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アカツキゲームス22年度新卒研修を総括! ソーシャルゲーム企業が「ボードゲーム」を題材に選んだ理由とは

2022.09.02

人材採用において、採用と教育は切っても切り離せないもの。優秀なメンバーは育成を通してさらに活躍する人材へ成長してくれます。アカツキゲームスでも、2019年からカジュアルゲーム開発など「ものづくり」型の新卒研修を行ってきました。

2022年度はボードゲームの開発を行い、クラウドファンディングプラットフォームサービスのMakuakeに出品。企画から開発、販売までゲーム開発の一連の流れを体験できる研修を実施しました。

今回はこの研修を主導した企画職担当人事の小原彩さんに2022年度新卒研修の内容や狙いについて伺いました。

さらに、研修を受けた22年新卒入社の武田直之さんと上杉拓己さん、メンターとして22年新卒を支えた21年新卒入社の高脇匠馬さんと小林海斗さんにも参加した経験、見ていた感想についてコメントをいただいています。

小原 彩 Kohara Aya株式会社アカツキゲームス 企画職担当人事

アカツキゲームスでは企画職に向けた基礎研修の設計を担当。また2017年から新卒育成も主導している。

ソーシャルゲームの企業の研修が「ボードゲーム開発」。その理由は?

―2022年度のアカツキゲームス新卒研修は、「2期に分けてボードゲームを作り、クラウドファンディングに出品して、目標設定金額の達成をめざす」という内容でした。かなり実践的なカリキュラムですが、研修はどのように進んでいったのでしょうか?

小原  研修は「講座」と「製品開発」の2段階に分かれていました。まず、新卒生にゲーム開発やマーケティングについての講座を受けてもらい、その後、2期に分けてグループで製品を開発してもらいました。期間はトータル2.5ヶ月間で、第1期は2〜3人のチームに分かれて1ヶ月で、第2期は8〜9人のチームに分かれて1.5ヶ月でボードゲームの開発研修を進めています。

その「講座」ではどのようなことが学べたのでしょうか?

小原  2日間で、企画書やゲームの設計図の作り方を学ぶ「企画・開発」と、市場分析やインサイト設定を学ぶ「マーケティング」について学んでもらいました。講座は本年度から始まった要素で、入社して5年目の企画職メンバーがカリキュラムを組みました。実際に開発現場で使っているノウハウを用いているので、かなり実践的な内容だと思います。

写真左から高脇匠馬(21卒)、武田直之(22卒)、小原彩、Zoom画面左から小林海斗(21卒)、上杉拓己(22卒)

ゲーム開発の初心者でも一気にレベルアップできる内容だったんですね。ちなみに、アカツキゲームスはソーシャルゲームの企業ですが、なぜボードゲームを新卒研修の題材に選んだのでしょうか?

小原  それは昨年の研修で改善点が見つかったからです。2021年の新卒研修は社内のエンジニアとペアを組み、カジュアルゲームを作りました。企画や市場調査は実践できましたが、開発段階になるとエンジニア任せになってしまう部分もありました。これでは、企画職がゲームに対して最後まで責任をもつ意識が芽生えづらいと考えました。

その点、ボードゲームならルール作りから実際にゲームに使うアイテムの制作もできるので、はじめから終わりまで企画職の新卒が責任を持って進められます。さらに本年度はクラウドファンディングに出品して、販売プロセスも経験できるようにしました。

企画・開発・販売と、実際の事業に近い形で進められた研修ですが、実現にあたり苦労した点はありますか?

小原  クラウドファンディングでは『アカツキゲームス』の名前を出すので、ブランドイメージを損なわないため、高いクオリティの成果物を出す必要がありました。

ゲームを開発した人が新卒メンバーであっても、ベテランであっても、お客さまにとっては同じ『アカツキゲームス』の製品です。だからこそ、先輩社員が厳しく品質管理やフィードバックを行い、もし求めるクオリティに達しなかった場合は、クラウドファンディングへの出品を取りやめる、という形で予防線を張りました。

クオリティを担保するために、現場と同じレベルのレギュレーションを設けたのですね。挑戦的な企画だけに、社内の調整は大変ではなかったですか?

小原  正直にいうと調整は大変でしたね(笑)。社長は新しい挑戦に前向きなので、この研修に前向きでしたが、リスクを避けるために法務部や広報部など社内のさまざまな部署に相談を重ねました。

ボードゲームのデザインは社内のデザイナーに依頼しましたし、企画職の先輩社員には毎日フィードバックをしてもらいました。関係者が多い分、新卒メンバーには実際の業務のなかでタッグを組む部署と接する機会を与えられたので、配属後の関係構築はスムーズに進んだようです。昨年の研修と比べて、より開発現場で求められるスキルや経験を身につけてもらえたと思います。

アカツキゲームスは、なぜ「ものづくり」型研修を続けるのか?

アカツキグループは2019年から「ものづくり」型の実践的な研修を行っていますが、なぜこのような形式を選んでいるのでしょうか?

小原  アカツキグループには「実践」を重視する文化があるんです。そのため、座学やワークショップなど、研修らしい研修はあまり好まれていません。

入社した瞬間から実践経験を積めれば、成長が早くなり、新卒メンバーのメリットになります。また新卒メンバーであっても入社したときから1人のプロと考えているので、配属前の研修からお客さまにお出しできるクオリティを出すことに責任を持ってもらうことで、結果的に現場に配属された後のアウトプットの質も向上すると考えています。

そのほかに、アカツキゲームスが研修で大切にしていることはありますか?

小原  アカツキグループには「whyからはじめよう」という文化があり、これもカリキュラムの設計で意識しました。新卒メンバーには「なぜこの企画を作るのか?」「なぜお客さまに届ける必要があるのか?」「なぜこのゲームは楽しんでもらえるのか?」など、whyを何度も繰り返して欲しかった。こうしたwhyをチーム内で問いかけながら、PDCAを回せる内容をめざしました。

第一回ボードゲーム開発時、出品に向けての最終調整の様子

「ユーザーにどのような価値を届けるか」を考え続ける濃密な2.5ヶ月間の研修

次は研修を受けた新卒生の方々に、受講した感想を聞いてみたいのですが。

武田  昨年は研修でカジュアルゲームを開発したことを聞いていたので、今年もそうかなと思っていたんですが、蓋を開けてみるとボードゲームでびっくりしました(笑)。研修期間に入ると1日がすごい密度でしたね。ただ、研修はすごく楽しくて。案が承認されて、デザイナーさんがイメージを具現化してくださり、だんだんとゲームが形になっていく経験はとてもワクワクしました。

講座にもゲーム開発に必要なプロセスがすべて盛り込まれていました。市場分析やターゲット設定、企画書の書き方をはじめ、承認者に稟議を通したり、デザイナーさんと連携したりなど、一連の流れが知れたのでとても勉強になりました。

上杉  この2.5ヶ月を振り返ると「ユーザーさんにどのような価値を届けるか」を考え続けた期間でした。企画書を作り、ゲームの中身を磨き上げて、実際に遊んでいただいてどのようなコミュニケーションを生むのか。研修中は先輩方に試遊していただく機会がありましたが、想像したとおりに楽しんでもらえた時は達成感を感じました。

写真左から高脇匠馬、武田直之

開発現場に配属されて役立ったことはありますか?

上杉  研修中は何度もフィードバックの機会をいただいたので、フィードバックを想定して、事前に答えや対応策を用意する癖がつきましたね。

高脇  あとは報告・連絡・相談をマメに行うようになりました。チーム内で報連相ができていないと痛い目を見るのは自分たちだと感じましたから(笑)。

研修の経験が役立っているんですね。フィードバックを担当された小林さんと高脇さんにも聞きたいのですが、新卒生たちの成長を感じられた出来事はありましたか?

高脇  最終的に市場に出すものなので、「厳しく見なきゃ」とダメ出しばかりになってしまうこともありましたが、研修が進んでいくとみんなすごく成長してその場で対案を出してくれるようになりました。武田くんは2回目の開発の最後にはクリエイターとしてプライドや矜持を感じられる意見を出してくれるようになり、とてもうれしかったですね。

小林   僕は2回目で上杉くんのフィードバック担当になりましたが、2回目の企画書は1回目の反省点を活かして作ってくれたんです。1回目でフィードバックしたことがきちんと活かされていて、「こんな短期間にすごく成長してるじゃないか」と驚きました。

写真左から小林海斗、上杉拓己

本当に、すごく濃密な2.5ヶ月間だったんですね。新卒生が大きく成長できた背景にはどのような要因があったのでしょうか?

小原  新卒研修のカリキュラムが年々ブラッシュアップされてきたことが要因のひとつですが、一番の成功要因は新卒メンバーたちがとても優秀だからです。

ゲーム開発は人がビジネスの成果に直結します。そのため、アカツキゲームスの新卒採用はとても厳しい基準で選考を進めています。「私がもし新卒なら通過できなかっただろう」と思う基準なので、新卒メンバーのポテンシャルが高いんですね。

昨年入社した21年の新卒生たちも、入社初年度から活躍して、今では一人前に育って後輩を指導してくれている。その成長速度には驚かされます。

―事業や規模の違いもありますが、大企業では「入社3年目でようやく一人前」と言われる企業もあります。入社1年目から活躍してくれるのは頼もしいですね。

ものづくり型研修はこれからも進化していく 

―2022年7月には研修が終わりましたが、来年度に向けてどのように研修全体の振り返りを行なっているのでしょうか?

小原  振り返りはポストモーテム(非難や責任追求をしない、問題の再発防止案を考える、事実と意見を分ける)的に振り返りを行っていて、組織として費用対効果をしっかりと評価しています。

ちょうど配属部署やトレーナーの皆さんにも配属後1ヶ月経った状態のヒアリングをしていて「新卒メンバーが現場に入った時にスムーズに業務に適応できているか」など、研修の効果を聞いています。その結果「教えなくても報連相ができる」「業務の基本的なプロセスが理解できている」などおおむね良好な返事をいただきました。

先輩社員からもお墨付きを得ているんですね。アカツキグループでは2015年から新卒研修は続いていますが、研修を受けた方は現在どのような活躍をしているのでしょうか?

小原  多くがプロジェクトのリーダーや、リードプランナーとして、ゲーム開発の中核に携わっています。中には新卒から執行役員に就任したメンバーもいるんです。

着実に成果が出ていますね。

小原  そうですね。研修の効果は実証できているので社内では新卒メンバーだけではなく「ジュニア層に向けてもより実践型の研修を開発しよう」という意見も出ています。

おそらく来年度も実践型の新卒研修を続ける予定かと思いますが、次回はどのような内容になるのでしょうか?

小原  路線は大きく変えず、「講座」と「製品開発」を軸に進めていきます。ただ、「販売」のプロセスはもっとブラッシュアップできると考えていて。クラウドファンディングは特殊な市場なので、マーケティングやセールスプロセスに独自のノウハウが必要です。ここは本年の反省点を活かしながらサポート体制を充実させていきます。

総合的に見れば、私たちが誇らしく感じるほど新卒メンバーが成長してくれましたし、人事目線で「他社に人材育成商材としてもご紹介できる研修だ」と自信をもって言えるものになりました。より効果的な研修を目指して、来年度以降もブラッシュアップを続けていきます。

来年はどのようなゲームが生まれるのか楽しみですし、研修を受けた新卒生の活躍も期待してしまいますね。

文  鈴木 雅矩 編集  大島 未琴 写真 山口 真由子