ゲームシナリオの作り方「ライターズルーム」とは【CEDEC2021レポート】
2021.09.22
2021年8月24日から開催の日本最大のゲーム開発者向けカンファレンスCEDEC2021にアカツキのシナリオ横串チームROOTSのプロジェクトリーダー水野 崇志が登壇しました。
ゲーム開発にまつわる題材を幅広く扱うCEDECで水野が発表したセッションテーマは「至高のシナリオチームの作り方 〜リモートワークでも導入できる『ライターズルーム』とシナリオ横串チームによるマネージメント〜」。
ゲームの世界観を形作り、プレイヤーを引き込むゲームシナリオはどのように作られているのでしょうか? アカツキのゲームシナリオライターたちはチームでシナリオを作ることに力を入れています。また、さらなるクオリティアップのため「ライターズルーム」という手法にも挑戦しています。今回はゲームシナリオに興味がある方に向けて、登壇内容の一部をVOICE用に編集してレポートしていきます。
【目次】
- ゲームシナリオ制作の現状と課題
・ソーシャルゲームの増加によるゲームシナリオライターの作業量の変化
・ゲームシナリオライターの多様化に伴う課題
・シナリオディレクターの役割 - アカツキのシナリオ横串チームROOTSが行うマネジメント
・グローバルに戦える世界観やシナリオをめざす
・ROOTSのシナリオ研修
・希望退職者0。取り組みの結果生まれた前向きな変化 - 「ショーランナー」と「ライターズルーム」
・海外ドラマの現場で生まれた役割と仕組み
・一般的なライターズルームのやり方
・ライターズルームをつかった2つの制作フロー
・ゲームシナリオ制作でライターズルームを実施するための課題 - リモートでの「ライターズルーム」への挑戦
・リモートライターズルームのルール
・リモートライターズルームのツール - 至高のシナリオチームをつくる
水野 崇志 Mizuno Takashi株式会社アカツキ ゲーム職能本部 シナリオマネージャー
フリーランスのシナリオライターとして約10年間の活動を経て2017年、シナリオディレクターとしてアカツキへ入社。同年、プロジェクトを横断したシナリオ横串チーム「ROOTS」を発足しリーダーを務める。ゲーム事業と並行し、キッズ向けYouTube『クマーバチャンネル』も担当中。
1.ゲームシナリオ制作の現状と課題
ゲームが好きな方なら、シナリオに心動かされたゲームタイトルが1本や2本、すぐにあげられるでしょう。そんなふうに私たちを釘付けにするゲームシナリオとはどのように作られているのでしょうか? 制作体制や一般的なゲームシナリオライターが担当する作業、そして抱える課題について、水野が解説します。
ソーシャルゲームの増加によるゲームシナリオライターの作業量の変化
水野 ゲームシナリオの制作体制には、大きく分けてゲーム開発会社内での内製と、ゲーム開発会社がシナリオ制作会社に委託する外部委託があります。アカツキでは主に内製の形をとっており、社内のシナリオチームでシナリオ制作をしています。
なぜ、チームで制作をする必要があるのかというと、これにはゲームを取り巻く環境の変化が大きく影響しています。コンシューマーゲームだけではなくソーシャルゲームが多く開発されるようになったことにより、ゲームシナリオライターの作業内容には大きな変化がありました。
ソーシャルゲームが主流になったことにより、ゲームによっては100人以上ものキャラクターが登場し、その設定の継続的な管理・更新が必要になりました。さらに、ボリュームのあるメインシナリオ、毎月追加されるイベントや季節のシナリオなど、個人ではとても対応できない作業量になったことから、この数年でゲームシナリオライターやゲームシナリオ会社が急増しました。
ゲームシナリオライターの多様化に伴う課題
水野 同業者の人口が増え業界が盛り上がるのはすごく良いことなのですが、一方でゲームシナリオライターが多様化したことで課題も生まれました。ルーキーとベテラン、コンシューマーゲームの経験者・未経験者、他のメディアを経験されてきた方も多く、小説や舞台脚本を執筆されていた方がゲームシナリオを書かれていることもあります。このように背景が異なるゲームシナリオライターがひとつのシナリオチームに入ることで、コンフリクト(対立)が起きる事例が各所で多発しています。
水野 こういったコンフリクトを放置してしまうと「もうこのメンバーでは仕事ができない」と退職につながってしまうケースがあります。もし複数のメンバーが同時に離脱してしまうと、最悪の場合スケジュールが破綻してゲームのリリースが遅延してしまったり、ノウハウが消失したりと致命的な影響があります。そのため、こういった問題が起きた場合には、放置するのではなくしっかりと解決することがマネジメントにおいて重要となります。
水野 実際にどのようなコンフリクトが起きるかという事例をひとつ紹介します。
水野 AさんとBさんは両者がおなじ「クオリティ」という単語をつかって議論をしています。しかし、話の内容がまったく噛み合わず、互いに理解することができません。というのも、両者は同じ単語をつかいながらも、Aさんは「タップ数の使い方や素材の使い方」について話し、Bさんは「キャラクターの描き方やシナリオのテーマ」について話していたのです。つまり、両者の「クオリティ」への認識がずれているためこのコンフリクトは発生してしまったのです。
このコンフリクトを解決するためには、自分たちがめざす「クオリティ」とはなにか? をすり合わせる必要があります。そこで、シナリオディレクターという存在が必要になるのです。
シナリオディレクターの役割
水野 シナリオディレクターの役割は、明確な基準をもってシナリオチームをまとめ、方針を示すことだと考えています。
ただの感想でしかない「おもしろい・おもしろくない」だけではなく、適切に言語化し明確な判断基準をもってディレクションをしたり、ライターの特性を理解して得意分野を活かしたり、ゲームプロデューサー・ディレクターの考えを理解してその架け橋になるなど、とても重要な役割です。
水野 ROOTSではシナリオチームを運用していくうえで、ここまで紹介した「多様化するゲームシナリオライターへの対応」「シナリオディレクターの必要性・育成」の2つが重要と考え、マネジメントに取り組んでいます。
2.アカツキのシナリオ横串チームROOTSが行うマネジメント
チームでのシナリオ制作をマネジメントする、アカツキのシナリオ横串チームROOTS。ここからは実際にROOTSがどのようにチームのマネジメントを行っているかをROOTSの立ち上げから解説します。
グローバルに戦える世界観やシナリオをめざす
水野 まずは立ち上げ当時の資料から。ROOTSというのは、世界で戦える世界観やシナリオ作りを会社全体でめざしていくため、各ゲームタイトルをまたいで横串で各シナリオチームのリーダーを集めて立ち上げたチームです。立ち上げ当初はかなりクリエイティブ特化な考え方をしていたのですが、シナリオやチームを強くしていくうえではやはりマネジメントが重要だと考え、まずはマネジメントに重きをおいて活動を開始しました。
水野 最初にどんなことをしたかというと、シナリオ担当者全員にアンケートと1on1の面談を実施しました。その結果を踏まえ、解決をめざした課題と取り組みがこちらです。
水野 まず、2017年度までは社内で役割の認識が曖昧な状況でした。そのため、シナリオディレクターや進行管理などの認識を社内で統一しました。
また、新しく採用されるメンバーの面接には必ずROOTSのメンバーが同席し、お互いが考えているスタンスやスキルをすり合わせられるようにしたり、入社後も定期的な1on1を実施したり、プロジェクト外のメンバーと交流できる懇親会を開催したりと、働きやすい環境の構築をめざしました。
なかには数年ご活躍してくださったプロジェクトから異動を希望されるライターの方もいらっしゃるのですが、その際もROOTSでしっかりと異動をサポートすることで、長くお付き合いできるライターさんが増えました。
「シナリオ職能での共通言語の獲得」というのは、シナリオ教本※1の配布とシナリオ研修を行っています。というのも、これまで我流でやってきてシナリオの勉強をされたことがないライターの方も多いためです。そういったライターの方たちも、改めてシナリオを勉強する機会を経たことで、「いままでのやり方ではできなかったことに挑戦できたよ」「悩む時間が減ったよ」といった声を多くいただいています。
また、特に研修では全メンバー共通認識となる言語や制作方法の獲得をめざしました。
※1 『SAVE THE CATの法則で売れる小説を書く』(
)を使用ROOTSのシナリオ研修
水野 シナリオ研修は、いきなり全員に受けていただいたわけではありません。まずは、シナリオディレクターのみ何日かに分けて合計15時間ほどの研修を実施しました。研修を受けたあとに一定の効果測定期間をおいた結果、シナリオディレクター・ライター双方にとって仕事がしやすくなったとの結果だったので、ステップを段階的に進めて最終的にはシナリオ担当者全員に受けていただきました。
この研修は非常に効果があって、共通言語を得たことでシナリオに関する会話がスムーズになり、これまで認識の相違から発生していたコンフリクトがゼロにまでなりました。
研修で気をつけていたのは、いままでのノウハウを否定するようなことは一切せず、「独自のノウハウはひとつの貴重なスキルですので、それらは引き続き大切にしていただきたい」と伝えていました。また「研修内容も絶対厳守ではなく、むしろ縛られないでほしい」ということも伝えています。
シナリオのスキルやフレームワークは多種多様ですので、個人で作業する際には、このやり方でうまくいかなかったら、別のやり方を試してみよう、と選択の幅を広げることに繋がればと考えています。
水野 研修だけでなく、シナリオチームのノウハウをためたワークスペースもつくり、それを見ればどのような知見があったのかが分かるようになっています。
希望退職者0。取り組みの結果生まれた前向きな変化
水野 こういった形で、課題としてあげていた「多様化するゲームシナリオライターへの対応」「シナリオディレクターの必要性・育成」に関しては、さまざまな結節点と共通言語の獲得で解決に至ったと考えています。その効果として、継続して実施しているアンケート結果にもこのような結果が出ました。
水野 2019年から2020年、プロジェクトの数値は落ちているのですが、その理由を聞いてみると「シナリオチームとしてすごく成長できた。成長したからこそ、もっとプロジェクトで大きなことをやりたい」と話してくださって、成長したからこその不満が生まれて数値が下がったということでした。そのため、この数値の低下も前向きな変化と受け取っています。
また、2020年度は希望退職者が0人という結果も出ました。これはもちろん「辞めないでほしい」と懇願したなどではなく、シナリオを担当される皆さんが「続けたい」と考えてくださった結果です。3年間のマネジメントの成果として、とても嬉しく思っています。
3.「ショーランナー」と「ライターズルーム」
海外ドラマの現場で生まれた役割と仕組み
水野 マネジメントで一定の成果を出せたことで、クリエイティブでの挑戦を始めました。ここからはROOTSでも挑戦している「ショーランナー」と「ライターズルーム」の仕組みについてお話させていただきます。これらは海外ドラマの制作現場で使われている役割・仕組みで、今では映画や大手動画配信サイトでも使用されています。
この仕組みがソーシャルゲームととても親和性が高いと感じたので、2018年から調査と導入のための準備を行ってきました。現場によって役割・仕組みに差異があるため今回紹介するのはあくまでも一例と考えていただければと思います。
水野 「ショーランナー」と「ライターズルーム」とは、脚本家が主体となって行う番組制作の仕組みです。
ショーランナーというのは脚本の製作総指揮のひとりを指す業界用語とされています。プロデューサーのような仕事もしていて、ひとつの番組をつくるうえでトップに近いことをほぼひとりでやり、元脚本家が多いというのが特徴です。もともと脚本家だからこそ、ドラマのパイロット版の脚本を執筆したり、最終的な脚本も自分で執筆されたりする方もいらっしゃいます。このあと紹介するライターズルームにおいて、アイデアの取捨選択や、脚本家へ指示を出す役割など、シナリオディレクターにかなり近い存在だと考えています。
続いて、ライターズルームは長編海外ドラマの脚本を複数人でつくるなかで生まれた仕組みです。これはソーシャルゲームのシナリオチームが生まれた経緯とかなり近いのですが、複数人で脚本をつくることで発生しがちな設定の齟齬や、各話の連結がうまくいかないなどを防ぐのを目的としています。
一般的なライターズルームのやり方
水野 ライターズルームを実践するにはいくつかルールを決める必要があります。ショーランナーの判断基準もそのひとつで、事前に参加者へ伝えることが重要です。ほかに必要なものは、会議室、ホワイトボード、付箋の3つです。
まず、会議室には作品や議題に関するあらゆる資料を用意し、参加者でアイデアを出しながら議論をしていきます。アイデアは付箋に書いてホワイトボードに貼り出し、決定事項や決定プロセスを書き込むことで、常に参加者に明示します。
ライターズルームをつかった2つの制作フロー
水野 これがライターズルームの基本的な進め方です。さらに、ライターズルームをつかった一般的な制作フローには大きく分けて2種類の形式があります。
【コンペティション形式】
水野 まずは「コンペティション形式」をご紹介します。これは主にハリウッド映画で使用される制作フローです。まず、複数の脚本家がそれぞれのアイデアを脚本にして提出し、その中からショーランナーが独断でアイデアをピックアップして新たな脚本をつくる仕組みです。ショーランナーの判断に任せることになるため、ショーランナーの色がかなり出た脚本になるとされています。
水野 このフローのメリットは、脚本家は個人で脚本を書くため、ベテランのなかでも新人が活躍できるチャンスが生まれることです。新人が自由に書いた脚本がショーランナーの目にとまれば、新人のアイデアが採用された脚本になります。また、脚本家同士が相談をしないため、作品の魅力をまったく別の視点から描いた作品が生まれる良さもあります。
しかし、各脚本の良いとこ取りができればベストですが、まったく違う脚本の設定や物語を組み合わせて再構成する難しさもあります。その結果、それぞれの脚本の良さが失われてしまうリスクとも向き合う必要があります。
【ブレーンストーミング形式】
水野 続いて「ブレーンストーミング形式」です。こちらは主に海外ドラマで使用される制作フローです。まず、ショーランナーがパイロット版の脚本を作成して、それをもとにライターズルームで発展させるという流れになっています。
そのなかで、ショーランナーは自分の意見を言わずに、各脚本家の提案を引き出し、その提案のなかから最善のアイデアを選択していきます。一つ大きな特徴して、まずは全員で全体構成をつくり、そのあとにどの脚本家が何話を担当するかを決めます。これには理由があり、先に担当話数を決めてしまうと、脚本家が自分の担当部分だけに全力を注いだり、アイデアを出し惜しみをしてしまうからです。そのため、「まずは全員が作品のために全力でアイデアを出す」というスタンスが徹底されています。
水野 「ブレーンストーミング形式」のメリットは、脚本家全員が同じ方針をもつことができるので、なにかあったときに脚本家同士フォローしあえることです。さらに、脚本家全員で全体構成をつくることで、多様なアイデアが含まれた作品が生まれます。
一方で、各脚本家のアイデアをどう選ぶかは、ショーランナーのスキルが問われることになります。「なぜこのアイデアを選択したか」を皆が納得できる形で説明できるかどうかが、ショーランナーの腕の見せどころです。また、「発言力のある脚本家ばかりが発言してしまう」という課題もよくあるそうです。これは日本のさまざまな現場である課題だと思います。そのような場合には、ショーランナーが各脚本家の得意分野をふまえた提案をうながし、全員が平等に提案できる機会を用意する必要があります。
以上が「ブレーンストーミング形式」の特徴ですが、僕は「全員が同じ方針をもって制作を進める」「全員が自分のためではなく、作品のためにアイデアを出す」というスタンスも含めて、ゲームシナリオ制作で活用できるのではないか、と考えました。
ゲームシナリオ制作でライターズルームを実施するための課題
水野 ゲームシナリオ制作で「ライターズルーム」を実施するにあたって、大きく2つの課題がありました。まずは、共通認識となるノウハウの不足です。例えば、ハリウッド映画では上映何分でどんなことが起きるかまでノウハウ化されています。それを共通認識としているためスムーズに話し合えるのですが、日本ではまだ共通認識やベンチマークとなる手法が浸透していないため、スムーズに話し合うにはまず前提を揃える必要があります。
また、先ほどブレーンストーミング形式の紹介で話したとおり、ショーランナーのスキルが非常に重要になるので、個人作業が主体だったシナリオ担当者から集団をまとめるスキルをもったショーランナーを選び出すのは非常に難しいです。
しかし、この2つの課題は先ほどお話したマネジメントで解決しようとした課題とかなり似ています。「ゲームシナリオライターの多様化への対応」のために行った「共通言語の獲得」は「ハリウッド映画のような共通認識となるノウハウ」を補うことにつながり、シナリオディレクターの育成は、ショーランナーとしての役割を担う人材の育成につながっていました。
これまでマネジメントで改善をめざしてきたことが、クリエイティブにも効果を発揮したのが、このタイミングでした。
4.リモートでの「ライターズルーム」への挑戦
水野 調査と導入のための準備を終え、「ここから本格的にライターズルームに挑戦していくぞ」というタイミングで新型コロナウイルスによるリモート期間に突入しました。そのため、会議室に集まって話をすることができなくなってしまいました。この状況をふまえて「リモート環境でライターズルームを実施するにはどうすればいいか?」を検証したのが、最後にお話しする内容となります。
水野 ライターズルームをリモートに移行するためには、会議室、ホワイトボード、ふせんをオンラインに移行する必要があります。 ルールだけは大きな変更はなく、アカツキでは以下のように設定しブレーンストーミング形式を実施しました。
リモートライターズルームのルール
水野 ①〜③がショーランナーの判断基準につかう材料になります。また、④⑤は事前に参加者へ伝えておくことが大切になります。⑥はとくに重要で、解決法を先に決めておくことで議論になった際にすぐに対応ができます。この対応をどう行うかが、ショーランナーの重要な役割でもあります。
水野 このルールに沿ってライターズルームをオンラインで実施した際の資料をお見せします。ゲームは公開時期などの関係で難しかったため、『クマーバチャンネル』という子ども向けYouTubeチャンネルのシーズン2を作成した際のものになります。
水野 左側にはIPのルールを記載しています。判断基準やターゲット、仕様が先に明示されることで、提案したアイデアに指摘が入っても発案者は理不尽に感じることはありません。逆に発案者がルールを改めて認識する機会になりますので、先にルールを提示することがスムーズな議論をするためにとても大切です。
右側にはメンバーのルールや役割を記載して、メンバーの多様性を活かした提案を引き出すキッカケにしています。最初は「ゲームシナリオライターの多様化への対応」というように課題と捉えていた多様性ですが、いまではそれぞれが違った役割を担うことができる長所だと考えられるようになりました。
リモートライターズルームのツール
水野 また、オンラインに移行する必要のあった会議室、ホワイトボード、ふせんなどはGoogleスライドでライターズルーム用のテンプレートを作成することで解決しました。こちらが実際に使用したテンプレートです。
水野 見た目的にも、付箋をつかって行うものに遜色がないと思っています。使ってみても、ストレスなくライターズルームを進めることができました。むしろ、実際のホワイトボードでは「遠くの人から付箋の文字が読みづらい」「付箋が途中で剥がれてしまう」「ホワイトボード前にどんどん人が集まってきて全体が見えづらい」などのストレスがあるのですが、オンラインではそれが一切ありません。ライターズルームはオンラインの方が快適かもしれないとさえ思いました。
ただ、一点どうしても難易度が高かったのが、ショーランナーの役割です。アイデアはたくさん出てきて、どれもおもしろいのですが、それらをもとに結論を出すタイミングが最も難易度が高いです。時間を決めたり、判断基準をシチュエーションによって用意しておくなどの工夫が常に求められることになります。
結論としては、適切なルールとツールを用意すれば、リモートでも十分にライターズルームの成果をあげることが可能だと僕たちは感じました。これからもライターズルームを利用してシナリオのクオリティを上げ、ユーザーの皆さまに楽しんでいただけるものをつくっていきたいと考えています。
5.至高のシナリオチームをつくる
今回のセッションで印象的だったのは、マネジメントによる成果がクリエイティブにもつながっていたこと。相性が悪いと思われがちなマネジメントとクリエイティブの新たな可能性が見えてきそうですね。
最後に、セッションタイトルにある「至高のシナリオチーム」とはどのようなものでしょうか?セッション冒頭で話した水野のコメントから、ROOTSがのめざすシナリオチーム像を見てみましょう。
水野 今回タイトルにした「至高のチーム」というのは、”要件を満たすクリエイティブを健全に継続できるチーム”という意味をもたせています。要件を満たすというのはめざすクオリティを達成するということにもなるのですが、ライターに理不尽な負荷を与えずにそれを継続できるチームを目指し続けたいと僕は考えています。
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【ROOTS掲載記事】体験の価値を担う存在に…アカツキシナリオチーム「ROOTS」水野氏とJASGA重馬氏が語るゲームシナリオの可能性(gamebiz)
https://gamebiz.jp/news/332820
ROOTS アカツキゲーム事業部ページ
https://game.aktsk.jp/about/roots/
シナリオライター募集ページ
https://hrmos.co/pages/aktsk/jobs?category=1220948682015649792
CEDEC2021
https://cedec.cesa.or.jp/2021/
文/編集:大島 未琴