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チームオーナーが語るPULVEREX選手たちの素顔と、2022年夏のALGS Championshipの舞台裏

2022.07.20

Team UNITEとして2022年春の「Apex Legends Global Series SPLIT2 PLAYOFFS(以下、ALGS SPLIT2 PLAYOFFS)」で世界3位を達成し、現在はアカツキゲームスのeスポーツプロチームPULVEREXに所属する、Lejetta(れじぇった)選手、Ftyan(えふちゃん)選手、saku(さく)選手。2022年夏の「Apex Legends Global Series Championship(以下、ALGS Championship)」に出場した3人の素顔と舞台裏、さらにTeam UNITE時代を含めたこれまでの歩みを、オーナー渡辺 佑太郎の視点で振り返ります。

渡辺 佑太郎 Watanabe YutaroPULVEREX / Team UNITE オーナー

2015年にゲーム業界未経験でアカツキに入社。CAPSチーム(「顧客とプロダクトの満足度最大化」させるチーム)にて、IPタイトルの運営や新規ゲームタイトルの立ち上げ等に従事。自身もeスポーツプレイヤーとして世界大会などに出場していた経験を活かし、2020年より「Team UNITE」のチームオーナー・事業責任者も務め、現在はアカツキゲームスで2022年7月4日「PULVEREX」を新設する。

PULVEREXとなって初めてのALGS。予想外の出来事とファンの応援

PULVEREX 左からLejetta選手、Ftyan選手、saku選手、ちゃんりよコーチ

左からLejetta選手、Ftyan選手、saku選手、ちゃんりよコーチ

PULVEREX は2022年7月に開催されたALGS Championshipに出場。これが新チームとしてのデビュー戦となりました。しかし、出場チームのなかには新型コロナウイルスの影響で欠場する選手も多く、PULVEREXも例外ではありません。

7月8日のDAY1のグループステージではsaku選手が新型コロナウイルス陽性と診断されたため、欠場。試合にはLejetta選手、Ftyan選手、saku選手の代わりにちゃんりよコーチという布陣で出場しました。結果は32位となり、LOSERS1への出場が決まりました。

選手の代わりに出場したちゃんりよコーチ

つづく7月9日のDAY2 LOSERS1では、ちゃんりよコーチも新型コロナウイルス陽性と診断され、欠場。Lejetta選手、Ftyan選手のDUOでの試合出場を余儀なくされたのです。しかし、PULVEREXは困難な状況のなか10位に食い込み、LOSERS2へ進出。さらにはMVPも獲得しました。

PULVEREX MVPを授与されるLejetta選手、Ftyan選手

MVPを授与されるLejetta選手、Ftyan選手

LOSERS1の上位10名が出場する7月10日のLOSERS2では健闘したものの、結果は15位。ファイナルには進めない結果でしたが、ツイッターでは多くのeスポーツファンがPULVEREXをあたたかく応援してくださり、「PULVEREX」「PVXデュオ」などの単語が日本のトレンドに入りました。

予想外の出来事が続いた今大会について、渡辺オーナーに聞いてみましょう。

手応えと残念な気持ちが半分。めざすは世界王者と“たくさんのファンに応援されるチーム”

オーナー渡辺 佑太郎

―ALGS Championship、お疲れさまでした。渡辺オーナーから見た手応えはいかがでしたか?

渡辺  新チームの始動として手応えを得たという感覚が半分、残念な気持ちが半分でした。フルメンバーでの出場が叶わなかったこともあり、3人で出場できていれば・・・・・・と思う気持ちが強かったです。

しかし、Lejetta、FtyanのDUO出場となったなかでも、LOSERS1を突破しLOSERS2に進出し、会場から大きな歓声が沸き起こった時には鳥肌が立ちました。

―DUOでの出場はあまりに大きなハンデですよね。そんななかで勝ち進んだ瞬間は、応援している者としても感動しました。

渡辺  万全な状態ではなかったのですが、そういう意味でもしっかりと爪痕を残した大会になったなと思います。

―PULVEREXが次にめざすのは?

渡辺  もちろん、まずは世界王者になることです。今回それが叶わなかったのは残念ではありますが、次の機会では必ず優勝をつかみ取りたいと思います。

また、たくさんの方に応援されるチームになりたいと、今大会を通じて改めて感じました。優勝をめざすことはもちろんなのですが、今回のように辛い状況でも諦めずに勝ちに向かう姿勢が、観ていていてくださった方に感動を生んだと思います。プレイの先にいるファンの心をつかむような活動を、ゲーム内外を通じてやっていきたいと思います。

個性豊かな3人がお互いの力を引き出し合う

PULVEREX  左からLejetta選手、Ftyan選手、saku選手、ちゃんりよコーチ

左からLejetta選手、Ftyan選手、saku選手、ちゃんりよコーチ

ーALGS Championshipでも選手たちの個性が見えてくる一面がありましたね。3人のメンバーの役割や渡辺オーナーから見た印象を教えてください。

PULVEREX Lejetta

渡辺  まず、Lejetta(れじぇった)は努力家でストイック。「In Game Leader(ゲーム内の司令塔)」のポジションです。

俯瞰した視点を持っている選手で、自分のミスも味方のミスにも正面から向きあって率直にフィードバックできます。2022年春のALGS SPLIT2 PLAYOFFSで世界3位になれたのも、決断力の高いLejettaの力が大きかったと思います。

PULVEREX Ftyan

渡辺  次に、アタッカーのFtyan(えふちゃん)。末っ子キャラでヤンチャボーイで愛されキャラです。気分の波がある選手ではありますが、乗っている時は最強です。

誰よりもファンを大切にする姿勢を感じますし、ALGS SPLIT2 PLAYOFFSでのインタビューもカメラパフォーマンスが圧巻で、チーム一のエンターテイナーです。

PULVEREX saku

渡辺  saku(さく)はオールラウンダーです。Lejetta、Ftyanという強い個性の2人の繋ぎ役として、バランスをとってくれています。ゲーム内でも同様に、彼がいなかったら、チームは成り立たないと思います。

もともとはサポート的な立ち位置でしたが、ロールチェンジして前線に出ても強かった。攻防なんでもこなす万能な選手で、FPSセンスがずば抜けています。そして、意外とFtyanに負けずにお茶目な一面があるので多くの人に知ってほしいです(笑)

コロナ禍で開催されない世界大会 先行き不明の競技シーンに全員が悩んだ

ーアマチュアチームの「Team EGG」として活躍していた3人が2021年4月にTeam UNITEへ加入し、世界3位を獲るまでにはわずか1年です。順風満帆だったのでしょうか?

渡辺  そんなことはありません。実は、チーム解散の危機すらありました。彼らがトップレベルの選手であることは間違いないのですが、加入直後の2021年6月に開催された「ALGS Championship 2021 北アジア」では、11位の結果に。競技シーンが成熟したこともあり、実力どおりの成果が出せず、モチベーションは大きく下がっていきました。

しかし、それ以上に深刻な要因は、コロナの影響で世界大会自体が開催されなかったことです。世界のライバルとリアルの場で戦うことができず、『Apex Legends』の競技シーンの見通しが立たないなか、本当に自分の人生をかけてやるべきことなのか、皆が迷っていました。

その後の発表で、プロリーグの開催、そしてオフラインでの世界大会があることが発表されて、登るべき階段が見えたんです。それを機に彼らも調子を上げ、成績は安定してきました。それに、上向いた要因としては、コーチ“ちゃんりよ”の存在も大きかったと思います。

写真右がちゃんりよコーチ。2022年夏のALGSでは新型コロナウイルスPCR検査で陽性と診断されたsakuの代わりにDAY1にてプレイヤーとして出場

ーコーチは、どんな方なのでしょうか?

渡辺  ちゃんりよくんは、環境読み※1がとても上手なコーチです。選手たちは、当初どちらかといえば「コーチ不要」のスタンスでした。すでに成熟しているチームに、新たにコーチを入れるのは、なかなか難しいことです。

ちゃんりよくんも、最初は、選手が欲しい情報をまとめるアナリストとしての加入だったのですが、選手とも関わりながらコーチングの役割もいつの間にかこなしていました。溶け込むのが非常にうまくて、チームの態度を変えるパワーがあったのだろうと思います。

最初からコーチを目指しているという、eスポーツ関連のキャリアのなかでは珍しいタイプで、試合を見て研究するのが好き。良い所、悪い所の言語化が上手です。勝つために必要な泥臭い努力を、息を吸うようにできる。とても頼もしいです。

※1  環境読み:特定タイトルのゲームで流行している、または有効な戦術を分析すること

強さと価値観を見極める採用活動は泥臭く、最も重要な仕事

ー今後どのように選手を採用していくのでしょうか?

渡辺  基本は公募したり、有望な選手をスカウトしたりして進める予定です。採用のポイントとして、競技選手として実力があることは必須ですが、パーソナルな部分もとても重要です。

企業として運営している以上、さまざまなリスクは常に考える必要があります。価値観がPULVEREXのポリシーと同じ方向を向いているのか。必ず私が対面でお会いし、最終確認させていただいています。

Team UNITEでの『Apex Legends』部門新設の際は、300人くらいの方にお会いしました。近道はなく、泥臭くはありますが、採用は運営にとって最も重要な仕事です。

ーチームのサポート方針を教えてください。

渡辺  何事にも、選手自身の「やる気」が大事だと考えています。運営が過度に管理したり、なにかを押し付けることはしない方針です。

例えば、eスポーツはグローバル競技なので、英語は覚えた方がいい。でも、だからといって無理にプログラムを組んでもお互い不幸になる。もちろん、選手が本気で取り組もうという意志があるなら、しっかりサポートしていきます。

Team UNITEもPULVEREXも、勝つために部門ごとに目標を立てて自走する力のあるチーム。運営はそうしたチームに必要な選手・コーチ・マネージャーを採用できているという自負があるので、「自主性」を軸に、彼らの実現したいことを支える体制でありたいと思います。

―TeamUNITEとしてやってきたこの2年間で、渡辺さんにとって、一番嬉しかった瞬間を教えてください。

渡辺  やはり、2022年春の「ALGS SPLIT2 PLAYOFFS」で、グランドファイナルに進出したときですね。

Team UNITEはグループステージを突破し、WINNERSブラケットに進出しますが、戦績振るわず、最下位でLOSERSブラケットに転落してしまいます。しかし、なんとか意地を見せ、堂々1位でグランドファイナルへ進出。グランドファイナルではその勢いのまま世界3位を獲得できました。

しかし、そんなドラマのような展開に感動していたのですが、実は、WINNERSブラケットで最下位をとった時は、解散しかけるほど険悪な雰囲気だったらしいんです。現地に同行していたカメラマンの方が機転をきかせて励ましてくださって……本当に助かりました。

2022年春のALGS SPLIT2 PLAYOFFSにて世界3位を獲得したTeam UNITE

チームの信頼構築の鍵は、アカツキゲームスの文化にあった

ー所属選手はかなり若い方もいますね。若い選手たちとは、どのようなコミュニケーションを心がけていますか?ご自身も選手経験があるかと思いますが、それは活きていますか?

渡辺  どのプレイが良かったのか、どの選手が強いのか、どういう選手が伸びていくのかは、プレイ経験から理解できる部分がありますので、それは今も活きていると思います。ただ、理解があるからこそ、もどかしくなることも……。

口を出したくなるけれど、余計なアドバイスや心配をすると自立心が強い選手のモチベーションを下げてしまう。そのバランスを最初は少し難しく感じていたこともありました。今は、日々の選手サポートはコーチやマネージャーに任せて、信じて応援するスタンスでいようと思っています。

ただ、選手たちは年齢的に若く、社会人経験が浅い方も多いので、意見のすれ違いや人間関係に悩むこともあります。そうした時はフォローできるよう、心がけています。

ーオーナーの視点から見て、チームの結束力を高めるためには、なにがポイントだと考えていますか?

渡辺  状況の変化に応じて、この先もずっと試行錯誤し続けるのかなと思いますが、「選手」「コーチ」「マネージャー」「運営」がそれぞれの境界線を作らずに、“ワンチーム”となれるよう、普段からコミュニケーションをとることは、意識しています。

また、私自身は事業責任者でもありますが、選手のいちファンでもあります。組織が大きくなれば、階層構造になるのは仕方ないですが、コミュニケーションは互いにフラットであるべきだと考えています。

役割の違いによる隔たりができないようにするには、選手たちを信じて可能な限り情報をオープンに共有することも重要です。今、なにが起きているのかを定点で伝えていく。それはアカツキゲームスが掲げている価値観「信頼と自立」「規律と創造」「挑戦と学習」そのままです。腹を割って忖度なくお互いに主張しあえる対等な関係性を目指して、今後も選手との関係を築いていきたいですね。

文 RAIZOH 編集  大島 未琴 写真  大本 賢児