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「UNI’S ON AIR」ゲームデザインで表現する櫻坂46・日向坂46の世界観

2021.05.10

櫻坂46・日向坂46の公式音楽アプリ「UNI’S ON AIR(ユニゾンエアー)」。2019年9月のリリース以来、グループの人気拡大とともにユーザーが急増。2021年3月には、累計500万ダウンロードを達成しました。

アカツキにとっては初めてとなる、実在アーティストのゲーム化。しかも、既存のファンを多く抱える人気グループであるうえに、開発途中にグループが改名するという予測不可能な事態が起こるなど、苦心した点も少なくありませんでした。

そんななか、両グループの世界観をいかにゲームへ落とし込み、多くのファンに受け入れられるに至ったのでしょうか? 今回はプロジェクトリーダーの人見、デザイナーの吉田を迎え、「UNI’S ON AIR(ユニゾンエアー)」開発の裏側、そこに込めた思いやこだわり、今後の展望までたっぷりとうかがいます。

人見遼太郎 Hitomi Ryotaro株式会社アカツキ UNI’S ON AIR(ユニゾンエアー)プロジェクトリーダー / プロデューサー

2018年にアカツキへ新卒入社。運用ゲームタイトルのディレクターを務めたのち、 ユニゾンエアーの開発チームに参画し運用の立ち上げを行う。趣味は物件探し。

吉田大祐 Yoshida Daisuke株式会社アカツキ UNI’S ON AIR(ユニゾンエアー)デザインリーダー

2016年にアカツキへwebデザイナーとして入社。北海道・札幌の美大を卒業後、広告制作会社、ウェブ制作会社などを経る。アカツキ入社後は新規事業のウェブサービスを2つ担当しユニゾンエアーに参画。趣味はデザイン、アート、音楽、ファッション、映画、漫画、アニメ、ゲームなどサブカル全般。海外旅行も好き。

櫻坂46・日向坂46のライブが体感できる新感覚リズムゲーム

はじめに「UNI’S ON AIR(ユニゾンエアー)」とは、どんなゲームなんでしょうか?

人見 「UNI’S ON AIR(ユニゾンエアー、以下、ユニエア)」は櫻坂46(以下、櫻坂)・日向坂46(以下、日向坂)を応援する、スマートフォン向け音楽ゲームアプリです。メインのコンテンツは、各グループの人気楽曲をライブ映像とともに楽しめるリズムゲーム。まだ映像作品化されていない楽曲も含め、貴重なライブ映像を見ながら遊べるところに価値を感じてくださっているファンの方が多いようです。特に、ここ1年はコロナ禍でライブ会場へ直接足を運ぶことが難しい状況が続いているため、ユニエアをライブ感覚で楽しんでいただいています。

「UNI’S ON AIR」画面

貴重なライブ映像が楽しめる「UNI’S ON AIR(ユニゾンエアー)」

―2021年3月には500万ダウンロードを突破しました。ユーザーが増えたことによる変化はありますか?

人見 もともと櫻坂を推していた人が、プレイするうちに日向坂のことも好きになるなど、「ユニエアを通じて両方のファンになった」という声は多くいただくようになりましたね。

あとは、SNSの反応を見ると、ゲームから入ってグループやメンバーのファンになる人も増えてきた印象です。「最初は音ゲーとしてプレイしていくうちに、いつの間にかハマってしまった」、そんな投稿も目にするようになりました。ゲームを通じて櫻坂、日向坂の魅力を伝えたいと考えているわれわれとしては、とても嬉しい流れです。

ファンの拡大にもつながっていると。ちなみに、音ゲーから入ったユーザーに、グループ自体を好きになってもらうために、どんな工夫をしましたか?

人見 たとえば、リズムゲームでは、ただ音に合わせて譜面を流すのではなく、メンバーの振りつけや観客のコールとリンクさせるなど、ライブ映像に意識を向けてもらえるような工夫は盛り込んでいますね。そうやってさまざまな楽曲の映像を楽しみながらプレイしていくうちに、自分の「推し」を見つけていただきたいと思っています。

ユニゾンエアーのゲーム画面

「UNI’S ON AIR(ユニゾンエアー)」のゲーム画面。音楽に合わせて流れてくるターゲットを、タイミングよくタップする

グループの改名やメンバー卒業。過去の歩みを「痕跡」として残す

アカツキではこれまで既存の人気IPを使ったモバイルゲームを数多く手掛けてきましたが、実在のアーティストをゲーム化するのは今回が初めてでした。手探りの部分も多かったと思いますが、特に難しかった点を教えていただけますか?

人見 実在アーティストならではの難しさは、「先が予測しづらい」ことだと思います。ユニエアでいえば、開発がスタートした時点で櫻坂46は「欅坂46」でしたし、日向坂46はその当時「けやき坂46」として活動していました。それが開発の途中で、けやき坂が「日向坂」という新グループに生まれ変わり、アプリリリース後も欅坂が「櫻坂」に改名されています。ほかにも、メンバーが卒業したり、逆に新しく加入したりと、さまざまな変化がありました。

ただ、そうした変化がゲームに反映されていないとファンはガッカリしますよね。

人見 そうなんです。ですから、一つひとつの変化をリアルタイムでゲームに反映させていく意識は、つねに持っておく必要があります。一方で、過去の出来事もそれはそれでまったくなかったことにするのではなく、これまでの歴史をたどれる「痕跡」も大事にしたいと思っています。

たとえば、改名前に行われたライブの映像や、当時のイメージに沿ってデザインしたものはそのまま残しているので、新規のファンにもこれまでの歩みや文脈を感じていただけるのではないでしょうか。櫻坂での再出発に向けてロゴやデザインをリブランディングする際にも、過去と現在の動線にはこだわりましたね。

ロゴの変化

新ロゴでは「櫻坂(白とピンク)←欅坂(緑)←坂道(紫)→けやき坂(緑)→日向坂(水色)」という色の変化でグループの歩みを表現している

ライブや握手会にも参加。いちファンとしても、仕事に向き合う

変化という点でいえば、個々のメンバーもどんどん成長していきます。あるいは、さまざまな経験を積むなかで、新しいキャラクターや個性を発揮していくメンバーもいると思います。そうした一人ひとりの変化に対応することも重要ですよね。

人見 おっしゃるとおりです。メンバーの写真を使ったビジュアルはそのときどきのイメージをふまえてデザインしていますが、半年も経つと本人のキャラクターが大きく変わっていることもあります。ぐっと大人っぽくなることもあれば、テレビ番組などを通じて新たな一面がクローズアップされることもあるでしょう。そうした変化を見逃さず、デザインに反映させていくことも重要なポイントですね。

現メンバーだけでも合計で約50人いますが、全員の動向を追っているのですか?

人見 可能な限り(笑)。日頃からメンバーが出演する番組や雑誌、インタビュー記事などはすべてチェックしています。プライベートとの境目なくこのプロジェクトに向き合っていくうちに、いちファンにもなっていって。個人的にライブや握手会にも足を運びますし、コロナ禍のいまは、オンラインでミート&グリートに参加しています。櫻坂や日向坂が本当に好きだからこそ、ここまで追いかけられているのだと思います。

吉田 そういったファンとしての目線は、デザインにおいても重要だと考えています。ファンがどのような感情でグループと向き合い、ライブ中どんな瞬間に感情が高まるのか、どういう演出に喜ぶのか。ライブを見たときの感情や、楽曲の思い出が蘇るようなデザインをいちファンとして考えて、デザインに落としこんでいます。

まずは自身がファンになるというのは、ユニエアのチームに限らずアカツキ全体の文化なのでしょうか?

人見 それはあると思います。仕事だから仕方なく、ではなく、まずは自分からその世界を積極的に体験して好きになる。自分自身がファンになってこそIPの魅力を最大限に引き立てられるというスタンスは、社内全体に浸透しているように感じます。

それに、自分のお金でライブに行き、グッズを買わないとファンの心理はわからないところもあると思うんです。自分自身がそのIPを好きになるだけでなく、ファンの方たちの思いに共感できることが大切なので、仕事の枠を超えて対象と向き合う気持ちは共通していると思います。

既存のアイドル像に縛られず、メンバーの思いを大事にする

実在のアーティストのゲームを開発するために、さまざまな工夫や仕掛けをしたそうですね。具体的に教えてください。

吉田 大きくは3つあります。まず、実在のアーティストが持つ世界観やイメージを、いかに違和感なくゲームの世界に馴染ませるかは重視しました。開発がスタートした「欅坂」の時点の話でいうと、既存のアイドルのイメージに縛られず、メンバーの等身大の思いや価値観、自分らしさを大切にしているグループなので、彼女たちのもつイメージが強く反映されたものになっています。結果、それまでのアイドルを起用したアプリとは大きく異なり、スタイリッシュなデザインになりました。

たしかに、欅坂の楽曲やミュージックビデオは、いかにもアイドル然とした「可愛いもの」ではなく、クールでスタイリッシュなイメージでつくり込まれていましたね。

人見 はい。彼女たちは、ある意味媚びないというか、アイドルの予定調和を打ち壊すようなグループ。それであれば、ユニエアでも、彼女たちが持つアーティストとしての「かっこよさ」や「スタイリッシュさ」にフォーカスするべきだと考えたんです。それは、ユニエアというゲーム自体のアイデンティティーにもなるはず、とも。

その思想はゲーム全体のデザインにだけでなく、メンバーの写真にも反映されています。使用している写真はすべてゲーム用に撮り下ろしているのですが、こちらもグループのカラーや、楽曲の世界観を尊重した表現を心がけています。

それぞれのメンバーらしさを大切にしているゲーム内のカード画像

メンバーらしさ、グループらしさを大切にしているゲーム内のカード画像

ゲームの細部でグループごとのカラーを出し、イメージを守る

なるほど。たしかに櫻坂はクールな印象ですが、日向坂にはキュートなイメージもあります。それぞれのカラーはどのようにして守っているのでしょうか?

吉田 工夫したことの二つ目として、ゲーム全体のトーンはクールでスタイリッシュに仕上げていますが、ガチャのバナーやメンバーの写真などには、各グループのイメージに合うデザインを心がけています。メンバーの育成や編成を行う画面は、ステージから降りたバックステージや普段のアイドル活動をイメージし、静的なイメージの白い色調や大人しめの演出を心がけてます。ライブ映像を使ったリズムゲームの画面は、ステージ上をイメージして、黒い色調や印象強い演出、動的な感じにしています。

ーちなみに、ユニエアにはユーザーのアテンド役としてコアラが登場します。彼らは一体……?

人見 ゲームのシステムやイベントの解説をする「さらり」と「ひらり」ですね。これは公式とはまったく関係のない、ユニエアのオリジナルキャラクターです。彼らは普段、ゆるっとした会話をしていますが、時折グループの活動で実際に起きた出来事なども話します。現実に即した内容にすることで、リアルさを表現しているんです。

あくまで実在のアーティストを優先させているということですね。ちなみに、なぜコアラなのですか?

人見 コアラの餌であるユーカリの葉には、毒性があるんですよ。つまり、ある意味、毒を食べているんですよね。それって、欅坂が発足した当初の世界観と通じる部分があると考えたんです。それから、コアラはかわいい見た目ですが、意外にも大きな声を出して戦うこともあるようです。世の中の不条理を曲に乗せて訴えるアプローチが、コアラの性質に似ていると思いまして。

オリジナルキャラクターさらりとひらり

さらりとひらり

セオリーからの脱却。デザインでアーティストを引き立てる

―3つ目の仕掛けは、いかがでしょうか。

吉田 今回は、モバイルゲームのセオリーをあまり意識しすぎないようにしました。モバイルゲームでは、盛り上げる演出として金色や虹色などを使うことが多いです。でも、ユニエアのデザインはあくまでアーティストを引き立たせるためのものとして考え、過度に盛るようなことはしていません。あくまでも、従来のファンが好きな世界観を壊さずにゲームを楽しんでもらいたかったんです。

そのような発想ができる理由のひとつに、吉田さんのご経歴にも関係が?

吉田 それもあるかもしれません。ぼくは、アカツキにくる前はグラフィックとウェブがメインで、アーティストのCDジャケットをデザインするプロダクションにいました。デザインだけでなくウェブサービスの開発全般にも携わっていて、ユニエアに携わるようになるまで、ゲームは未知の領域だったんです。

ただ、子どもの頃から現在までずっとゲームは好きですし、サービス開発の経験もあったため、さほど苦労はしていません。それまでのキャリアで培った技術や知識はゲームにも横展開できましたし、ゲーム畑の人間じゃないからこそ表現できた部分もあると思います。

具体的に、これまでのどんなスキルが役立ちましたか?

吉田 グループの世界観をデザインに落とし込む際には、写真の扱いや文字の組み方も含めた表現の引き出しが役立ちました。そこは、雑誌やCDジャケットなど、アーティストの写真を使ったデザインの経験が生きたと思います。

ちなみに、ユニエアのデザインを手がけてみて、どんなところに面白みを感じましたか?

吉田 ユーザーさんの声をSNSですぐにキャッチできるのは嬉しいですね。特に、自分がこだわった部分について言及してもらえたときは、デザインが価値になっていることを実感できます。印象的なエピソードでいうと、ユニエアのロゴに込めた細かい意図まで考察してくれたユーザーさんがいたんです。たとえば、ロゴマークのすべての角度を46度にしたところなんかも、しっかり測って検証してくれて。こちらからは特に説明していない細かい部分まで気づいてもらえると、つくってよかったなと思いますね。

「UNI’S ON AIR(ユニゾンエアー)」のガチャの演出

アーティストの世界観を大切にした、「UNI’S ON AIR(ユニゾンエアー)」のガチャの演出

すべてのファンが同じ熱量で楽しめる場所でありたい

ユニエアは2021年3月24日で1.5周年を迎えました。最後に、これからの展望を教えてください。

吉田 まずはこれまで同様、ファンの皆さんに喜んでいただけるものをつくっていきたいです。一方で、これまでのモバイルゲームにはない表現方法やデザインを追求していきたいという思いもありますね。

とはいえ、いちデザイナーのスキルに依存しすぎるのもよくないと考えています。特に、ユニエアのようにデザインの工夫が随所にされているゲームは、どうしても属人性が高くなってしまいますので、チームのメンバーにも手法や目指すべきイメージを浸透させ、ユニエアの発展を目指したいですね。ちなみに、いまは非ゲーム領域のデザイナーを含め経験問わず、UIデザイナー・アニメーションデザイナーを積極的に採用募集しているので、興味がある方はぜひ連絡いただけると嬉しいですね。

人見さんは、ユニエアをどんなゲームにしていきたいですか?

人見 未だコロナは収束せず、櫻坂、日向坂ともに大々的にライブができる状況ではありません。しかし、こんなときだからこそぼくらがユニエアをとおして、ファンの皆さんと一緒にグループを盛り上げ、その魅力を広く伝播させていきたいです。

また、今後はユニエアを「ファン同士をつなぐハブ」のようなサービスにしていけたらいいですね。アイドルに限らず、自分が好きなものを同じ熱量で語り合える人がいるのって、やっぱり嬉しいじゃないですか。でも、既存のファンのコミュニティーに新参者のファンが入っていくのは、なかなか難しいですよね。

それに、地域によって情報や接触頻度の格差もある。ライブや握手会はどうしても主要都市に偏ってしまいますし、グループの冠番組が放送されていない地域もある。すべてのファンが同じ熱量で楽しめる場所って、じつはあまりないんじゃないかと思います。

ユニエアは、場所やファン歴に関係なく楽しめると。

人見 そう思います。ユニエアのユーザーであることが一つの名刺となって、ファン同士がつながっていける。地方も都心部も関係なく、同じ熱量で盛り上がれる。そんな場所になれるよう、デザインもコンテンツもさらに磨き込んでいきたいですね。

参考情報

「UNI’S ON AIR(ユニゾンエアー)」公式サイト
https://keyahina-unisonair.com/

公式Twitterアカウント(@kh_unisonair

公式LINEアカウント(@unisonair

公式Instagramアカウント(@unisonair_official

アカツキのデザインチームでは仲間を募集しています
https://hrmos.co/pages/aktsk/jobs?category=1220948668153475072

 

文:榎並紀行(やじろべえ) 編集:服部桃子(CINRA)