだけ確認する。それぐらいのファジーさを許容しないと、とてもじゃないけどチームを大きくすることはできなくて、それができる人材が増えていってほしいと思います。

能登 それは結構難しい話のような気がしていて、下手すると利己的に意思決定してしまう人もいるじゃないですか。

小野 もちろんその人1人で作るわけではなく、プランナーも関わるし、デザイナーも関わります。そのチームのアウトプットが期待の品質に満たないことがあれば、それは意思決定も含めたチーム全体の問題なので、そのチーム全員で解決すればいいですよね。

能登 なるほど。自分たちがベストであると考えるものをお互い交換しながら、ベストなものを形にしていくということですね。

小野 そうです。その機能の最小チームを結成してもらって、職種をまたがったチームがそのアウトプットの品質に対して責任を負うべきだと思います。ディレクターやリードは、その人たちがプロダクトの価値のなかで何を重視しなきゃいけないのか、どういう方向性を向かないといけないのかをちゃんと言語化して示さないといけませんが、その方針の中で個々の機能がどうあるべきか、どういう仕様であるべきなのかは、ある程度チームの主体性に委ねる方がいいです。

能登 言語化された重視することや方向性を理解した上で、与えられた裁量のなか自分で白紙を埋めるような絵を描いていきたい、自発的にゲームを作っていきたいという人に仲間になってもらえると、これからもどんどんスケールしたチームでゲーム作っていけるんじゃないか。そういうことですね。

小野 それこそが当事者意識であり、自分がゲームを作っている一員であることをちゃんと信じられる人ですね。逆にリードが細かい作業内容に対してあれはこうして、これはこうしてと言うのが当たり前の組織だと、多分個々人の自己肯定感というか、自分は歯車なんだという認識が生まれてしまいます。任された機能において自身の最高のアウトプットを出さなければいけないということには、全てのメンバーが責任を負うべきだと私は思います。

能登 責任を負うべきっていうとすごい重荷を背負っている感じがあるけど、その枠の中で最大限面白いものを考えることを楽しめる人がゲーム作りに合っているのはそうですよね。最後に、小野さんが考える、これからのゲーム業界で活躍するために必要なことを教えてください。

小野 最初の方でゲームエンジンの深い理解が必要だという話もしましたし、もちろん多くの知識があるに越したことはないと思いますが、アカツキゲームス以外も含めた様々なプロジェクトでの経験を振り返ってみると「知っているから作れる」っていうケースはあまりありませんでした。私は割と手の速いところが強みだと思っていて、最初はわからなくても、手元で試行錯誤しながら理解してきたし、理解した状態でもう1回作り直してみるというプロセスをありとあらゆるところでやってきました。その結果として自分は技術力を積み重ねてこられた。逆に最初から答えを知るだけのような勉強の仕方ではこの成長はできなかったと思いますし、プロセスを通して問題解決能力が備わったと思います。

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※記載内容はインタビュー当時のものです。