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ENTERTAINMENT

カジュアルゲームスタジオ Buddyは、いまゲーム業界に必要な「挑戦の場」

2019.11.29

アカツキは10月、カジュアルゲーム開発スタジオ「Buddy」を新設しました。さまざまな開発会社・開発者と“Buddy”となって多種多様なタイトルをスピーディにリリースする開発スタイルが特徴です。創設メンバー2人に、「Buddy」を通じてゲーム市場にどんな変革を起こそうとしているのか、話を聞きました。

PROFILE

佐藤恵斗 Keito Satoゲーム事業本部 スタジオヘッド

慶應義塾大学商学部卒業後、2016年に新卒入社。運用IPタイトルのプランナーを経験した後、「八月のシンデレラナイン」チームに参画し、ディレクター、プロジェクトリーダーを担う。また現在はスタジオ「Buddy」を設立し、スタジオヘッドを務める。

PROFILE

直井啓訓 Yoshinori Naoiゲーム事業本部 プランナー 

大手ゲーム開発会社でプランナー/ディレクターを経験し、ゲーム作りの基礎を学ぶ。 その後、フリーランスのシナリオライター兼プランナーを経てBuddyに参加。 家庭用機、携帯機、筐体ものからモバイルゲームの開発/運用まで、広くゲーム創りに携わった経験を活かし、Buddyではカジュアルカードゲーム「TRiPAL」をリリースする

リッチ化に逆行する「カジュアル」のムーブメント

―現在のゲーム業界をどのように捉えていますか。

佐藤 スマホゲーム市場は今、まさに成熟期を迎えています。大小さまざまな制作会社が入り乱れる戦国時代から、一定のコスト・時間をかけてつくられた“ちゃんとしたもの”が求められる市場へ。家庭用ゲーム機でプレイするタイトルと遜色ない、リッチなクオリティのゲームが主流になってきています。加えて、海外、特に中国からは技術レベルの高いゲームが次々とリリースされていて、グローバルなライバルたちと戦う必要も出てきています。

このように市場全体がリッチなクオリティに傾倒しつつある中、それにちょっと疲れた層をターゲットとした「放置系」「カジュアル」のゲームが復興するなど、“逆張り”的なムーブメントも起きています。

個人的に面白そうだと思っているのは、「1億総クリエイター時代」を迎え、ユーザー誰しもがクリエイター側になり得る中で、これまでとはまったく異なる発想のゲームが生まれてくるのではないかということです。急速に発展を遂げている5Gやクラウド、ストリーミングといった技術も、それを後押しするでしょう。さまざまな観点で、ゲーム市場はいま「過渡期」にあると言えると思います。

直井 市場が成熟すると、新しいものを生み出しづらくなる――これは、制作者が抱えるジレンマです。新たなプラットフォームで、新たなゲームが生まれて、その体験が広がって……ということを繰り返すうちに、高品質化・高コスト化はどうしても起こる。そして、その環境下で生き抜ける企業は自ずと限られてきます。現在は、海外勢に主導権を奪われ、日本勢はやや劣勢に立たされている印象です。

一方、ユーザーがゲームに求めているのは「非日常的で衝撃的な体験」や「日常の中のちょっとした癒し」で、それはずっと変わらないという事実がある。私自身は、純粋に「やっぱりゲームっていいよね」という気持ちも、決して失っていません。

直井

ユーザーがゲームに求めているのは「非日常的で衝撃的な体験」や「日常の中のちょっとした癒し」で、それはずっと変わらない(直井)

ゲームほど、相手と仲良くなるのに有効な手段はない

―「Buddy」の構想に至った経緯を教えてください。

佐藤 リッチなゲームづくりの戦いが過熱していく中、それと比例するように「本当にそれだけでいいのか?」という疑問が私の中で大きくなっていきました。プロジェクトの規模が大きくなればなるほど、「新しいものをゼロから生み出したい」思いを持つ人にとって、挑戦のハードルはどうしても高くなります。私自身はもちろん、若手のクリエイターには「自分が心から面白いと思うゲーム」をゼロから生み出しやすい場所が必要だ――そう思ったことが、新スタジオ構想の原点です。

そこで改めて考えたのは、ゲームの面白さの本質とは何かということです。私は、Supercell社の「クラッシュ・ロワイヤル」(リアルタイム対戦型のスマホゲーム)が“狂気的”に好きでして……!手持ちのカードを駆使して、自分のタワーを守り、敵のタワーを攻めていくPvPなのですが、仲間と協力し合って戦うこともできて、戦略性が問われます。以前ルームシェアしていた頃、同居する友人と朝までゲームをして、少し寝てから出社する……なんてこともよくありました(笑)。

そこまで私を夢中にさせたのは、「興奮や感動、価値観を誰かと共有する」という「コミュニケーション」の面白さだったと思うんです。人と人とが関係性を深める上で重要なのは、何か共通の目的に向かって進みながら、互いの「価値観」をぶつけ合うこと。現在はSNSをはじめ、交流する手段はたくさんある一方で、自分の価値観を露わにする機会というのは実はあまり多くありません。その点、ゲームほど、相手と仲良くなるのに効果的な方法はないんじゃないかと。

何か共通の目的に向かって進みながら、互いの「価値観」をぶつけ合う。
ゲームほど、相手と仲良くなるのに効果的な方法はない(佐藤)

直井 それは、ゲームが持つ根源的な面白さだよね。そもそもゲームは「競技」であり、それを一人でも楽しめるようにしたのがコンピュータゲーム。「誰かと一緒に遊ぶ楽しさ」は、人間誰しもが根源的に求めているものであり、ゲームがもたらしてくれる本質的な価値と言えると思う。

佐藤 Buddyでは協力会社と毎回タッグを組み、Facebook向けのインスタントゲームを中心に、カジュアルゲームをスピーディにリリースしていきます。1本あたりの制作期間はおよそ1〜3カ月、月に1度のペースで新作をリリースするのが当面の予定。社内メンバーは直井さんと僕を含めて3名と少数体制で、外部とのコラボレーションによって多様なアイデアをハイスピードで形にしていきたいと考えています。

Buddyの第1弾プロダクトが、直井さんが発案し、ディレクターとして開発を進めた「TRiPAL」(トリパル)です。

Buddyの第一弾プロダクト「TRiPAL」(トリパル)

Buddyの第一弾プロダクト「TRiPAL」(トリパル)

―「TRiPAL」について詳しく教えてください。

直井 3枚の数字カードを出し合って、向かい合わせになったカードの数が大きいほうが勝ち、という実にシンプルなゲームです。手札を5枚取って、その中から3枚ずつカードを出していく。毎回変わる点数コインを奪い合い、その総得点数を競います。「今回はコインの点数が低いから、わざと負けて良い手札を残しておこう」「ここで相手のカードをロックしておこう」など、シンプルでありながら戦略性が問われ、相手との駆け引きを楽しむことができます。

実は、構想自体はかなり前から持っていました。トランプを使ってリアルなカードゲームとして試作品をつくったものの、提案するタイミングがなく、ずっと眠らせていたアイデアだったんです。

Tripalは実際にトランプを元にして試作品を作っていた

アカツキはビジョンとして「ハートドリブン」を掲げていますが、私にとっては「自分が考案した、まったく新しいゲームを世に生み出す」ことが、最もワクワクすることです。やはり「TRiPAL」のアイデアを形にしたいと動いていたところ、ちょうどBuddyが立ち上がり、佐藤くんと合流する形でリリースが決まりました。

大きすぎる目標だとはわかっていますが、「TRiPAL」のライバルは、誰もが知る世界的カードゲーム「UNO(ウノ)」だと思っていますUNOはシンプルなルールながら、これだけ長きにわたって愛されている、凄いゲームですよね。色さえわかればプレイできて、老若男女、国境や言語を軽々と超える力を持っています。数字さえわかればプレイできる「TRiPAL」も、いつか、トランプやUNOに並ぶ存在にしたい…!と思っています。

直井

アイデアフルなクリエイターの挑戦の場をつくりたい

―Buddyは今後、ゲーム業界においてどのような存在を目指していきますか。

佐藤 やはり私自身が夢中になったゲームのように、「人を熱狂させる」ゲームをアカツキから生み出したい。そのためには、大きな予算をかけて一発勝負するより、まずはカジュアルな形で世に送り出し、多くのユーザーに触ってもらう中で、ブラッシュアップを重ねながらリッチに仕上げていくというプロセスに可能性を感じています

新たなアイデアを持つ人や、何らかの信念や哲学がある人、0から1を生み出したいと思っている人……さまざまな人と“Buddy”を組んで、面白いゲームをスピーディかつ高頻度に世に送り出していきたい。その結果、世界中のあらゆる場所で人と人を“Buddy”にするゲームを多くリリースする場所になっていけたらと思います。

直井 ほんの小さなアイデア、シンプルなアイデアであっても「こんなふうに形にできるんだ」「人を楽しませる体験にできるんだ」と実感できる場にしたいと思っています。Buddyの取り組みや生み出されるプロダクトを見て、一人でも多くのクリエイターに「自分のアイデアをもっともっと世に出したい」と思ってほしいし、そういう人と一緒に仕事をしたいですね。

佐藤 大きな組織に所属していて、アイデアを次々と形にするのが難しい。リッチなゲームが求められる市場の今、フットワーク軽く挑戦しづらい。そんなジレンマを抱えている人の受け皿、挑戦を支える土壌になりたいですね。実は、私がBuddyの立ち上げを思いついたのは、直井さんから「TRiPAL」の構想を聞いた時なんです。

直井さんの「自分のやりたいことを素直にやる」という姿勢に触れたとき、現在のゲームを取り巻く市場環境、アカツキとしての現状や課題、過去に夢中になったゲームのことなど、私の中に「点」として存在していたものたちがパッとつながった気がした。だから、Buddyは、あれこれと思い悩んでいた時間が1年、構想自体はものの3分でしたね(笑)。

私が直井さんの姿勢に触れて新たな挑戦を決意したように、Buddyの取り組みを見て「自分もワクワクすることを形にしてみよう」と思ってもらえたら嬉しいです。スタジオ立ち上げのプレスリリースを配信したところ、すでに法人/個人と規模を問わず、多くの問い合わせをいただいています。その中には学生の方もいましたが、具現化したいアイデアさえあれば、Buddyは誰でもウェルカムです。