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【企画者対談】成長企業を支える「ヒーローシップ」とは何か?(前編)

2019.05.28

連載「RPGで考えるリーダーシップ新論 〜みんな輝くヒーローだ!」では、アカツキの組織研究を全5話で紹介してきました。その総集編として特別対談を実施。
企画者であり、本連載を執筆してきたアカツキ人事担当の永沼 歩と協働調査いただいたリクルートマネジメントソリューションズの荒井 理江さんによる「ヒーローシップ開発秘話」を前後編でお届けします。 (後編はこちら)

荒井 理江(あらい りえ)さんリクルートマネジメントソリューションズ HRテクノロジー事業開発部 シニアスタッフ

2007年リクルートマネジメントソリューションズ入社。ソリューションプランナー、ブランドマネジメント、社外広報担当等を経て、2011年より、組織行動研究所の研究員として、企業の人材・組織マネジメントや個人のキャリア発達に関する各種調査・研究活動、および、機関誌「RMS Message」の企画、編集、および記事執筆に従事。経営企画部人事グループを経て、現在はHR領域のテクノロジーを活用したビジネス開発部門にて、世の中の「個と組織を生かす」人・組織の体現に向けて実践活動中。

永沼 歩 株式会社アカツキ RPG(Relationship Produce Guild)採用担当

大手メーカーのグループ会社でソリューションプランナーとして勤務。50名〜4000名規模の大手金融・情報系の企業に向けて、主に教育・研修制度の構築や研修の企画と実施を担当。中小企業から大企業の社員まで幅広い人材教育の経験を持つ。 その後、2015年アカツキに入社。アカツキRPG人事企画室WIZで人材開発を担当し、人事制度の運用、事業部支援や中途入社・新卒入社の適応支援や研修を担当。2018年よりアカツキ RPG(Relationship Produce Guild)にて、採用を担当。

創業9年で1,000人規模に。アカツキの成長をリードしてきたリーダー像を探った

ーー連載のきっかけになったのがアカツキで働くメンバーたちへのインタビューということですが、どんな目的で始めたのでしょうか

永沼 アカツキは二人の共同代表が立ち上げ、今年創業9年目です。事業の急速な成長とともに組織は拡大し続け、働く人の数はグループ全体で1,000人規模になりました。成長はこれからも続くでしょう。企業規模が拡大すると、反比例の形で、一人の業務領域が少しずつ狭まる傾向があります。「なんでもやる」から、「戦う場所を決めてそこで戦う」形へ移行していくのです。

担当領域が専門化すると現在活躍しているリーダー陣のような経験や成長の機会が得られないのではという懸念があり、未来のアカツキをつくる力はどんなものなのかを見据えたかったのです。もう一つは各領域で持ち味が違うリーダーたちが活躍しているアカツキですが、社内でさえも彼らが発揮している力や魅力が十分に認識されていないという課題感も、この調査のきっかけになりました。

ーーアカツキがリクルートマネジメントソリューションズの荒井さんに共同調査をお願いした理由は?

永沼 アカツキの組織を客観的に見つめ、一緒に考えてくれる人=外部の方の力が必要だと考えました。荒井さんは、リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所で研究員のキャリアがあり、個を生かす組織・人材マネジメントやコーチングなどの知見も豊富。なにより、人の素晴らしいところや考えていることを引き出す天才的な力を持っています。どうしてもとお願いしました。

27人のリーダー達へのロングインタビュー。成長の源泉には失敗がある

ーー誰に、どのような調査をしたのでしょう?

荒井 アカツキの未来を創るリーダーを育てるという視点で、永沼さんと相談しながら特徴が偏らないよう27人を選びました。調査は1人90分のインタビュー形式。成長の経験やプロセス、大事にしてきたこと、自身をどんなリーダーだと思っているか、どんな理想を描いているか、などを聞きました。

永沼 例えば、高校時代の部活動のエピソードなど、その人の成長の肝になったと思われる経験を荒井さんにインタビューの中から3つ抽出していただき、27人×3=81話の成長経験のストーリーを分類していきました。

リーダーの秘める思いを引き出し、ときほぐす人が必要だった

荒井  皆さんが心を開いて失敗談なども話してくれたのが印象に残っています。特に皆さんが何らかのリーダー的役割を担いながら、失敗した経験を持っていることがわかりました。「中学時代はいけすかない奴で、部長をやってたけど誰もついてこなかったんです」みたいな。皆さんその経験を誠実に受け止めて内省されていて。ものすごい成長の糧にされているんですよね。アカツキが大切にしている「成長とつながり」において、「成長」だけでなく、「つながり」の部分を大事にしている理由のヒントが、過去の話しの中にたくさんあったように思います。

永沼 リーダー=管理職ではなく、「アカツキを作ってきたのは各領域の尖った人たち」という前提で調査しましたので、いわゆる普通のリーダーシップインタビューのフレームワークは当てはまらなかったんですよね。 アカツキのリーダーたちはとにかく努力家が多く、毎日必死に働いていますが、表には出せない思いもきっとある。荒井さんなら、それを引き出し、ときほぐしてくれるんじゃないかという期待がありました。期待通り「もっと荒井さんとしゃべりたい」という人もいましたね。

荒井 光栄でした(笑)アカツキのリーダーたちは、真面目で誠実だからこそ、自分の足りないところを探しちゃう人が多いようにも感じていて。一人ひとりのパワフルな個性やこれまで培ってきた長所にも気づいてもらいたくて。その人からにじみ出る魅力や、エネルギーの源、その人らしさ、大事にしている価値観など、インタビューの中で見つかったことは、その場でどんどんフィードバックさせていただきました。ご本人にとって少しでも気づきや励ましになっていたらいいなぁ、と思います。

リーダーをRPGキャラクター化した理由は?

ゲームのイラストレーターと協力してキャラクターを作り込んで行った

ーーリーダーのタイプをRPG キャラクターで表現した理由と、やってみてわかったことを教えてください

荒井 人の成長やキャリアって、旅みたいなところがあると思いませんか。人生を旅にたとえることも多いですよね。行きたい場所があり、道中では色々なハプニングがある。目的地まで遠いとしても、道のりそのものが面白いから進んで行ける。アカツキのみんなが旅を楽しむってどんなものかと考えたとき、やはりRPGゲームの世界と相性がいいんじゃないかと思いました。主人公を自分色に育て、力を身につけたり仲間に出会う。この世界観が非常にアカツキの人を育てるイメージに近いし、成長とつながりにもすごい近いと思い「RPG で表現してみよう!」と思い至ったんです。

本質をわかりやすく。「ツールって、みんなが楽しくなければ意味がない

荒井 こういうツールってみんなが楽しくなければ意味がないと思っているんです。その点をアカツキの人も特に大切にしているし、いい意味で、会社からやれって言われてやるようなメンバーたちではない(笑)。自分たちのやりたいことを実現したいという人たち。つい遊びたくなっちゃう!というツールになればいいと思いましたね。

個人的にも、なかなか面白い試みだったなぁと思います。当然世の中にはないものなので、うちの社内でも、こんなことしちゃったの?みたいな話題になったり(笑)さらに、「アカツキでの調査はとても本質的だね」という声もありました。 このような調査は、真面目にまとめてしまう会社の方が多いものなのかもしれません。でも、芯をきちんと捉えることさえできれば、アウトプットは必ずしもお行儀のよい体裁である必要はないと思っています。 個人的にはそれぞれのジョブやスキルを発見したり、組み合わせが色々できたりするのもすごく楽しいな、と思っています。

「どんな力でチームを強くしよう」人事担当者がワクワクする仕組みを

永沼 RPGのように楽しめるから、イメージがふくらむ便利なツールになりましたね。妄想で組織づくりを楽しむなんてこともできます(笑) 

荒井 まさに(笑)。永沼さんとは「この人とこの人の組み合わせだから相性がいいんだね」みたいなことも考えたりしましたね。こういう会話、実はすごく大事だと思っていまして。人の成長には正解がないものの、組織を組み立てていく必要がある。その際、人事は想像する必要がありますよね、「この人にここを任せてうまくいくかな」とか。組織って、それを考えて壮大なパズルを組み立てるようなものです。 そんなときに、ついついチーム編成を組み立てたくなるような、楽しい仕組みがあると、いいなぁと。人事担当者が異動配置を考える時「誰の力でチームをもっと強くしていこうか」と、ワクワクして未来を描けたら、すてきだなと思うんです。

荒井 ちなみに、似たタイプ同士がいいとも限りません。タイプが違うリーダー同士で、絶妙な補完関係が成立することもあります。自分と違うからこそ助け合えるという視点があれば、仲間の見え方が違ってきます。カラフルに生きることを推奨しているアカツキで働いているわけだから、相乗効果や化学反応を楽しんで仕事をして欲しい。そんな話で永沼さんと盛り上がれたのも、すごく楽しかったですね!

躍進するアカツキの源泉。若いリーダーと「支える人」の存在

ーーこの取り組みを通してわかった「アカツキらしい」と感じる組織や人材育成の特徴があれば教えてください。

荒井 4タイプの「支援者」の存在を発見できたのは面白かったですね。アカツキのヒーローたちの話を聞いてみると、辛いときに必ず誰かに助けてもらっているんです。みなさん若いうちから大きな責任を背負って奮闘しているのですが、周囲の人にも助けられ、支えてもらっているところが、「つながり」を大切にしているアカツキらしい。旅は決して一人ではなく、厳しいときこそ周りを見渡せば、助けてくれる人が必ずいるんです。そのことに改めて気づいてほしくて、「支援者」として、こんな風に4つのタイプにまとめました。

荒井 人によって、「迷ったときはこのタイプ」「元気がでないときはこのタイプ」と、相性のいいタイプがいたりもして。自分にエネルギーをくれる「支援者」のタイプを自覚していると、いざというときに助けを求めやすくなるとも思います。

調査で終わらず新卒採用基準へ展開。次世代リーダー育成の仕組みへ

ーー調査・分析から生まれた「ヒーローシップ」という考え方は、実際にアカツキの組織づくりにも活用されているのでしょうか?

永沼 はい。調査で得られた学びはアカツキの組織づくりにもしっかり役立てています。例えば、リーダーに見られた共通経験の一部は新卒の採用基準へと展開されました。将来のリーダー人材を採用する狙いがあります。また、特性を活かすという概念を利用して、新入社員の個性を尊重した配置配属も検討しています。2018年度の新卒は今回調査した要素の一部を利用し、配属に役立てました。今後はこの共通経験や特性をタレントマネジメントなどの分野で応用し、より効果的な配置や人材開発に応用できればと考えています。

荒井 採用の基準に活用しているのはすばらしいですね。採用要件と育成要件をちゃんと切りわけて取り込んでいるのもいいなぁと思います。 また、社会人の成長にはステップがあります。特に、新卒1年目は自分の中で社会人としての自己イメージを形づくる大事な一段目。その1年目にこそ、失敗を恐れずのびのびと突っ込んでやってほしいし、組織側は「絶対に安心・安全の家」になれるといいなと。「大丈夫。行ってみよう!」「ちゃんと見ててあげるから!」という組織との絆がとても重要です。

荒井 ヒーローは、チャレンジの中で成長します。良くも悪くも、成長にはイベントが起こらないといけない。RPGでも、近所でうろうろしていてもレベルが上がらないので、やっぱり洞窟とか行くんです。ただ、そのときに、きちんと街があり、泊まれる宿屋=組織がちゃんとあるって大事だと思っています。ある程度経験を積んだら、チャレンジの旅に出て欲しいですね。そして、傷ついたときはちゃんと安心の場に帰ってきて欲しいと思います。

(後編へ続く)

イラスト:掛川 奈里紗
Infographics:松本 奈津美
編集:坂井 朋子