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FEATURE

Akatsuki 人材マネジメント講座―Wizard Course

第3回 評価に納得がいかない? 個人も組織も幸せになる「評価」はあるのか。

2018.07.13

4月から毎月1回、全4回の日程で、アカツキが開催している「人材マネジメント講座―Wizard Course」。広く社外に開放し、人材マネジメントの本質を解き明かすのが狙いですが、「お話拝聴型」の座学ではなく、受講生同士が自社の課題や日々の業務の中で抱いた悩みを共有し、全員でディスカッションする方式をとっています。

ファシリテーターをつとめるのは、アカツキの人事企画室「WIZ」を立ち上げ、室長を務める坪谷邦生。WIZとはWizardの略で、「魔法使い」を意味します。坪谷いわく、ネーミングには人材マネジメントという魔法の力でアカツキを元気にしていこうという狙いが込められています。
魔法の力を社外の人にも伝授しようというこの講座、第3回目は5月31日に行われました。10名が参加した今回のテーマは「評価とは何か」。前回同様、事前に課題図書に目を通したうえで、本講座で話し合いたい「問い」を各自、提出していました。回を追うごとに議論が活性化してきた様子をお届けします。

人材マネジメント講座Wizard Courseの参加者

Aさん
組織コンサルティング会社に勤務。人材派遣・紹介事業のキャリアが長く、人事経験は1年半ほどのため、この機会に体系的に学んで知識を整理し、実務に活かしたい。

Bさん
IPやコンテンツ、ブランドプロデュース事業をしているベンチャー企業の人事総務部長。事業領域を急速に拡大する中、既存の日本特有の理念経営ではない新しいあり方を模索するために勉強会に参加。

Cさん
現在立ち上げフェーズにあるベンチャー企業の社長。時流に則して事業をドライブする後押しとなるような人事評価体制を作るヒントを求めて参加。

Dさん
人材育成のキャリアがあり、転職した現在の会社では、タレントマネジメント全般、パフォーマンスマネジメントなど人材育成に広く関わっていく予定。広い視野で人材マネジメントを理解していきたい。

Eさん
リモートワークでもっと自由に働ける社会を目指し、「対等な取引ができる」副業プラットフォームを運営するベンチャー企業の社長。

Fさん
エンターテインメント系ベンチャー企業の役員。事業拡大にあたり、今後の人材マネジメントについて、新たな考えに出会うことを期待して参加。

Hさん
お買い物アプリを運営するベンチャー企業の社長。時流に則した「事業のドライブを後押しできる人事評価体制」を作ることを目指して参加

Jさん
新卒採用のダイレクトリクルーティングサービスを運営するベンチャー企業の役員。事業と組織の成長に伴い、人事制度の導入や組織開発を進めている

評価の公平感を担保するには

今回もスタートは、坪谷から受講生に向かっての「問い」から。「評価は何のために行うのか」「評価の目的は何か」「評価の対象は何か」(図表1参照)「評価において大切な公平感とは何か」。あてられた受講生は、よどみなく答えていくが、「評価の公平感を担保するのに大切なものは」という問いでしばし沈黙が訪れた。

「手続きの公平感です。具体的には、評価内容と評価プロセスの透明性を高めることです」と、坪谷が答を明かす。この「透明性」という言葉が後の議論でも出てくることになる。

ここまでで約20分が経過し、早速、受講生が提出した最初の問いに関する議論に移った。

図表1.評価の対象・方法・反映先

坪谷邦生『人材マネジメントの壺』148Pより

 

本講座の講師でファシリテーターをつとめる坪谷

問い①:個人も組織も幸せになる目標設定はどうしたら実現できるか

「ラフテル、見えてきたよ!」と言えるか

目標設定とは人事用語で「その期にどんな仕事でどんな成果を上げるのか」という目標を上司と部下が期初に握り合うもの。それに対し、何が達成でき、何ができなかったかを期末に上司が「評価」するのだ。「毎期、必達目標が上から降りてきて、下はそれに唯々諾々と従うだけとなりがちなので、それをどうにか変えたいのです」と、問いを提出したメーカーの人事、Cさんが説明する。

アカツキでは、“ やんちゃな目標 ” という言い方をよくします。達成するのにわくわくするチャレンジングな目標のことです」と坪谷が口火を切る。

「個人的な目標が、組織の目指す目標とうまく紐づいているといいんですよね。それが可能かは上司の力量にかかっています」と、情報系企業の人事、Dさん。

「そもそも社員一人ひとりの幸せについて、会社は把握しているのでしょうか。そこから始めないといけないかもしれない」というベンチャー企業の人事部長、Bさんの発言に一同がうなずいた。

「問題は組織の側で、目標の上にあるべきミッションやビジョンが欠落しているから、個人にとって単なる目標の押し付けに思えてしまうのかもしれない」とCさんがつぶやいた。

それを受け、以前自分で会社を経営していたというベンチャー企業の役員、Fさんが発言する。「当時、社長として意識していたのは、3カ月に一度くらい、自分たちはこうなりたいと夢を語ることでした。それがないと、組織も個人も夢のある目標設定ができませんから」。

「そこは非常に重要ですね」と坪谷が話し始めた。「2016年にアカツキがマザーズに上場した時、社長の塩田が皆の前でこう言ったんです。『ラフテル、見えてきたよ!』と。

塩田は漫画『ONE PIECE』が大好きで、ラフテルは主人公が最終目的地にしている伝説の島です。自分たちは今、仲間と一緒に同じ船に乗り、同じ目的地を目指しているんだ。塩田の無邪気だけど本気の笑顔を見て、私も感動して鳥肌が立ったのを覚えています」

 

社長も社員もみんな一緒になって「アカツキらしさ」や「自分らしさ」を見つめるアカツキの合宿。意識を高める場があるからこそ、現実的な目標のみならず、「やんちゃな目標」も生まれる。 (アカツキ代表取締役CEO 塩田元規)

Will, Can, Must の重なりを大きくせよ

ここでベンチャー企業の社長、Eさんが手を挙げた。「目標とひと言でいっても、事業計画に紐づいた組織としての目標と、職業人としての個の目標とがあるじゃないですか。私は後者について、『あなたはこの仕事を完璧にこなせるようになったら、人事のプロとして独立できるかもしれない。だからやるべきだ』という会話を部下とよく交わすんです。あざといかもしれないですが(笑)」

坪谷が答える。「そのやり方は“あり”だと思いますね。その人がやりたいこと(Will)、やれること(Can)、やらなければならないこと(Must)、この3つが重なる部分を大きくしていくことがキャリア開発の王道といわれます。この考え方は目標設定にも使えます」

「人によっては、やりたいことが分からなかったり、ずっと変わらない人もいるんですよ」と、Fさんが話し始めた。「まだ味わったことがないのに、世の中に数多あるおいしい仕事を“試食”させてあげる。それも上司の役割だと思います」

坪谷がこう引き取った。「その通りですね。例えば若者はマネジメントの何たるかを知りませんから、管理職なんて…となりがちですが、やらせてみれば、奥深さや意義を理解するはずです。目標設定はそうした個人のキャリアデザインとも密接に関係してきます」

坪谷の「ここがツボ!」

目標を考える時に、大切なことが3つあります。

1.目標以前に、企業の目的(ミッション)に賛同していること

2.全員の目標が達成されると組織の目標が自動的に達成されるよう、目標が連鎖していること

3.一人ひとりが「意味がある」「やってみたい」と思える目標であること

そもそも論で言えば、目的レベルで賛同できていない人は、その企業にいてはいけないはずです。しかし、その目的への意欲も時に薄れてしまうことがあります。アカツキの経営者である塩田は、常にメンバーたちに夢を語って聞かせます。メンバーが改めて目的を認識し、意欲的になれるのも、それがあるためです。

そして、目標のレベルでは、個人の「やりたい」だけでも、組織の「やってほしい」だけでもなく、双方の「握手」が必要です。そんな目標をマネージャー(評価者)は、メンバー(被評価者)とともにデザインする必要があります。とても難しいのですが、非常にクリエイティブでやりがいのある仕事ではないでしょうか。

このとき、人事はそこを整合させる役割を担います。ミッションに向けて一貫性があり、マネージャーが使いやすく、メンバーが理解しやすい仕組みを用意する責任を持っています。

問い②:目標設定の見直しは、どのぐらいの頻度で行えばよいか

マネージャーの判断に任せる

「細かい数字を追う仕事をするメンバーがいます。その結果を週次で見ているのですが、数字の変化が激しく、半期ごとの目標設定がずれてしまうことがよくあるんです。その場合、どのくらいの頻度で目標を見直しをしていけばいいのか、よくわからないんです」と、問いを提出したベンチャー企業の役員、J氏が説明する。

「うちは見直しの判断はマネージャーに任せています。その事情をよく理解しているのは現場のマネージャーだからです」と情報系企業の人事、Dさんが言えば、「うちも同じ問題を抱えています」とベンチャー企業の役員、Aさんが発言する。「同じように、半年ごとに目標設定を行っています。毎月見直すのはさすがに手間なので、現状は3カ月に1回見直しています」

日々のコミュニケーションが重要

「評価には企業文化の醸成という意味もありますから、半年に一度くらい、各自と徹底して話をし、『入社した時のように、愛をもって仕事をしてくれているよね』という面談をやっています」というFさんの発言に一同、笑いが漏れた。

「一度設定したわけですから、目標はやはり成し遂げてもらわないと困る。それを原則にしつつ、達成が明らかに無理になったり、条件が変わったりした場合は都度、見直しをするようにしています」とベンチャー企業の人事部長、Bさんが現実的な意見を述べた。

ひとしきり意見が出たところで、坪谷が総括する。「既に目標が変わっていたのに、評価のタイミングで部下がその事実を知るというのが最悪のパターンです。大切なのは、上司と部下が日々、コミュニケーションを欠かさないこと。つまり、当初の目標が非現実的になった時点でもう一度、目標を再設定するべきです。新たな目標を専用のシートに落とさなくても、お互いが目標の変更を理解している状況をつくることが大切です」

坪谷の「ここがツボ!」

仕組みとしてセットすべき「目標の見直し」のタイミングは、事業やサービスの周期によって変わります。

半年ごとが適していることもあれば、4半期の3ヶ月ごとが適していることもあります。多いのは半年ごとに目標をセットし、3ヶ月ごとに見直しの中間面談をセットするケースです。

しかしそれより大切なことは、目標が変わりそうな時点でその都度、マネージャー(評価者)とメンバー(被評価者)の間で話し合いが行われていることです。

日々「見ている」ことが評価の大前提。見ていない人に評価されても、納得感は持てません。目標が変わったことさえ伝わっていない、ということは「見ていない」ことの証拠ではないでしょうか?

問い③:評価の基準が、評価者あるいは部門間で統一されていない。どうしたらいいか?

評価の基準をすり合わせる

この問いは、それぞれベンチャー企業の役員をつとめるJさん、Aさんによるものだ。「しっかりとした人事評価を行うようになって2サイクル目に入ったのですが、1次評価者の間で基準がバラバラなんです」(Jさん)、「異なる部門にいる社員同士が飲みにいくとボーナスの話になり、片方が『納得がいかない』と人事に言ってくる。部門内はともかく、部門間で評価の基準が統一されていないので困っています」(Aさん)と、それぞれ背景を説明する。

「部門内で基準が揃っているだけでもすごい。どうやっているんですか」と、坪谷がAさんに尋ねた。「たとえば、1次評価者が5点満点中で、ある人に2.5、別の人に4をつけた場合、2次評価者である役員が、数字の根拠を聞いていくんです。その結果、


その根拠が言語化され、あるものは修正を経て共有されるので、1次評価者の間で基準が合ってくるわけです」。この答えはそのまま、Jさんの問題への解決策にもなっていた。

評価基準は公開せよ

「社長は営業系の人ですか。それともバックオフィス系ですか」と、ベンチャー企業の社長、Eさんが尋ねる。「営業出身の攻めの人ですね」とAさん。

「なぜ、ずれているとメンバーが感じるのですか」と坪谷が聞くと、Aさんは「正直わからないんです。メンバーに聞いても明確な答えが返ってこないんです」と答えた。

「社長は営業出身ですから、おそらく他部門より評価が優遇されているのだと思います。その事実を社内に公表すべきだと思いますね」と坪谷が言うと、ベンチャー企業の社長、Hさんが反論した。「それはリスクが高いのでは。他の部門のやる気を削いでしまいますよ」と。

「でも、実際に優遇しているわけですから、その事実をきちんと伝えないといけません。バックオフィス系は評価にあまり差がつかないけれど、営業系はハイリスク、ハイリターンで、業績の多寡で評価にきちんとメリハリをつけるのがうちのやり方だと」

ここで、ベンチャー企業の役員、Fさんが声をあげる。「納得がいかなくて当然だと思います。バックオフィスより営業のほうが優遇されることに不満があるなら、営業に移ればいい。自分の住んでいるアパートの上のフロアはうちより広い間取りなのに家賃が同じとはひどい、と大家に言っても仕方ないでしょう。それと同じことのように思えますね」

「だとしても、大家さんにはすべての間取りを説明する義務はあるでしょうね」と、坪谷はあくまで冷静だ。「分配する“お宝”には限界があるなかで、どうしたら公平な評価を行えるか。それには手続きの公正さ、評価基準の透明性を確保することが重要です。Fさんの先ほどの話になぞらえれば、人事がメンバーと、上司が部下と、愛を確かめ合うことが大切なんです」

評価会議を育成会議に

続いて、360度の多面評価のみを行う企業や顧客からの評価を重視する企業の例に議論が及ぶ。「いろいろなやり方はありますが、評価は結局、評価者の主観から逃れられない。大切なのはその主観を磨き続けることです」と坪谷がまとめた。

「たとえば、同じ等級にいる5名をそれぞれの上司が評価し、その評価を持ち寄って見比べてみる。この人はなぜ2なのか。この人が3ならば、こっちの人は4ではないか。こういう会話を通じて、お互いの主観が磨かれ、組織の客観になっていく。さらにいえば、この人を4にするためには、こんな仕事を与えたほうがいいな、という育成会議の場になったら最高です。こうした評価者会議は貴重な場ですから、研修会社に丸投げせずに、ぜひ自社独自のやり方を確立してください」という坪谷の言葉で議論が締めくくられた。

坪谷の「ここがツボ!」

評価とは主観でしかない。

その自覚こそ、マネージャー(評価者)がまず初めに身につけるべきスタンスです。

その主観を磨く方法としては、評価基準をすり合わせる評価者会議を開くことが挙げられます。それが正しく機能すれば、育成会議にまで発展していきます。

事業部、職種、部門間の不統一は、厳密にすり合わせることは不可能です。高業績をあげる新規営業メンバーと、着実に実務をこなす経理事務メンバーの評価を同じ基準で決められるはずがありません。

経営者が企業としての判断基準を決定し、その差の根拠を社員に説明することが重要です。

次回は、お題を一人ひとつにしてください

本講座も3回目となり、さすがに議論も息が合ってきた。提出された問いに対し、最初の突っ込み役となる人、視点を変える発言をする人、巧みな比喩を使い場を盛り上げる人、ぼそっと本質論を述べる人等々、それぞれの役割も固まってきたようだ。

何よりいいのは、問いを提出した人が「自分が抱えている課題が解決した」「クリアになった」と、明るい顔になっていること。

その一方で、ファシリテーターの苦労は増すようで、坪谷がこうお願いしていた。「皆さん、次回は提出するお題を一人ひとつにしてください。お題が多過ぎると対応しきれなくなってしまいますので」。

受講生は人事部所属の専業人事と、役員や経営者という立場で人事を兼任する兼業人事に分かれている。たまたまだが、これが逆によかったかもしれない。

純粋な人事は経営という一段高い視点を学ぶことができるし、兼業の人事は、より現場に添った地べたの視点から人事を学ぶことができる。しかも企業が大きくなれば、専業人事が必須になってくるだろう。

こうした切磋琢磨も、いよいよ次回が最終回だ。

Akatsuki 人材マネジメント講座 第3回資料

「評価の不満の原因は、仕組みではなく信頼関係にある」

アカツキ 人事企画室WIZ 室長 坪谷邦生

評価に不満はつきものです。
毎年、数多くの評価面談に同席しますが、涙を見なかった年はありません。感動や喜びの涙もありますが、悔しさや悲しみの涙もあります。

先日も、ある優秀な若手社員が「僕は、評価されるために仕事をしているわけではありません!」と強い口調で言い切るシーンに立ち会いました。さあ困ったな、と思いながらも彼の気持ちもわかる気がしました。
私自身も、他者から評価されることに葛藤してきたからです。

では、なぜそんな不満を与えながらも企業は評価を行うのでしょうか?
答えは、「格差」をつけるためです。

評価とは「やってもやらなくても同じ」といった悪平等をなくすためのものです。

「評価が嫌だ」。
その気持ちはわかります。

では、どうなればうれしいのでしょう?

表立った評価を行なわずに、人事や経営層が直観で給与や処遇を決めてくれた方がいいでしょうか?(その直観も、厳密にいえば「評価」ですね)。

それとも全社員が同じ給与であれば良いのでしょうか?
仮にそうしたとしても、給与以外の処遇において必ずどこかで差がつきます。

例えば仕事のアサインや勤務地など完全に同じ処遇にすることは不可能です。それを評価という判断基準なしに、何の根拠をもって行えば良いのでしょうか?

処遇には必ず格差が生まれます。その基準となるのが前回議論した等級で、それを決める根拠こそが評価です。
ごまかさず、何によって差をつけるかを明確にして、正しく評価する企業こそ誠実だと私は考えます。

人材マネジメントを実践されている皆さんに、ぜひお伝えしたいことがあります。
コンピテンシー、ノーレイティング、OKR…さまざまな手法が流行しますが、原則さえ外さなければ、振り回される必要はありません。

その原則とは「評価の不満としてあがる声は、実は評価制度への不満ではない」こと、そして「評価とは主観であり、完璧はありえない。その前提で磨くもの」ということです。評価で最も重要なのは、精緻な仕組みや流行の手法を取り入れることではなく、個と組織の間に「信頼を積み上げる」ことなのです。

PROFILE

講師:坪谷 邦生

リクルートマネジメントソリューションズ社にて人事コンサルタントとして50社以上の人事制度構築・組織開発支援に携わる。アカツキに入社後、人事企画室WIZを立ち上げる。中小企業診断士。Certified ScrumMaster。

文:荻野 進介 イラスト:荒井 理江