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キャラクタープロジェクト『KonMari Spark Joy!』【後編】”ときめき”の体験デザイン

2021.09.02

2021年8月27日にリリースされたモバイルゲームアプリ『KonMari Spark Joy!』。本インタビュー前編では、アートディレクターである嶋原千高が「こんまり®メソッド×ゲーム」という一見変わった組み合わせが生まれたきっかけや、キャラクタープロジェクトのゲーム コンセプトについて語りました。

後編である今回は、ゲームシステムやビジュアル、キャラクターデザインにおける「ときめき重視」のこだわりについて聞いてみました。

『KonMari Spark Joy!』

『KonMari Spark Joy!』

嶋原千高 Shimahara Chitaka『KonMari Spark Joy!』アートディレクター

株式会社アカツキ クリエイティブチーム所属 2017年に新卒でアカツキに入社。新規ゲーム開発のイラスト領域を経験後、『KonMari Spark Joy!』ではイラストレーター/アートディレクターとして立ち上げ時から開発に携わる。

こんまり®メソッドがもつ「東洋的な印象」をキャラクターに落とし込む

―『KonMari Spark Joy!』は、かわいらしくもどこか東洋的な落ち着きがあります。この雰囲気をつくるキャラクターのデザインはどのようにつくったのでしょうか?

嶋原 Netflixで『KonMari〜人生がときめく片づけの魔法〜』をご覧になった方はご存じだと思いますが、こんまりさんは「心がときめくかどうか」を基準に片づけをするという、独自の哲学を持っていらっしゃいます。海外の方々は、この哲学に「禅」のような東洋的思想を感じ、大きな関心を寄せています。まずは、この「東洋的なイメージを伝える」というざっくりとしたコンセプトからさまざまな案を出し、形や色、使うモチーフを絞っていきました。

こんまりさんのキャラクターに使うモチーフについては、最初はしめ縄や鞠なども候補に入れていましたが、最終的には梅の花に。色使いは、こんまりさん自身が普段着ているお洋服に合わせつつ、清潔感がある白を基調とし、それに日本らしい朱色を盛り込み、白と赤の2色にしぼりました。実はこんまりさん自身、神社で巫女をしていた経験があるそうで、そういう意味でもぴったりのカラーリングになったと思います。

続いて服の形ですが、こんまりさんは海外で「東洋のメリーポピンズ」と呼ばれることもあり、風のように現れてお片づけを教えてくれる伝道師のようなイメージをもたれている方です。それをキャラクターデザインにも反映しようと、女性らしいケープをまとわせてみるなど試行錯誤を重ね、最終的にシンプルな筒状のワンピースに仕上げていきました。

『KonMari Spark Joy!』白いワンピースを着たこんまりさんのキャラクターと、ピンクのワンピースを着た主人公

白いワンピースを着たこんまりさんのキャラクターと、ピンクのワンピースを着た主人公

こんまりさんの服の形は、主人公の少女の服の形ともそろえていますね。

嶋原 「こんまりさんが主人公の少女に想いを託し、少女はこんまりさんの片づけメソッドで人々の悩みを解決していく」というストーリーに合わせ、ふたりの服の形をそろえて花を同じ位置につけるなど、共通点を盛り込んでいます。とはいえゲームの世界に入りこむためには、一瞬でどちらのキャラクターかを判別できる必要があるため、主人公の髪型はポニーテールにして、こんまりさんとの差別化を図りました。

キャラクターデザインチェックは「ときめくかどうか」。こんまりさんらしさの秘訣

人物キャラクターだけではなく、散らかった部屋の「もの」に宿る存在として登場する「もののけ」のキャラクターデザインも魅力的ですね。

嶋原 こちらもすごく東洋的な思想なのですが、万物には魂が宿っているという八百万の神やアニミズムの考え方をもとに、「もののけ」と呼ばれるキャラクターが生まれました。こんまりさんや主人公だけでなく「もののけ」にもかなりの時間をかけていて、社内のデザイナーにも協力してもらいながら案出しに取り組みました。それぞれだきまくら、Tシャツなど部屋に散らかりがちなものをモチーフにしているのですが、シルエットだけで識別できるよう個性をもたせています。

というのも、プロデューサーの川村さんからは、「シンプルさやミニマルさをもった、時代に左右されない王道のキャラクターをつくってほしい」という、かなり高度で難しいリクエストがあったんです(笑)。すでに世の中に出ているキャラクターと差別化しながら、どうすればこんまりさんらしさを出せるかを考え、400案ほど描いたなかから決めました。

『KonMari Spark Joy!』散らかった部屋に現れる「もののけ」

コンセプトアート。散らかった部屋に現れる「もののけ」

『KonMari Spark Joy!』「もののけ」たちの設定(クリックで拡大)

「もののけ」たちの設定(クリックで拡大)

―400案はすごいですね。キャラクターデザインについて、こんまりさんからリクエストはありましたか?

嶋原 こんまりさんは「ツルッと、まるっと、ぷりんとしたもの」にときめくというお話をうかがっていたので、かわいいけれど、スタイリッシュではなく、どこか愛嬌のあるキャラクターを考えていきました。こんまりさんが紹介している洋服のたたみ方、「しわを伸ばして愛情を伝え、“つるんとした四角”になるようにたたむ」というやり方もイメージのヒントになりましたね。

こんまりさんのキャラクターデザインチェックでは、「ときめくかどうか」を軸に判断してくださって。これが本当に的確で、こんまりさんにしか判断できないことだと感じました。チェックを重ねるなかで「片づけ=ときめき」をより深く理解していくことができ、めざすべき方向性も自然と合致していきました。

『Konmari Spark Joy!』アートディレクター嶋原千高

『KonMari Spark Joy!』アートディレクター嶋原千高

部屋・街のデザインが導きだす、住人たちのストーリー

主人公が片づけに行く部屋も、すごく細かくいろいろなものが配置されていて、思わず隅々まで眺めたくなってしまいますね。

嶋原 部屋のデザイン、特に散らかり方には気を使いました。どの部屋もプレイヤーさんにストーリーが伝わるよう工夫しています。ゲームの中に登場する住民たちは心の問題だけでなく部屋にも問題を抱えています。例えば、あるステージでは、風車小屋の歯車が一つ欠けていて風車が回らない状態になっており、そこに違和感を持たせるためプレイヤーさんの目線を導く配置にしたり、カラーを意識したり。自分の力で前へと進んでいくことに楽しさを感じてもらいたくて、デザインしています。

また、その部屋のパズルをすべてクリアしたときのスッキリ感、片づけのBefore/Afterにもプレイヤーさんが達成感を感じられるよう気をつけています。自分の家を片づけたときの「ときめく空間にいる感覚」をプレイヤーさんに疑似体験させられたらいいな、と。

『KonMari Spark Joy!』片づける前の部屋。上から二番目の歯車が欠けている

コンセプトアート。片づける前の部屋。上から二番目の歯車が欠けている

部屋に住人の個性が表れているんですね。前編でも少し触れていただいた街のデザインにも意図が? 

嶋原 世界中の誰もが海外旅行をしづらくなってしまったこのご時世ですから、実在の都市をモチーフにした街のデザインには、プレイヤーさんが世界一周旅行のような気分を楽しめたらという思いも込めています。

それぞれの街のモチーフにした都市のチョイスは、こんまりさんの本がよく読まれているところから。アメリカ・ニューヨークやオランダ、メキシコ、イタリア・ヴェネツィア、中国や日本などをモチーフに、その都市の色のイメージやアイテム、その国らしいサウンドを盛り込みながらデザインに落とし込んでいきました。

たしかに、それぞれの街でのサウンドの違いはさりげなく印象に残りますね。また、ゲーム全体の効果音も心地よいですが、どのようにつくったのでしょうか?

嶋原 サウンド面に関しては、映画やインスタレーション作品などで活躍するサウンドデザイナーの中岡将二郎さんとともに音を制作したのですが、ビジュアルのデザインと同様に、陰と陽の世界観の違いやバランスを重視し、陽の世界はポップに、陰の世界はゆっくり時間が流れるような演出をしました。

特にポイントとなるシーンの音には力を注ぎましたね。例えば、ストーリーパートからパズルゲームに変わるタイミングで、こんまりさんと主人公の少女がスカートを鈴のように揺らすと、キーンと音叉(おんさ)の音が鳴る演出があります。その音は実際にこんまりさんにご自宅で音叉を鳴らしてもらい、収録したんです。あとは、ゲーム中に「Spark Joy」という言葉が何度も出てくるのですが、そこで流れる効果音は、ゲームのなかでも最も気持ち良く、特徴的な音になるよう細部までつくり込んでいきました。

ゲームシステム、ビジュアル、サウンド面まで、つくり手のこだわりがたっぷり詰まっているのですね。最後にこれから『KonMari Spark Joy!』をプレイする方にメッセージをお願いします。

嶋原 こんまりさんのファンはもちろん、まだ、こんまりさんを知らない人も『KonMari Spark Joy!』をプレイすることで、片づけの楽しさや気持ちよさを感じていただけるはず。もし、ゲームのビジュアルを見たときに興味をもったり、かわいいなと思ったりしていただけたら、ぜひプレイしてみてください。

KonMari Spark Joy!公式サイト
https://sparkjoy.jp/ja/
■ App store
https://apps.apple.com/us/app/konmari-spark-joy/id1557213958
■ Google Play
https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.sparkjoy.KonMari

文:宇治田エリ 写真:豊島望 編集:服部桃子(CINRA)