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アカツキゲームスの新卒研修はボードゲーム開発! 企画〜商品化までを新卒だけで実施してみる

2022.05.23

アカツキでは例年、ゲームプランナーに必要や企画力や実装力、自走力を身につけてもらうため、企画職の新卒社員に向けたゲーム開発研修を実施しています。2020年の研修では1000万DLを突破したカジュアルゲーム「Mirror cakes」が誕生。このゲームは約200の国と地域で遊ばれました。

2022年はアカツキゲームスでこのゲーム開発研修を実施。今年のテーマは「ボードゲーム」。20名の新卒社員が、約2週間ずつ2回に分けてボードゲームを企画し、クラウドファンディングサービスのMakuakeにプロジェクトを公開し、ボードゲームの企画〜商品化〜マネタイズまでをめざします。

第一回目では新卒社員が2〜3人のチームに振り分けられ、ボードゲームの開発と商品化に取り組みました。本記事では第一回目の開発のなかで、Makuake出品が決定した2作品とその開発意図をご紹介します。

企画からデザインまで、一気通貫で経験する

新卒研修は座学研修からスタート。新卒社員はゲーム開発の基本を学ぶため、先輩社員から企画立案やマーケティングの基礎、市場分析の方法などの講義を受けます。その後、各チームがコンセプト・ペルソナ設定・ターゲットのインサイト(消費者の課題やニーズ)・市場分析などをまとめた企画書の作成に入ります。

新卒チーム作成の企画書の一部

新卒チーム作成の企画書の一部

新卒社員の研修とはいえ、開発過程は本格的。先輩社員の企画チェックや、モックを使ったテストプレイを繰り返し、デザイナーと協力してパッケージやカードのデザインも制作しました。

新卒社員がモックとして作成したカードとデザイナーが制作したデザインデータ

新卒社員がモックとして作成したカードとデザイナーが制作したデザインデータ

約2週間という限られた時間の中で試行錯誤を繰り返してきた新卒社員たちですが、6チームのなかでMakuakeにプロジェクトを公開できるのは社内の審査を勝ち抜いたチームのみ。はたして、どのようなボードゲームが生まれたのでしょうか?

“1922年アメリカの上流階級”になって希少品を落札せよ! 進化型大富豪『Upper Class』

Eチームの進化型大富豪『Upper Class』は3〜5人向けのゲーム。トランプのゲームとしておなじみの『大富豪』を進化させたゲームです。

左から、堀越雅行・原田透・武田直之

―皆さんはどのようなゲームを作ったのでしょうか?

武田  コンセプトはズバリ、「巨万の富でマウントを取れ!」です。舞台は戦争特需に沸く1922年のアメリカ。プレイヤーは名誉を求める上流階級になり、オークションで希少品を競り落としながらゲームを進めていきます。

チームE最終発表資料

『Upper Class』の世界観

―「巨万の富でマウントを取れ!」とは、攻めたコンセプトですね(笑)。なぜこの世界観で制作を進めようと考えたのでしょうか?

原田  僕らは「首都圏に暮らす20代の男性」がゲームを通して「お前、すごいな!」と褒めあえるゲームを作りたかったんです。

制作にあたりリサーチしたところMakuakeユーザーの7割は男性で、アナログゲームのメインユーザー層は20〜30代だと分かりました。今回はこの層をメインにセグメントを切り、ニーズを探っていきました。

チームE最終発表資料

原田  社会人の日々にはフラストレーションを感じる時もありますよね。こうした人たちが遊びのなかで競争しながら達成感を得られるゲームをめざしました。

―なるほど、日々フラストレーションを感じる現代人に、せめてゲームのなかでは思う存分マウントを取って気持ちよくなってくださいと。だから「巨万の富でマウントを取れ!」というコンセプトなのですね。ゲームはどのように進んでいくのでしょうか?

武田  プレイヤー人数は3〜5名で、進行は「オークションフェイズ」と「パーティフェイズ」の2つに分かれています。

はじめにプレイヤーには一定数の手札が配られます。カードにはアート・アンティーク・ジュエリーなどの種類があり、基本的に数字が大きいほど強いカードです。

武田  手札が配られたら「オークションフェイズ」に入ります。プレイヤーは順番に「出品者」になって山札から1枚ずつカードをめくり、他プレイヤーは手札を対価としてオークション形式でそれを競り落とします。ここで最も大きな数字を提示したプレイヤーが、出品者がめくったカードを落札するんです。

武田  この流れを数回繰り返し、手元に残ったカードが「パーティフェイズ」の手札になります。

続く「パーティーフェイズ」では競り落としたカードを場に出していきます。ルールは「大富豪」をもとにしていて、より大きな数字の商品カードを持っているプレイヤーが有利です。そして、最初にすべての手札を場に出し終えたプレイヤーが勝利します。

―「オークションフェイズ」をはさむので、大富豪とは異なるゲーム性が生まれそう。

武田  「オークションフェイズ」では強いカードも競り落とせますが、その分「強いカードを競り落として場を有利に進めたい」一方で、「強いカードの対価となる強力なカードを出品者に渡すことになり、相手の手札が強化されることを防ぎたい」というジレンマが生まれ、大富豪よりも奥深い駆け引きが生まれます。

―複雑な駆け引きを経て勝者になったら、大きな達成感を得られそうですね。

堀越  ボードゲームプレイヤーのあいだでは、遊んだ後にゲームを振り返る「感想戦」という文化があります。この感想戦でも達成感を得てもらえたらと考えながらゲームを組み立てていきました。『Upper Class』を遊んだ後は「あの時のカードの切り方はすごかった」という感想が必ず出ると思うんです。

―遊びを通して自然な形で褒めあえるゲームですね。プロジェクトが成功して、ボードゲームファンの皆さまに商品が届けられるといいですね!

商品の詳細は『Upper Class』のMakuakeプロジェクトページで

親子が一緒に遊べるファンタジー知育ゲーム『サンクトリア』

次に紹介するのはCチーム開発の親子向けの知育ゲーム『サンクトリア』。これは2人用の推理ゲームで、舞台設定はファンタジーの世界です。各プレイヤーは預言者になって所属する国の宝を隠し、相手プレイヤーの隠した宝を探していきます。

左から、中尾真徳・楊硯兮(ヨウケンケイ)・高橋一馬

―『サンクトリア』は知育ゲームとのことですが、ファンタジー感溢れるデザインが素敵ですね。なぜこの組み合わせに?

  知育ゲームだからこそ、子どもがワクワクしながら楽しめる世界観を打ち出したかったんです。

ジャンルを知育ゲームに定めたのも、市場分析をもとにしています。今回はMakuakeを通してプロジェクトを公開しますが、そのユーザーには40代の男性が多いんですね。彼らは就職氷河期を経験した世代なので「自分の子どもには苦労をさせたくないし、いい大学に行かせたい」というニーズが見つかり、地頭を鍛える知育ゲームが刺さると考えました。

高橋  あとは、楊が一橋大学の出身で、中尾は京都大学の出身というチームの特徴を活かした「高学歴のクリエイターが作る知育ゲーム」なら説得力も出るのではと考えました。ちなみにこちらがプレゼンで提出した資料の一部です。

チームC最終発表資料

チームC最終発表資料

チームC最終発表資料

―ルール設定にも工夫はありますか?

中尾  『サンクトリア』にはレベル設定を取り入れていて、ペルソナ設定に合わせて親子で一緒にゲームを遊んでほしいと考えています。

―子どもの成長に合わせてレベルが変えられるんですね。『サンクトリア』はどうやって遊ぶんですか?

高橋  お互いのプレイヤーは、「魔法の鍵」「宝の箱」「場所」の3つの要素のなかから宝を隠す場所を決め、相手に見えないようにメモをしておきます。魔法の鍵は3種、宝の箱は2種、場所は3種から選べます。

高橋  宝を隠したら先行・後攻を決めて、準備フェーズの始まりです。推理側のプレイヤーは「魔法の鍵・宝の箱・場所」のなかからカードを選んで場に置き、宝を隠した場所を推理していきます。

高橋  両者がカードを選んだら、次は答え合わせのフェーズです。相手のカードと①でメモした条件を比べて「相手が当てた数」をお互いに表示します。ただし、正解だった選択肢は明かされません。

高橋 こうしてプレイヤーはお互いに推理と答え合わせを繰り返し、相手の「魔法の鍵・宝の箱・場所」を当てていくんです。

そして、先に相手の3つの条件を当てたほうが「サンクトリア!」と宣言し勝者が決まります。

―なるほど、お互いに選択肢を提示しながらヒントを出し、相手が選んだカードの組み合わせを当てていくわけですね。

高橋  そのとおりです。さらに場に残せるカードは限られています。今回は3ターン分の選択肢が場に残りますが、その後のターンは古いものから場のカードが山札に戻っていくんです。

―ロジックだけでなく記憶力も試されるゲームですね。

中尾  そうなんです。先ほど触れたように『サンクトリア』はレベル設定ができるゲームなので、場に残るカードの数を調整することもできます。例えば、1ターン分しか選択肢が場に残らなければ、難易度はぐっと上がりますよね。記憶力はもちろん、推理するなかでロジカルな思考も試されます。

―プロジェクトが成功して多くの人に届くといいですね。

高橋  僕たちの自信作なので、Makuakeでたくさんの支援が集まるとうれしいです。

商品の詳細は『サンクトリア』のMakuakeプロジェクトページで

『Upper Class』『サンクトリア』はMakuakeでプロジェクト公開中

今回紹介したゲームはどちらも完成度が高く、新卒社員が初めて作ったとは思えない出来栄えでした。取材のなかで筆者もゲームを遊ばせてもらいましたが、市場に流通しているボードゲームと比べて勝るとも劣らない、奥深い戦略性と明確なコンセプトを感じられます。

紹介した2つのボードゲームはMakuakeでプロジェクトが公開されます。支援が集まれば、作品は実際に商品化され、研修の目標であるマネタイズをめざすことができます!

詳細は以下のURLから。

新卒研修後半では8〜9人がチームを組み、ボードゲームを開発する第二フェイズに移ります。次はどのようなボードゲームが生まれるのでしょうか?

文  鈴木 雅矩 編集  大島 未琴 写真  山口 真由子